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第11.5章 交差する想い達よ
交差する想い達へ
しおりを挟むその頃、次期龍神一行は。
「ねえ、すごくいい雰囲気じゃない!?ねえエリー!」
「わわ、揺らさないでくださいまし………!」
ラフェエルとアルティアが縁の紐を着けているその時、フランは興奮の絶頂に達していた。エリアスは肩を掴まれブンブンと身体を揺らされている。
それを横目にクリスティドも口元を緩めた。
「ああ。………本当に、お似合いだよ。あの二人は。是非幸せになってもらいたい」
「アルさま、しあわせそ」
ガロはアルティアの笑顔を遠目から見てふわりと笑った。自分のことのように嬉しそうだ。それはリーブも一緒で、目を潤ませていた。
「……………なんとしても、あの二人が結ばれるように情報を集めなければ行けませんね」
「___まあ、頑張れや」
「?どこに行くのですか?レイヴ様」
くるり、と背を向け歩き出すダーインスレイヴにエリアスは尋ねる。ダーインスレイヴは振り返ることなく、手をひらひらさせ、歩きながら言った。
「これ以上、覗きをするのは無粋だから俺ァ帰るよ」
「まあ!なんて勿体ないことを!これからがいい所____って、ああ~~~~!」
フランは突然大声をあげた。監視していたラフェエル達が走り出したからだ。フランは全員に向けて言う。
「ターゲットが逃げたわ!行くわよエリー!」
「わ、わたくしもお城に…………」
「行くぞ!エリー!」
「は、はい……………」
「ガロ、行きますよ」
「うん」
エリアスは2人に気押され追いかける。リーブとガロはダーインスレイヴの背を追った。
* * *
「わぁ……………すごく綺麗……………!」
アルティアは汗だくになりながらも目の前の光景に感嘆の声を漏らした。
大きなひまわり畑。沢山の黄色い花弁が舞っている。………………ここは、私がこの国で唯一好きな場所。ずっと昔の妃が大好きなひまわりを集め栽培していた。国民は妃を心から慕い、今も尚手入れを怠らない。
小さい頃、泣きたくなったらここに来ていた。7歳の時からはアトランティスに行っていて、足を向けなかったが…………その前は此処が私の逃げ場だった。
どうしてここに連れてきたのか、という理由はない。ただ単にいい加減尾行されるのが億劫になって撒くために逃げ回っていた時、ここの存在を思い出したのだ。
………………だが、アルティアが喜んでいるのであれば、最初から連れてきたくてきた、ということにしておこう。
「……………凄いね、アトランティスの近くにこんなところがあったなんて、知らなかった」
「…………ああ」
「……………私、私ね、アトランティスから出て、沢山学んだよ」
アルティアは1番近くにあるひまわりに触れながら、語り出す。
「最初はただ、アトランティスから出れればなんでもよかった。いつでも逃げ出す気、満々だったんだ」
「…………事実、逃げ出していただろう」
そう、最初は逃げ出していた。目を離すとすぐ逃げていたから何度も契約印で呼んだんだ。アルティアは肩を揺らして笑う。
「そうね、その節は迷惑かけたわ。でも最後まで話を聞いてよ。
色んな人に会って、色んな精霊や妖精神と会って…………人間も神も大嫌いだったのに、いつの間にか好きな人が何人も増えていた。最近、気づいたんだけどね。
でも、一番好きなのは_____」
アルティアはそう言って振り返った。
1番愛おしい人に伝えようとしていた。
けれど。
その唇は、言葉を発する前に____愛おしい人間に塞がれた。
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