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第11章 "宿命"を変えるには?

好きって、難しい

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 「やっぱり、ワールドエンドの手がかりはないなぁ」




 アルティアはベッドに本を投げ出す。ベッドはもう本が散乱していて寝返りすら打てやしない。


 こんなに本を読んだ理由はただ一つ、ラフェエルを死なせない方法を探す為だ。1人くらい生き残れた第1皇太子がいて、伝承を残してくれてるかもしれないと思って始めたけど…………わかったのは、生き残った第1皇太子が"いない"という事実だけ。



 全員もれなく死んでいるのだ。


 そう考えると………………心が痛くなる。それを強いたのが私達龍神なんだと思うと泣きたくなる。


 こんな馬鹿げたことを私達はしてきたんだ。誰も疑問に思わなかったのかな?


 だって、一緒に旅をしていた契約者になんの情も抱かないなんて無理でしょ。すくなくとも私は無理だった。



 最初は『なんだこいつ?』って思ってたけど、旅を重ねて、話を沢山して、色んなことを一緒にして……………いつの間にか居なくてはならない、そんな相手になっていた。



 というか、龍神って私と同じ女もいたのかな?ガーランドは女の姿にもなれるけど、基本男の姿をしていたし、男の口調だったし、次期龍神時代は男だったと私は思っている。



 で、ゼグスとラフェエルが瓜二つということは、ああいう顔の血筋なのだろう…………いや、それは言い過ぎか。弟だか虫だかわからないけどヤイバルとクシュスという男達は紅銀の髪ではあったけど色は薄いし瞳もラフェエルほど紅くはない。顔も平凡だと思う。


 というか、第一皇太子って呼んでるけど、第一皇太子の胤は第一皇太子なのかな?ラフェエル若いし、子供いないし……………いや、あれだけ女慣れしてるんだから他所の女に種付け済みかもしれない。





 「……………………それは、やだなぁ」





 アルティアはぽつり、そう呟いて枕を抱きしめる。

 私、相当ラフェエルに腑抜けているのかもしれない。独り占めしたい。他の女なんて見て欲しくない。




 前世でも男の人を好きになることなんてなかった。男は暴力と性欲だけの生き物だと思っていた。でも………………今は、本当にラフェエルが好きだ。


 そりゃ、罰という名の暴力はあるし、滅茶苦茶キスするし性欲がないのかは微妙なところだけど、1度も嫌だとは感じていない。





 でも…………………どこか優しいというか。不器用ながら大事にはしてくれてる………と信じたい。


 っていうか、好きなのにいい所を見つけられないっておかしいな?誰かを好きになると相手のいい所しか見えなくなるって聞くけどそんなことなくないか?


 ………………………そもそも、ラフェエルは本当に私のことが好きなのだろうか。最近同じベッドで寝て、キスはしてくれるけど……………好き、とは言ってくれないし。なにより!同じベッドで寝てるのに!手は出されない!いや出されたいかと言われるとそうじゃないけど!…………いや!やっぱり嘘!ほんの少し期待してたりする!




 「あぁぁぁ~~~!」




 アルティアは枕に顔を埋めながら叫ぶ。ポスポスとベッドを殴っているが、悔しいことにベッドはとても柔らかく、殴ってる感は半減だ。




 物凄くモヤモヤする!なんだこれ!




 「…………………人を好きになるのも、楽じゃないってか………………ん?」





 そう呟いたら、コンコンとノック音が聞こえた。私は起き上がりどうぞ、と声をかけた。


 ガチャ、と音を立てて開いた扉の先には____銀色のベリーベリーショートヘアの、金色と赤色のオッドアイの子供。私の側近のガロだ。


  

 「ガロ?どうしたの?」



 「おはなし、したいこと、あった」




 ガロはそう言って、とてて、と駆け寄ってくる。私はそれを見て本を退かしガロの座れるスペースを作る。


 しかしガロは座らず、代わりに言葉を紡いだ。



 「______ガロ、アルさま、ラフェーさん、おでかけ、したい」  






       


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