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第7章 次期龍神、人狼少年を拾う

銀髪の奴隷少年

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 「ここ、どこだろう………………………」



 私は辺りを見渡す。ただでさえ薄暗い国なのに、ここは更に暗い。でも、さっきあった牢屋も、叫び声も聞こえない。


 どっ、と疲れが押し寄せて、私は壁に背中を押し付けズルズルと擦りながらへたりこんだ。




 ………………思わず逃げ出しちゃった。
 ラフェエル、怒ってるかな?
 でもなんで契約の転移を使わないのだろう。この結界のせい?…………そんなに強い結界魔法じゃない気がするんだけど。


 ………………呆れちゃったのかもしれない。
『龍神のくせに奴隷も許せないのか』って。龍神は神様で、人間とは違う思考回路を持たないといけないのかもしれないけど、私の心はほとんど人間だ。しかも平和な国・日本産だよ?ショッキング過ぎるわ。





 ねえ、なんで私のことを呼んでくれないの?

 なんで、『こんな所に連れてきてごめん』って謝ってくれないの?


 _____いま私、凄く我儘なこと考えてる。




 私から見た"ラフェエル"はあくまで私の主観から捉えた"ラフェエル"で、"ラフェエル自身"じゃない。何を考え、何を見てるのかは私じゃなくても、誰もわからない。ラフェエルしか知れないのだ。



 それを棚に上げて私の主観で勝手に幻滅して、勝手に怒って…………………馬鹿みたい。



 こんな暗いところにいるから暗いことを考えてしまうんだ。明るいところに行きたい。ラフェエルの言う通り、街を出てクリスティド達のところに行かなきゃ。




 「この………………がぁっ!」




 「……………………?」



 そう思い至った所で、声がした。随分遠くからしたな………………人が居るなら、ここがどこだか教えてもらえる。上手く行けば入口まで案内してくれるかも。


 私は声のする方に向かった。真っ暗な通路に淡い光が漏れている部屋のような所に着いた。





 「この化け物がァ!ふざけやがって!」



 「ッ、………ッ………す、ま………せ…………………」




 「……………………!」



 こっそり中を覗いたら………………………偉そうな服を着た太った男が、頭を垂れる顔を覆うほど長い銀髪の小さな_10歳にも満たないほど小さな_子供の頭を蹴っていた。子供は何度も何度も謝るように土下座をする。男は蹴りながら捲し立てる。




 「客がテメェを気味悪がって返品するの何回目だ!?ふざけやがって!"化け物"の癖に一丁前に人の姿してんじゃねえよ!ほら!狼になれ!人間を喰らえ!客に媚びを売って身だしなみを整えさせろ!言葉ぐらいちゃんと喋れ!」



 「ごめ……なさ、ご………んな………い、ご___っぐぅ!」




 男は、子供の顔面をすくい上げるように蹴りあげた。その拍子に子供は後ろの壁に叩きつけられた。男はふー、ふー、と肩で息をしている。そこに、部屋の向こうから現れた1人の男が子供の前髪を持ち上げ自分の顔に近づける。




 「やめてくださいよ、スプリット様。大事な"商品"なんですから。



 でも不思議ですねえ、こんなに造形がいい上"珍品"、おまけに貴重な"人狼"なのに。昨今の貴族様はなにが不満なんでしょうか?」



 「フン!大方、一通り"遊んで"飽きたのだろうよ!ったく、本当に使えねえガキだ!」



 「何か芸を仕込ませましょうか?それなら私にお任せ下さい。薬に漬けて変態な貴族様方の満足するように色々な"作法"を叩き込むので……………………………」








 男はそう言って、いやらしく笑った。




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