141 / 270
第7章 次期龍神、人狼少年を拾う
銀髪の奴隷少年
しおりを挟む「ここ、どこだろう………………………」
私は辺りを見渡す。ただでさえ薄暗い国なのに、ここは更に暗い。でも、さっきあった牢屋も、叫び声も聞こえない。
どっ、と疲れが押し寄せて、私は壁に背中を押し付けズルズルと擦りながらへたりこんだ。
………………思わず逃げ出しちゃった。
ラフェエル、怒ってるかな?
でもなんで契約の転移を使わないのだろう。この結界のせい?…………そんなに強い結界魔法じゃない気がするんだけど。
………………呆れちゃったのかもしれない。
『龍神のくせに奴隷も許せないのか』って。龍神は神様で、人間とは違う思考回路を持たないといけないのかもしれないけど、私の心はほとんど人間だ。しかも平和な国・日本産だよ?ショッキング過ぎるわ。
ねえ、なんで私のことを呼んでくれないの?
なんで、『こんな所に連れてきてごめん』って謝ってくれないの?
_____いま私、凄く我儘なこと考えてる。
私から見た"ラフェエル"はあくまで私の主観から捉えた"ラフェエル"で、"ラフェエル自身"じゃない。何を考え、何を見てるのかは私じゃなくても、誰もわからない。ラフェエルしか知れないのだ。
それを棚に上げて私の主観で勝手に幻滅して、勝手に怒って…………………馬鹿みたい。
こんな暗いところにいるから暗いことを考えてしまうんだ。明るいところに行きたい。ラフェエルの言う通り、街を出てクリスティド達のところに行かなきゃ。
「この………………がぁっ!」
「……………………?」
そう思い至った所で、声がした。随分遠くからしたな………………人が居るなら、ここがどこだか教えてもらえる。上手く行けば入口まで案内してくれるかも。
私は声のする方に向かった。真っ暗な通路に淡い光が漏れている部屋のような所に着いた。
「この化け物がァ!ふざけやがって!」
「ッ、………ッ………す、ま………せ…………………」
「……………………!」
こっそり中を覗いたら………………………偉そうな服を着た太った男が、頭を垂れる顔を覆うほど長い銀髪の小さな_10歳にも満たないほど小さな_子供の頭を蹴っていた。子供は何度も何度も謝るように土下座をする。男は蹴りながら捲し立てる。
「客がテメェを気味悪がって返品するの何回目だ!?ふざけやがって!"化け物"の癖に一丁前に人の姿してんじゃねえよ!ほら!狼になれ!人間を喰らえ!客に媚びを売って身だしなみを整えさせろ!言葉ぐらいちゃんと喋れ!」
「ごめ……なさ、ご………んな………い、ご___っぐぅ!」
男は、子供の顔面をすくい上げるように蹴りあげた。その拍子に子供は後ろの壁に叩きつけられた。男はふー、ふー、と肩で息をしている。そこに、部屋の向こうから現れた1人の男が子供の前髪を持ち上げ自分の顔に近づける。
「やめてくださいよ、スプリット様。大事な"商品"なんですから。
でも不思議ですねえ、こんなに造形がいい上"珍品"、おまけに貴重な"人狼"なのに。昨今の貴族様はなにが不満なんでしょうか?」
「フン!大方、一通り"遊んで"飽きたのだろうよ!ったく、本当に使えねえガキだ!」
「何か芸を仕込ませましょうか?それなら私にお任せ下さい。薬に漬けて変態な貴族様方の満足するように色々な"作法"を叩き込むので……………………………」
男はそう言って、いやらしく笑った。
0
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は二度も断罪されたくない!~あのー、私に平穏な暮らしをさせてくれませんか?~
イトカワジンカイ
恋愛
(あれって…もしや断罪イベントだった?)
グランディアス王国の貴族令嬢で王子の婚約者だったアドリアーヌは、国外追放になり敵国に送られる馬車の中で不意に前世の記憶を思い出した。
「あー、小説とかでよく似たパターンがあったような」
そう、これは前世でプレイした乙女ゲームの世界。だが、元社畜だった社畜パワーを活かしアドリアーヌは逆にこの世界を満喫することを決意する。
(これで憧れのスローライフが楽しめる。ターシャ・デューダのような自給自足ののんびり生活をするぞ!)
と公爵令嬢という貴族社会から離れた”平穏な暮らし”を夢見ながら敵国での生活をはじめるのだが、そこはアドリアーヌが断罪されたゲームの続編の世界だった。
続編の世界でも断罪されることを思い出したアドリアーヌだったが、悲しいかな攻略対象たちと必然のように関わることになってしまう。
さぁ…アドリアーヌは2度目の断罪イベントを受けることなく、平穏な暮らしを取り戻すことができるのか!?
「あのー、私に平穏な暮らしをさせてくれませんか?」
※ファンタジーなので細かいご都合設定は多めに見てください(´・ω・`)
※小説家になろう、ノベルバにも掲載
異世界転移したと思ったら、実は乙女ゲームの住人でした
冬野月子
恋愛
自分によく似た攻略対象がいるからと、親友に勧められて始めた乙女ゲームの世界に転移してしまった雫。
けれど実は、自分はそのゲームの世界の住人で攻略対象の妹「ロゼ」だったことを思い出した。
その世界でロゼは他の攻略対象、そしてヒロインと出会うが、そのヒロインは……。
※小説家になろうにも投稿しています
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい
千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。
「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」
「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」
でも、お願いされたら断れない性分の私…。
異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。
※この話は、小説家になろう様へも掲載しています
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
【完結】悪役令嬢に転生したのでこっちから婚約破棄してみました。
ぴえろん
恋愛
私の名前は氷見雪奈。26歳彼氏無し、OLとして平凡な人生を送るアラサーだった。残業で疲れてソファで寝てしまい、慌てて起きたら大好きだった小説「花に愛された少女」に出てくる悪役令嬢の「アリス」に転生していました。・・・・ちょっと待って。アリスって確か、王子の婚約者だけど、王子から寵愛を受けている女の子に嫉妬して毒殺しようとして、その罪で処刑される結末だよね・・・!?いや冗談じゃないから!他人の罪で処刑されるなんて死んでも嫌だから!そうなる前に、王子なんてこっちから婚約破棄してやる!!
[完結]18禁乙女ゲームのモブに転生したら逆ハーのフラグを折ってくれと頼まれた。了解ですが、溺愛は望んでません。
紅月
恋愛
「なに此処、18禁乙女ゲームじゃない」
と前世を思い出したけど、モブだから気楽に好きな事しようって思ってたのに……。
攻略対象から逆ハーフラグを折ってくれと頼まれたので頑張りますが、なんか忙しいんですけど。
不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜
晴行
恋愛
乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。
見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。
これは主人公であるアリシアの物語。
わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。
窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。
「つまらないわ」
わたしはいつも不機嫌。
どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。
あーあ、もうやめた。
なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。
このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。
仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。
__それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。
頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。
の、はずだったのだけれど。
アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。
ストーリーがなかなか始まらない。
これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。
カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?
それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?
わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?
毎日つくれ? ふざけるな。
……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる