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第2章 水の精霊、海の妖精神と次期龍神

生贄皇子の側近は観察する

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 私の名前はリーブ。

 サクリファイス大帝国第1皇太子であらせられるラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイス様に幼少期からお仕えさせて頂いている側近です。





 ラフェエル様は幼き頃から優秀でした。頭脳明晰でサクリファイス大帝国一の知識を持ち、それは執務に置いても発揮され、サクリファイス大帝国の繁栄を更に彩られました。また、剣を握ればサクリファイス大帝国随一の兵士長でさえ跪き、魔法を使えば魔導師達を感銘させ、皇族の中でも色濃く美しい紅銀の御髪、紅い瞳が映える御顔………………容姿端麗であらせられます。地位も申し分ない。夜会に出れば間違いなく女共が言い寄るような御方です。




 ですがサクリファイス大帝国第1皇子は20歳を迎えると同時にお隠れになる存在。生贄と言われておりました。誰もがそれを惜しみました。それでも気高く使命を全うしようとしておられた姿に何度私は涙を流したでしょう。



 しかし、それは杞憂に終わりました。
 何故なら龍神様はラフェエル様を生かしたのです。龍神様でさえラフェエル様は魅了した。………詳しい話は存じ上げませんが、生きていらっしゃるだけで嬉しいです。



 そして。



 その隣には______





 「っぷはーーーーー!」




 「…………!」




 私の思考を止めたのは、大きな声だった。声のした方を見ると__川の水を飲んで満面の笑みを浮かべる少女。見たことも無いくらい混ざり毛のない黒色の長髪、金よりも美しい光を放つ黄金色の瞳、___美しい、龍神・アルティア様。




 サクリファイス大帝国に降り立った時の事をよく覚えている。こんなに大きな生き物がいるのかと驚愕した。その大きな生き物がこのような美女になった時は失神した。ラフェエル様は何かをお隠しになっているから深くは聞いておりません。ですが、彼女絡みでしょう。





 「ん?おお!リーブ、ちょっとこっちにきて」


 「?はい」


 アルティア様に呼ばれて歩み寄ると、しーと指先を自分の唇に押し立て川を指さす。


 そこには魚が泳いでいた。ただそれだけだ。なのにアルティア様は目をキラキラさせながら小声で言う。



 「魚、凄く可愛い!気持ちよさそうじゃない?」



 「……………」




 …………………とても、不思議な方です。
 このような些事に笑みを零されるアルティア様。無邪気というか、天真爛漫というか。とても明るくフレンドリーで使用人に優しい方です。




 「………綺麗ですね」


 「でしょ?ラフェエルの所に連れていこうかしら」



 「いえ、ラフェエル様はきっと殺しますので」




 「……………でしょうね。想像に固くないわ」





 アルティア様は呆れたように言う。一応婚約者という肩書きをお持ちになられる彼女には、ラフェエル様の事など手に取るようにわかるのでしょうね。




 「アルティア様」



 「ん?ああ、クリスティド………いいえ、クリスですか」



 クリス___クリスティド・スフレ・アド・シースクウェア様の事です。先日滞在していたシースクウェア大国_此処もシースクウェア大国の領土ですが_の第3王太子であられる御方です。シースクウェア大国王族特有の金髪青瞳を持ち、噂では海の妖精神と水の妖精神に愛されている、国の重要人物です。ですが、今はサクリファイス大帝国の兵士に扮して兵士の振る舞いをしている奇特な方でもあります。


 ラフェエル様の幼少期からの親友でもある彼の扱いを未だに掴めずにいます。誰にでも優しい模範的な王子であらせられるため苦痛では御座いませんが……………



 「ラフェエル……殿下がもう出立したいと言っております。馬車に戻りましょう」



 「ふふ、私とリーブだけの時は無理して畏まらなくてもいいのに」


 「日頃から身につけていないとならないのです」


 「まあ、いいわ。行きましょう、リーブ」



 「は」



 私は返事をして、アルティア様に続く。
 ……………………果たしてこの旅はどうなるのだろうか。



 そんなことを思いながら、空を見上げた。













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