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第2章 水の精霊、海の妖精神と次期龍神

爽やか王子は水と海に愛される

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 私達は案内されるがまま部屋に通された。その部屋は私達が泊まっている部屋よりも広く、藍色を基調とした家具が大人らしさを醸し出している。




 「申し訳ないね、婚約者の居るレディを自室に連れ込むなんて…………ラフェエル皇子が不快に思うのであれば別の部屋を用意させていただきますが」



 「いや、いい。…………こちらの方が話しやすい。あと、皇子呼びを辞めろ。お前が言うと気色悪い」


 「あはは、相変わらずだなあ、ラフェエルは」



 そう言ってイケメン王子は笑う。そして呼び捨てもスムーズだ。先程の固い雰囲気は残しつつもほんの少し雰囲気が柔らかい。


 そんなことを思っていると再びイケメン王子と目が合った。イケメン王子はにこやかに言う。



 「挨拶が遅れました。私はクリスティド・スフレ・アド・シースクウェア。この国の第三王子です」


 やっぱり王子でした!ですよね!って感じ!うわー生王子だ。かっこいい。…………と、行けない行けない。しっかり婚約者の振る舞いをしなければ。




 「………わたくしはラフェエル殿下の婚約者で、アルティアと申します。わたくしこそご挨拶が遅れてしまいすみませんでした。クリスティド殿下」



 「噂に違わぬ美しさですね。お会い出来て光栄です_____次世代の龍神様」




 「_______!」




 言葉を、失った。
 だって私が龍神だと言うことは誰も知らないはず。なのに、クリスティド殿下は私を知っている。もしかして、私が何かミスをした?これでは、ラフェエルに申し訳が………………………




 「____そうでしょう?ラフェエル」


 「…………………ああ。そうだ」



 「!」



 み、認めた……………だと!?しかもあっさり!隠せと言っておきながら自分はポロッと!?なにそれ!?




 もう困惑を隠せない私はラフェエルを見た。ラフェエルはそんな私を冷ややかな目を向けてから、はあ、と溜息をついた。




 「この男は堅物だ。口は固い。私の腐れ縁で、妖精神にも詳しい。……………貴様が妖精神と戦わねばならぬ事も承知だ。


 だからこの男に婚約者のフリは必要ない」



 「は、はぁぁぁ?!ちょっと、全く話が読めないんだけど!ちゃんと説明___ぎゃん!」




 バチバチィ!とお決まりのように罰が落ちた。人前で罰を落とされたのは初めてで痛みよりも羞恥が上回る。


 黒焦げになりながらも頬を赤らめるアルティアを見て、クリスティドは少し戸惑いながらも、ラフェエルを睨んだ。





 「…………いくら龍神と契約をしたからと言えど未だ幼い彼女に罰を与えるのはどうなんだ?ラフェエル」



 「幼いだと?幼くとも龍神だ。そして私は教育者に選ばれた。龍神の粗相を正すのは私の役目だ。


 それより、何故契約の事まで知っている?そもそも、何故お前がこの女が次期龍神だとわかった?手紙では分からないと言っていただろう」




 話の内容はよくわからなかった。
 けど、疑問は一緒だ。なんでつい最近まで1度も出たことがない私を龍神だと断言できた?契約のことだって……………



 ちらり、とクリスティドを見る。クリスティドは目を伏せて両手に嵌めていた手袋を取った。



 「……………え?」



 両手には、ラフェエルの右目と同じ契約印があった。違いといえば色___ラフェエルが黒で、クリスティドは水色と青色。クリスティドはそれを見せながら言う。




 「私は、水と海の妖精神と契約を交わしているのです」








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