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第30章 巡る巡る夏の夜
20年も見守ってきた仲間達
しおりを挟むそんな2人のイチャラブを見ていたのは月だけ____とは行かず。
「…………これは、声をかけづらいな」
クリスティドは道中買った狐のお面を取りながら苦笑いをする。それに応えたのは季節外れのフードを被ったエリアスだ。
「ですね。…………せっかくお忍びで来たのですから、久しぶりに皆でお酒を飲もうと思ったのですが」
「はあ、しゃーねえなあ。おしどり夫婦というのは夏の日差しより熱い」
ダーインスレイヴはぽりぽりと頭をかきながらイカ焼きを頬張る。その腕に絡みついたフランはにまにまといやらしい笑顔を向ける。
「それがおしどりのいい所なんですよ~。まあ?20年前あんなに拗れたんだから余生はずっと愛し合ってもらわないとくっつけた意味が無いじゃない」
「そんな盗み見るような下賎な行為ははしたないですよ、フラン様」
なぬ!と睨みつける視線の先には___リーブとガロが。リーブは言葉を続けた。
「いいじゃないですか。そんな心配せずともラフェエル様もアルティア様も一生を共に過ごすでしょう」
「そうでございます。ガロは少なくともそう信じ、お仕えしております」
そんな2人の側近に、クリスティドは爽やかな顔で言う。
「そんな2人はなぜここに?アミィール様達の護衛をしていたじゃないか。ご丁寧に空中から」
「ですよね。アミィール様が気づかないということは、余程楽しい時を過ごしたのでしょう」
「……………やはり、クリスティド国王陛下様、エリアス女王陛下様には敵いませんね」
「そのような硬い呼び方はおよしくださいませ。わたくし達は共に旅をした仲でございます。立場は違えど___「イツメンよっ!」フラン様!お静かにッ!」
「もがっ、………っぷは、だって、リーブもガロもそうでしょう?私達には立場なんて関係ないわッ!共に世界を変えたのだからっ……もが!」
騒ぐフランの口をダーインスレイヴが抑えた。イカ焼きを食べ終わり、串を咥えながら言う。
「そんなことより護衛はどうしたんだよ」
「家族の時間を邪魔するのは無粋だなと思ったのです。アミィール様は勿論、セオドア様もお強いですし、セラフィール様はともかくアドラオテル様も既に剣を握っております。
あの家族に敵う暗殺者などこの国にはいらっしゃらない。この国の者でなくとも敵う者はいないと判断し戻ってきた次第でございます」
リーブは淡々とそう述べる。彼がそういうのならば、大丈夫なのだろう。それだけの信頼感があるし、きっとラフェエルが知っても怒らないだろう。
「それよりも、はなびというのは素晴らしかったですわ。アルティア様の魔法でしょうか?」
「花火は魔法じゃないわよ。まあ、作れちゃうのはこの世界でアルティア先輩だけだと思うけど」
フランは『設定盛り込みすぎですよね』なんて膨れてからラフェエル達を見た。
「あ!今キスした!したよね!ガロちゃん!」
「キスくらい当然では?」
「ガロ、君の価値観のズレは今に始まったことではないがキスというのは好きな人としかしてはいけないんだ、そろそろいい歳なのだから結婚くらいしなくては……」
「…………それはわたくし達が言うには説得力がないのではないですか?」
「たしかに!だから結婚しようダーインスレイヴ様!」
「俺は何度断ればいいんだ?………」
* * *
「…………………………」
ラフェエルはキスをしながら思う。
…………あいつら、本当にあれで隠れていると思っているのか?20年前と変わらなすぎるだろうどいつもこいつも……………
20年前のデートを思い出したラフェエルでした。
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