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第20章 SweetでBitterな日常
主人公は助けられる
しおりを挟む「何故ですの!わたくしは由緒正しき令嬢ですよ!アミィール様より美しいと自負しております!」
その自負は確実に過信である。そして、由緒正しき令嬢なのだったらこんなこと言わないだろう。さりげなく近づいてくるのは不愉快だ。
「貴方がどのような御方なのか知りませんが、私にその気はありません。申し訳ございませんが、それは受けられないです」
「ッ、では!わたくしが貴方様を気持ちよくさせてみせますわ!」
「___ッ」
とうとう女が身体に触れてきた。顔を近づけてきて気持ち悪い。けれど、女性をつき飛ばせない。こんな人間でも女性に手を上げる最低な人間になりたくない。
アミィール様____!
心の中でそう叫んだ時だった。
「きゃっ!」
「!」
顔スレスレまで近づいてきていた女の首に鎖が巻きついた。そして、物凄い勢いで女の体は後退する。紅茶室の入口を見ると_____鎖を片手に持った、エンダーの姿があった。女は首が締まったからか激しく咳き込んでいる。
しかし、エンダーは冷たい瞳でもう片手に持っていた刃物の先端を女の右目に向けていた。
「_____下賎な女、自分の身の程を弁えなさい」
「………ッ、わたくしは令嬢「侍女長でありアミィール様の専属侍女のわたくしより貴方は偉いのですか?」………ッ」
エンダーの言葉に、女はかたかたと震えながら歯を鳴らした。依然黒い瞳が冷たいエンダーは低い声で言う。
「貴方はクビです」
「なっ、………わたくしは!」
「これ以上言うのであれば貴方のその汚い目玉をくり抜きます」
「___ッ」
エンダーはさらに刃物を右目に近づけた。女は顔を真っ青にする。エンダーは追い打ちをかけるように言った。
「もちろん左目もくり抜きます。勘違いしないでくださいませ。__アミィール様がこのことを知ったら目玉ではなく命を奪いますでしょう。
_____ここに来たのがわたくしだと感謝しなさい。
どうしますか?光のない世界に誘いますか?それとも、大人しく出ていきますか?」
「で、出ていかせてくださいませ…………」
「そう、残念。…………10秒以内に去りなさい」
エンダーがそう言って離すと脱兎のごとく女は逃げ出した。俺は今馬鹿みたいな顔をしているだろう。あのエンダーの恐ろしい顔を見たのは………初めてだったから、恐怖さえ覚えている。
そんなセオドアに、エンダーは綺麗な動作で頭を下げた。
「申し訳ございません、セオドア様。あのようなクソ女を雇ってしまった上助けにはいるのが遅れてしまいました」
「い、いや…………私こそ、手を煩わせてしまった………」
呆然としながら紡いだ言葉はか細くなってしまう。しかしエンダーは気にしないと言わんばかりに淡々と言う。
「よかったです、貴方様が不貞な行為をしなくて。していたら、わたくしは貴方を秘密裏に殺していたでしょう」
「…………ッ」
エンダーと言う侍女は、金銭欲が強い女ではあるがアミィール様の専属侍女なだけあってアミィール様を敬っているのだ。そんな気持ちはサラサラなかったけれど、身震いした。
「知っていますよ。セオドア様の御心を見てましたので。紳士としてもアミィール様の皇配としても素晴らしいです、貴方は」
「…………しかし、貴方の手を煩わせてしまった」
「何度も言いますが、わたくしが侍女長です。侍女の不始末はわたくしが対処するのは当然ですわ」
そう言って、エンダーは『紅茶を探すのでしたらお手伝いします』と述べて紅茶の棚に触れていく。
セオドアも慌てて向かいの棚を弄る。………なにか、会話をしよう。レイのこととかも聞きたいし。
「あの、エンダーは侍女長だと言うのは初めて知った」
「そうですね、言っていないので。…………この城の手練や長のつく者はリーブ様とガロ様以外、アンデッドが務めているのです」
「ええ!?」
思わず、大きな声が出た。初耳である。
アンデッド___悪魔やゾンビ、淫魔などの魔物の総称である。もちろん、普通に生活している上で会う生き物ではない。俺もエンダーがサキュバスと知るまでは文献での知識しかなかった。
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