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第20章 SweetでBitterな日常
『男女逆転演説』 #1
しおりを挟むサクリファイス大帝国・闘技場。
此処は古くから軍事国家と呼ばれていたサクリファイス大帝国が誇る場所で、演説等の際はよく使われることが多い。
そして、今日その場所にはたくさんの国民が所狭しと集まっていた。『皇族たちが演説する』と聞きつけたからだ。国民たちは話す。
「何を話すんだろうな?」
「皇女であらせられるアミィール様に代替わりする、とかじゃないか?」
「アミィール皇帝様か、若いけれど稀代の天才だし武力は上がりそうだよな」
「いや、それでも19歳であらせられる。未だ父親である現皇帝ラフェエル様がお譲りしないだろう」
「ふっふっふっ、わかっておらぬな………」
「なんだよ、じいさん」
「この時期に皇帝が代わることは無いじゃろう。つまり、それ以外。そしてセオドア様が皇配になって2年じゃぞ?つまり………」
「も、もしかして_____!」
言葉を紡ぐ前に、国民達は一気に黙った。何故なら____闘技場の真ん中に、人影があったからだ。
黒髪の短髪、黄金の瞳の美男子。
見たことがないほどの美男子なのだが、国民達は違和感に気づいた。黒髪というのはユートピアを探してもいない。『黒』というのは___『世界最終日』で黒い龍の象徴だとユートピア全土に知らしめた色だ。
そして。
その『黒髪』は___1人の皇族の髪色だ。
つまり。
そこまで国民達が考えたところで、美男子は淡い青色の魔力を纏ってすう、と深呼吸した。
【「レディーズあんどジェントルメーーーーーン!今日は御足労感謝だぜ!
今日は嬉しい知らせがあり、このような場を設けた!
とはいえ、普通に演説をするなど詰まらんだろう?
だから、皇族一同と重要側近達で『男装女装演説』を行うぜ!」】
滅茶苦茶な口調、男だとは思えない高い声。それを聞いて国民達は『やっぱり』と悟る。
_____あれはアルティア皇妃様だ。
そう悟ると、国民達の心は踊った。この20年、彼女が行うことは全て新鮮で面白く、いつも自分達を楽しませてくれるからだ。そして、『男装女装で演説する』など前代未聞である。その意味を深く理解せずとも『必ず面白いことが起こる』と確信さえしている。
アルティア皇妃が再び口を開いた。
【「では、皇帝にも来てもらいましょう!
ラフェー………いえ、ラフちゃん!いらっしゃーい!」】
そう叫ぶと、闘技場の舞台へ続く入口から___茶髪のお団子ヘア、可愛らしいのチャイナ姿の美女と、ベリーベリーショートヘアの赤と金のオッドアイのドレス姿の美女が先に現れた。
美しい見た目から____この者達がこの国の重鎮であり、皇帝、皇妃の右腕として活躍し人気を馳せる側近のリーブと側近ガロだと推測させた。美しい見た目で女装など、と少なからず思っていた男達も見とれる。
そんな国民の視線を受けつつ、2人は入口を囲むように端に立ち、その場で膝をつく。すると_____
「______!」
古くからサクリファイス大帝国皇族の証である紅銀の長髪、切れ長の紅い瞳の豪奢な赤と金のドレスを来た女がでてきた。その様は____絶世の美女、という言葉を彷彿させた。
勿論、誰だかすぐわかる。
紅い瞳は国民達の憧れであるからだ。
つまりあの人は_____ラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイス皇帝様なのだ。
そう分かったとしても、………見蕩れないことなど無理だ。体付きこそ男だが、それがどうでも良くなるほど顔立ちが美しすぎて、女性たちは涙を流しながら拝み、男性たちは顔を赤らめ声を失った。
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