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第15章 主人公と兄

※皇族夫婦達は甘々です

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 「サクリファイス大帝国の牛肉はこんなに柔らかいのですね。ヴァリアースでは味わえません」


 「あらお上手。もっと食べて頂戴、セフィアくん」


 「ありがとうございます」



 「…………………」



 セフィアとアルティアは仲良く話している。それを憎らしげにセオドアは見ていた。
 ……………今日は、兄上が来たから急遽会食となった。勿論、俺は『そこまでしなくとも』とは言ったが、兄上に輪をかけて自由奔放なアルティア皇妃様が通常運転で『家族だから!』と押し切った。


 この2人は仲良く話しているが、初対面であるラフェエル皇帝様は厳しい顔で兄上を見ている。大方自分の奥方が楽しげに話しているのは気に食わないのだろう。俺もとてもそれはわかる。何故なら…………



 「お兄様、わたくしのステーキも食べてくださいまし。遠くから来たのですから沢山食べていらして?」


 「ええ。ありがとう、アミィール様」


 「ふふ、どういたしまして」



 「…………………」




 ……………このとおり、アミィール様とも和気あいあい話しているからだ。俺の心中は穏やかではない。そしてさりげなくアミィール様の反対側の席に居るのが気に食わない。いくら兄とはいえ、他の男を愛する人の隣に座らせたくない。


 「………?セオ様?」


 「あ、………ッ!」




 むす、とするセオドアに気づいたアミィールはセオドアの顔に覗き込む。口元に料理のソースがついているのに気づきふ、と笑ってから口元を舐めた。


 セオドアは声を無くして顔を赤らめる。そんな愛らしい男にアミィールはくすくすと笑って声をかける。



 「ふふ、……セオ様ったら可愛いです」


 「あ、アミィ…………」


 本当に俺は単純で。恥ずかしいのに、何も変わらないいつもの仕草で兄上なんてどうでも良くなる。


 この光景は日常茶飯事なのだが、セフィアには新鮮に映って。『ほう』と感心したように言う。



 「セオとアミィール様は相変わらず熱いのですね。新婚を経てなおのこと仲睦まじい」


 「そうなのよ~こういうことを人前でしちゃうくらいには仲良しなのよ、ねえ、ラフェー」


 「……………言ってもやめないからな。

 それより………セオドアの兄なのだろう?騎士団長と聞いたが、ヴァリアースでの鍛錬というのはどういうものをしている?騎士達の士気は?」


 「ああ。それはですね…………」



 「おお…………!」


 セオドアは思わず感嘆の声を漏らす。
 ラフェエル皇帝様と兄上が喋ってる………しかも、スムーズに…………俺は初めて出会った時は『歓迎しない』と断言されたのにな……………やはり、俺と兄上では…………



 「セオ様」


 「?………………っん」




 感嘆から不甲斐なさに思考がチェンジして、暗い気持ちになり涙を滲ませているのをアミィールは見逃さなかった。ナイフとフォークを置いて、自分の方を向かせて触れるだけのキスをする。ほんの一瞬で離れて、セオドアの頭を撫でた。



 「セオ様、___自分と比べる必要はございませんよ?」


 「…………ッ」



 セオドアは目を見開いてから、目を伏せた。………やっぱり、アミィール様は俺の心が読めるようだ…………いっつも凹むと気づいてくれる…………


 不甲斐なさがじんわりと溶けていく。
 そんな甘い雰囲気に大人達は話す。


 「…………申し訳ございません、私の弟が涙脆い男で…………」


 「……………いや、これは私の娘が恥知らずなだけだ」


 「仲が良すぎるのはいいんだけど、食事中なのは忘れているわね~、本当に、誰に似たんだか。絶対ラフェーだけど」



 「………………アルだろう」



 「違うわよ、絶対ラフェーよ。私はどちらかというとセオドアくんに似てるでしょう?」


 「……………罰を落とすぞ」



 「私もちゅーするから許して」



 「…………………」




 この皇族全員熱々だな、と思ったセフィアでした。
























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