207 / 469
第15章 主人公と兄
主人公家の伝承
しおりを挟む「アミィ、出来たよ」
「わあ、セオ様お手製のクッキー!」
セオドアは綺麗に並べられた色とりどりのクッキーが乗った皿をアミィールの前に持ってきた。アミィールはそれを見るなり笑顔を浮かべる。
___結婚して1年が経った。婚約して2年………なんて、律儀に覚えている俺はやっぱり乙女なのかもしれない。
そんなことを思いながら笑みを浮かべるのは、群青色の短髪、緑色の瞳のセオドア・リヴ・ライド・サクリファイスだ。
ギャルゲー『理想郷の宝石』の主人公であるが、攻略対象とは結婚せず、目の前でクッキーを食べる紅銀色のストレートヘア、黄金色の瞳を持つサクリファイス大帝国皇女、アミィール・リヴ・レドルド・サクリファイスに求婚され、結婚したのだ。
共に居て2年、相変わらず2人はおしどり夫婦である。現在も沢山の執務を終わらせてきた愛おしい奥方をもてなし、奥方も笑顔で愛おしい殿方を癒している。
「………やはり、セオ様のお菓子は美味しいですわ。
食べすぎて、太ってしまいそう………」
そう少し不安そうにお腹を撫でるアミィール様が愛おしくて、自然と頬が緩む。むしろ太って欲しい。アミィール様は筋肉はついているが、それでも細すぎると思う。いつも抱きしめる時力加減をしなければ簡単に壊れてしまいそうで怖いレベルだ…………!
なんて言えるわけがなく。けれど、やんわりと伝える。
「アミィは少し細すぎだから………」
「………細すぎだと、魅力はないでしょうか………」
「そ、そうではなく!アミィは細いと言っても胸は大き………ッ!」
セオドアは慌てて口を手で覆う。何言ってるんだ俺ー!?不純だ、女性の胸を大きいなんて言うなんて………!
それだけでも顔を赤くする乙女もといヘタレ主人公の言葉を聞き逃す皇女ではなく。アミィールは少し目を細めて聞く。
「セオ様は、わたくしの胸が大きいとお思いなのでしょうか?それは、嬉しいことでしょうか………?」
「う、うう……………」
セオドアはかあ、と茹でダコよりも顔を赤くする。
勿論嬉しいさ!アミィール様の胸が大きくて柔らかくていつも顔を埋めてしまうんだぞ!最近では胸で顔を抱き締めて貰えないと寝れないくらいに!けど!そんなこと言えるわけがない!
ああ…………結婚しても、俺はなんて女々しいんだ…………これを廊下で聞いているであろうレイは笑っている……絶対だ……………
顔を赤らめながらぷるぷると震えるセオドア様。…………やっぱり、可愛いです。意地悪なことを言うと、いつもこうして子犬のように震えて。これを1度知ってしまうと中毒になってしまいます。
そろそろいつも通り顔を持ち上げ、キスを………………?
アミィールはそこまで考えて、伝達魔法が来る気配を感じる。それと同時に窓からコンコン、という音がした。
見ると、外には鳩が。………これは、オーファン家特有の伝達魔法ですね。
そう思ったのは私だけでなく、オーファン家出身のセオドア様もわたくしの視線を追って「あ!」と声を上げて立ち上がった。
* * *
アミィール様の甘い意地悪を受けている時、アミィール様の動きがふと止まって、視線の先を見たら____鳩が居た。胸には、オーファン家の家紋がついている。
あれはオーファン家全員が使える特殊な伝達魔法だ。
ヴァリアース大国で代々宰相をしているオーファン家には、不思議な言い伝えがある。
『オーファン家は元々空に住んでいて、地上の美女を好きになり天下りした』と。
これはギャルゲー『理想郷の宝石』にも出てこなかった話だから中々信じられないが、この鳩の形の伝達魔法はオーファン家しか使えないし、俺の使うフライは背中に翼が生える。だから、一概に言い伝えとも言えなくて不思議であるのだが。
それはともかく、この鳩は家族から来た手紙なのだ。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
私、異世界で監禁されました!?
星宮歌
恋愛
ただただ、苦しかった。
暴力をふるわれ、いじめられる毎日。それでも過ぎていく日常。けれど、ある日、いじめっ子グループに突き飛ばされ、トラックに轢かれたことで全てが変わる。
『ここ、どこ?』
声にならない声、見たこともない豪奢な部屋。混乱する私にもたらされるのは、幸せか、不幸せか。
今、全ての歯車が動き出す。
片翼シリーズ第一弾の作品です。
続編は『わたくし、異世界で婚約破棄されました!?』ですので、そちらもどうぞ!
溺愛は結構後半です。
なろうでも公開してます。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。
sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。
気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。
※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。
!直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。
※小説家になろうさんでも投稿しています。
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる