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第13章 主人公と擬似育児

リンドブルム孤児院

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 「セオお兄ちゃ~ん!次はお砂場いこ~!」


 「違うよぉ!アルおばさんが教えてくれたどっちぼーるやるんだよぉ!」


 「おままごとの方が面白いもん!ねえ!セオお兄ちゃん!」



 「あ、あはは、…………」






 群青色の髪、緑瞳の美男子、セオドア・リヴ・ライド・サクリファイスは沢山の子供達に囲まれている。



 _____此処は『リンドブルム孤児院』という名の孤児院だ。俺は今ここで公務をしている。


 ………いや、公務という言葉の使い方は間違っているのかもしれない。俺は"未来を育てるお手伝い"をしているのだ。



 サクリファイス大帝国皇族は、自国はもちろん他国の孤児を保護している。親に捨てられた子、戦争に出された子、戦争に巻き込まれ親を失ってしまった子、虐待を受けていた子…………様々な問題を抱えた子供達が集まり、生活し、遊びを通して学ぶ。


 その手助けをするのがこの国の皇族であるサクリファイス家の使命だ。それで、その使命に皇女であるアミィール・リヴ・レドルド・サクリファイス様の皇配の俺が選ばれ、今日も四苦八苦しながら行っている。


 最初こそビビりでヘタレな俺に務まるか不安だったけれど、今は少し慣れたと思う。子供達の中にも溶け込め、こうして遊べるようになった。



 「がおー!食らうぞー!」



 「アルおばちゃん気持ち悪~い♪」


 「にゃにぉお!?お前は必ず食らってやるからなあ~!」


 「きゃー♪」

 「……………………」

 こう言って追いかけている黒髪、黄金色の瞳の美女は俺の義母であるアルティア=ワールド=サクリファイス皇妃である。俺の愛する御方によく似ているが、性格はあの通りフレンドリーを超えた御方。


 ああ見えてこのリンドブルム孤児院の最高責任者であり俺の上司だ。最近やっと独り立ちを果たした俺は、こうして別行動で500人の子供と遊んでいる。



 「セオおにーちゃん?」



 そこまで考えて、ハッと我に返った。
 子供達が不思議そうに見ているから慌てて言葉を紡ぐ。

 「ああ、ごめん。お砂場遊びもドッチボールもおままごともいいね。

 今日は時間も沢山あるし、全部やろう!」


 「「「はーい!」」」



 セオドアのにこやかな笑顔に、子供たちも笑顔で返事をしたのだった。




 *  *  *





 「………………ふう」



 セオドアは寝ている子供のお腹に手を置きながら、一息ついた。………この孤児院は、孤児院というより保育園と幼稚園が合体したみたいな感じで、勉強をしたりお昼寝をしたり日によってやることが違う。今日は保育園の日だ。


 アルティア皇妃様が俺と同じ元日本人だからか、この孤児院のカリキュラムはまんま日本のシステムである。だから俺も馴染みやすかった。しかし、教師や保母一同はイマイチ分かっていない。これもまた仕方ないことで。

 この世界での平民等は貴族と違って学校を行かず仕事をするから馴染みがない。これの必要性を説明するのも俺達の仕事だ。
  


 それはともかく、子供たちはこれで全員寝かしつけた。次は保母の様子を___「………で………なんです」………?


 不意に、俺がいる場所の近くにある扉の外から話し声が聞こえた。俺は静かに立ち上がり、扉を開ける。そこには、メイド服のような構造の服を着た保母が2人立っていた。



 「どうしたんですか?」


 「セオドア様………実は、困った事が起きていまして…………御足労お願いしてもよろしいでしょうか………?」



 「いいですよ」



 保母の困った顔に違和感を覚えつつ、そう返事をした。













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