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第10章 新婚旅行は海がいい
憧れのハネムーン
しおりを挟む「わ、私は…………………」
「……………」
「………………」
何か上手いことを言おうとするけれど、2人の眼光が鋭すぎて言葉が詰まる。………最近、俺も色んな仕事をしているから度胸が身についたと思ったけれど気のせいでした、調子に乗りました、誰か助けてください……………
「あ、っと………「2人とも~、私の可愛い息子をいじめないでよ」……アルティア皇妃様!?」
アルティア皇妃様は後ろから抱き着いてきた。それだけで2人からの殺気がこちらに向く。状況悪化の天才なのかな?アルティア皇妃様?
「……………お母様、離れなければここからナイフを投げます」
「……………セオドア、お前は死ぬ覚悟ができているんだろうな?」
2人とも、そのナイフは食べ物を切るための道具であって人に向けるものじゃないです。そして必殺仕事人みたいな顔をしないでください、このイケメンと美女の親子は冷徹極めるから凡人には本当に生きた心地がしなくなるので…………
同じように殺意を向けられているというのに縮こまるセオドアを抱きしめて笑うアルティアは、口を開いた。
「娘夫婦はいつも仕事ばかりだしバカンスぐらい行かせてあげるのは親の役目じゃない?ラフェエル。
アミィールも行きたいって言うけど長く国を空けられると私の仕事も増えちゃうから2日で妥協しなさい。
ほら解決!それより今日はチーズケーキよ~!」
そう言って1人席に戻ってチーズケーキを頬張り満面の笑みを浮かべるアルティアを厳しい目付きで睨んだサクリファイス皇族家族でした。
* * *
「うう…………………」
セオドアは1人、自室のソファに身体を預けていた。
本当にアルティア皇妃様って滅茶苦茶だよな、最初こそ傾国の美女だとドギマギしていたけれど、一年以上居るとトラブルメーカーな部分しか目にいかない。良くも悪くも何かのきっかけになる人である。
とはいえ。
「………………新婚旅行、行けるんだ」
セオドアはぽつり、そういう。
正直とても嬉しい。だって、諦めていたから。国務を行うのは誉高い。アミィール様とも毎日会える。好きな事も存分に出来て毎日幸せだ。
けれど、乙女な俺はこの言葉にときめかないわけがなかった。考えてなかったけど、無意識下に新婚旅行に行きたかったんだな、と実感する。
でも、与えられたのはたったの2日。2日で何が出来る?いや、でもそれ以上国を空けたら俺もアミィール様も仕事が出来ない。これは仕方ないことなのだ。でも。
「……………新婚旅行なら、少し遠出したかったな、それこそ、ハワイみたいに海が綺麗な場所に行って、2人で楽しく………」
「海ですか?」
「わっ!」
不意に愛おしい人の声が聞こえて、ソファから立ち上がった。見ると___お風呂上がりのアミィール様が。
アミィール様は自室もあるが、お風呂や食事、甘い時間などは俺の部屋に来て行う。曰く『自由な時間は片時も離れたくないから』だそうだ。可愛すぎないか?そしてかっこいいだろう。俺の奥さんだ。
「?どうなさいました?」
「……………あ、いや、なんでも…………」
得意気になっていた気持ちはアミィール様のお顔が至近距離に来た所で引き締められた。本当に美し過ぎる………見れば見るほど俺が旦那でいいのか、なんて考えてしまう。もう少しで結婚して1年になるのに変われてない俺…………ヘタレすぎる………
顔を赤らめながら自己嫌悪に陥るセオドアに首を傾げつつ『海ですか………』と考える。
「海でしたら、シースクウェア大国ですね。あそこの海はとても綺麗なので」
「シースクウェア大国…………!」
アミィール様のお言葉に思わず反応した。
"海と水と生きる国"・シースクウェア大国。サクリファイス大帝国よりは小さいしヴァリアース大国より緑が豊かな訳では無い。その通り名通り、海が綺麗な国だと聞いている。このユートピアで食べれる魚は殆どシースクウェア大国産だ。勿論これら全ての情報は文献で得たもので、行ったことは無い。
でも。
「……………行ってみたいな」
きっと、海は勿論、珊瑚や真珠なども綺麗なのだろう。乙女男子としては見たいし、男としてはそれを使った何かを愛する人にあげたい。
天井を見上げながら、愛おしい御方が緑の瞳を細めている。そんな顔を見たら、叶えたいと思うのは普通でしょう?
だから。
「____行きましょう、シースクウェア大国へ」
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