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第10章 新婚旅行は海がいい
新婚旅行 #とは
しおりを挟む「ねえ、アンタ達新婚旅行はしないの?」
「え」
セオドアはフォークを持つ手を止める。
…………今日は週に2回ある家族で夕食を共にする日だ。だから、これを言ったのはアミィール様ではなく、滅茶苦茶で自由奔放、そして俺と同じ元日本人だったアルティア皇妃様だ。
突然の発言に反応に困っていると、既にメインデッシュを食べ終わったアミィール様が首を傾げた。
「しんこんりょこう…………?なんですか、それ」
「新婚旅行、というのは新婚の記念に旅行をすることです」
セオドアは分かりやすくアミィールに説明する。
アミィール様が知らなくて当然だ。この世界にそんな風習はないのだ。でも、俺は元日本人だから知っていて、思わず答えてしまう。でもすぐに気づいた。
これ、言ったら日本人だったってバレるんじゃ………!?いや、隠す必要はないことだけど、前世で~なんて誰が信じる?俺だったらは?って言っちゃうと思う!やらかした!
冷や汗を流すセオドアの心配など杞憂で、アミィールは『そうなのですか!』と目を輝かせた。
「わたくし、行きたいですわ!セオ様、行きませんか!?」
「え、でも…………」
アミィール様が食い気味に何かをお願いするのは珍しい。勿論答えたいけれど………アミィール様は皇女で、もう既にサクリファイス大帝国には欠かせない御方。休みなど取れるわけがない。
その考えは間違っていなかったようで、サクリファイス大帝国皇帝でありアミィール様の父親で俺の義父にあたるラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイス様は鋭い目付きでアミィール様を睨んだ。
「巫山戯るな。お前には仕事があるだろ」
「わたくし達は結婚してもう10ヶ月も経ちました。新婚もあと2ヶ月で終わりますでしょう?でしたら、1年目のうちに行きたいです」
「ダメだ」
「行きます」
………………両者1歩も引きません。この2人は考え方がまるきり似ている上性格も似ているので1度睨み合うと中々長期戦になるのです。
で、事の発端というと。
「いやね~食事中に喧嘩なんて、おーい、セオドアくんのデザート持ってきて~!今日はなに~?」
……………このとおり、奔放である。なんというか、焚きつけるだけ焚き付けてさらりと忘れたように行動するアルティア皇妃様は凄すぎる。というか、挟まれている俺は止めるべきなのか…………?
「あ、あの、喧嘩は………」
「…………セオドア、お前の口からもこのじゃじゃ馬娘を止めろ。お前の女だろう?」
「セオ様、相手が皇帝だからといってご遠慮は無用です。はっきりおっしゃってくださいまし」
2人は止めに入ろうとしたセオドアに矛先を向ける。鋭い矛先にセオドアは慌てた。
と、飛び火ー!完全に選択を間違ってしまった………………そりゃあ、行きたいさ。好きな人とハネムーンなんて憧れていたし、素敵な所に行きたい。ただでさえアミィール様は忙しく、朝と夜しか会えずにアミィール様不足に悩まされることは多い。
けれども、この国には宰相などおらず、全部皇族が多岐に渡る事柄を処理している。つまり、俺達が1週間居ないとなると、山のような執務をラフェエル皇帝様とアルティア皇妃様2人でやらなければ行けなくなる。そう考えると、『行きたい』などと言いづらい。
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