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第9章 慌ただしい日常

一皮むけました

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 「んぅ…………………」



 朝、頭の痛みで起きた。
 窓から差し込む日差しが眩しい、俺、昨日なにを____!


 目を擦りながら隣を見ると___アミィール様が裸で眠っていた。これは珍しいことで、俺の寝ぼけた頭は一気に仕事をし始めた。



 アミィール様はいつも俺より早く起きて鍛錬に行ってしまう。俺がいくら早起きしようともいつもアミィール様が汗だくで『おはようございます』と笑いかけてくれるのが日常なのだ。


 その!アミィール様が!寝坊!?これはもう大事件である。一体何が____!



 そこまで考えて、ふと昨日の記憶が蘇る。それは酷く朧気だけど…………俺は…………!



 俺は急いで枕元を見る。避妊具が置いてあって___一気に血の気が引いた。


 俺はなんてことを……………!




 「ん…………セオ………?」


 「ッ、アミィ!」



 モゾモゾと動き始めたアミィール様を抱き締める。やばい、泣きそうだ。俺、最低な事をした…………!



 セオドアは涙目になりながらも、たどたどしく言葉を紡いだ。


 「ごめん、ごめんね、アミィ、俺…………アミィに酷いことを…………」



 「酷いこと?…………何も、してないじゃないですか」


 「…………ッ」



 アミィール様は少し驚いた声を出すものの、すぐに優しい声を出して俺を抱きしめた。子供をあやすように頭を撫でられながら、諭すように続ける。



 「わたくし____昨日、とても幸せでした。………初めて、セオ様の欲望を全部受け止め、いつもより沢山愛されました。


 凄く、すごく嬉しいのです。

 だから_____今度は、お酒の力がなくても、セオ様の思うように抱いてくださいまし。


 我慢なんてしないで下さい。わたくし、全部受け止めたいので」



 そう言って、アミィール様は俺の額にキスをして、笑う。その笑顔は本当に幸せそうで。それを見ただけで、胸が熱くなった。


 俺…………こんなに幸せでいいのか…………?
 あんなに乱暴だったのに。あんなに自分勝手だったのに。それでも『受け止めたい』と言ってくれるアミィール様の大きな愛に___やっぱり、涙が零れた。


 「アミィ……………ありがとう。本当に、愛している____」


 「はい、わたくしも愛しております___」



 セオドアは泣きながら、アミィールと唇を重ねた。アミィールも嬉しそうに受ける。


 ____お酒に酔って自分に素直になった俺でも、アミィール様は愛してくれるとわかった1件だった。








 *  *  *




 「……………………………」




 セオドアは机に肘をつけてぽけーっとしている。今日はいつものように布団に篭っていないのを見て、レイは笑う。


 「セオドア、口開いてるぞ。そしてだらしない顔だ」


 「あ、…………ああ」



 わかりやすい空返事をするセオドアを見て、レイはぽつり、にやけながら呟いた。


 「………………やっとつまらない我慢を辞めてアミィール様を愛したか」


 「は、はぁ!?」



 ぼそ、と言ったのにも関わらず、セオドアはそれを耳聡く聞きつけ真っ赤にしながら動揺した。


 なんでわかった!?というかなんで知っている!?


 「ッ………ッ………!」



 様々な疑問が浮かぶのに事実を自分の口から出すのに躊躇う。声にならない悲鳴をあげるセオドアを見て、レイはくつくつと喉を鳴らして笑う。



 「これからはしょーもない我慢はすんなよ、アミィール様が傷つくぞ~」


 「だ、な、ッ………な、何を言っているんだ、わ、私はッ、…………」



 必死に言葉を紡ごうとする主人を見てやっぱり笑った執事でした。

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