【完結】異世界転生でギャルゲーの主人公になったけど攻略対象外キャラにここまで熱烈に溺愛されるなんて聞いてない！

第8章 幸せな新婚生活

皇女の使命

　






　「ぎゃぁぁぁぁぁ！」



　「ひっ、ひぃい…………っ！」





　男達は、怯えている。
　目の前には＿＿＿＿＿＿紅銀のポニーテールを血に染めた黄金色の瞳の女。片手に持つ青紫の剣も、鎧も、全てが血に塗れている。



　沢山の兵士達が恐ろしいものを見る目をしている。





　＿＿＿＿＿＿＿＿＿私は、人殺しだ。




　足元には、もう既に息をしていない、死体の山。女は無表情にその人間だったモノを踏み、退く男たちを見る。



　まるで、化け物を見るようにこちらをみている。





　ううん、違う。



　わたくしは、間違いなく『化け物』なんだ。




『アミィール、どうする？』




　手に持つ魔剣が、問うてくる。
　頭に直接、問うてくる。



　＿＿＿＿決まっている。全員殺す。



　「グハァッ！」


　「カハッ！」



　女は血の雨を降らせる。舞うように、踊るように血の雨の中を、更に血に染めていく。 


　わたくしの道は＿＿＿＿＿＿何時だって血しかない。



　わたくしの身体にはこの『穢らわしい血』が張り巡らされている。脈打って、わたくしの全てを作り出している。



　その血が人間の魂を虫けらのように潰していくことになんの躊躇も与えない。



　「こ、殺さないでくれぇ………！」



　「こ、降伏する！頼む！命だけは！」



　「＿＿＿＿＿＿＿＿死になさい」




　命乞いをする人間の首を揃えて切り落とす。噴水のように溢れ出る血を全身に浴びる。





　＿＿＿＿＿＿もう1つのわたくしの血が『生贄』の血。



　自分の魂を差し出す為に、穢して、穢れて。『穢れた血』に捧げる為に犯し続けた罪を。


『生贄』の名に恥じぬどす黒く染まった魂に。 


『龍神』の名に恥じぬ身体に巡る穢らわしい身体に。




　＿＿＿＿＿それが、わたくしの宿命。わたくしの課された罪。



　存在さえも許されない、＿＿＿＿穢い生き物。


　それが………………わたくし、アミィール・リヴ・レドルド・サクリファイスだ。



『……………アミィール……………すまない』



　魔剣が謝る。なんで？なんでアンタが謝るの？



『俺達が＿＿＿＿＿＿お前の悲しい人生を創り出したから』



　………………笑わせないで。


　それしか無かったくせに。それしかこの世界を救うことが出来なかったくせに。



　わたくしは、両親が好きだ。愛している。

　両親も、愛し合い、支え合い、慈しみ合い＿＿＿＿＿大切に想いあって、わたくしが出来た。



　わたくしは愛されたんだ。先祖は恨めど両親自体を恨む気持ちなど毛頭ない。



『……………ごめん』





　わたくしの人生に勝手に謝らないで。


　わたくしの宿命に勝手に謝らないで。


　わたくしは＿＿＿＿＿＿



　女は、殺す、殺す。
　一切の躊躇も、一切の温情も、ない。



　自分より大きな男を、自分より愚かな男を。


　自分に向かってくる男たちから魂を奪う。1人殺す度に、心にどす黒い気持ちが落ちてくる。そのうち、満たされていく。



　「し、にたく、ない…………！」


　「ご、めんなさ…………！」





　なのに、渇く。どれだけ殺しても、血を浴びても、喉が、心が、カラカラなのだ。

　どうすればこの乾きは癒える？

　どうすればわたくしの心は満たされる？




　淡々と、まるで単調な作業を繰り返すように。


　どこまでも冷徹でどこまでも残酷な女は＿＿＿＿＿呟いた。




　「わたくしは＿＿＿＿＿自分の宿命を全うする」



　そう呟いた頃、自分の周りには＿＿＿＿血の海と、沢山の肉塊しかなかった。