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第6章 お披露目祭り

皇妃様は無茶苦茶

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 「セオ!」


 「おかえりなさい、セオ!」



 「弟よ~!」



 「わわっ」



 丁度1ヶ月で、俺は実家に帰ってきた。なにも変わらなくて安心していたら、家族が温かく………というか、飛びついて出迎えてくれた。それだけで、もう泣きそうだ。


 ぐっ、と泣くのを我慢して、セオドアは飛びついてきた家族をまとめて抱きしめ返した。



 「……………ただいまかえりました、父上、母上、兄上」



 セオドアの鼻声に、父・セシルはぶわ、と涙を流した。


 「立派になって…………ッ」


 「貴方、泣かないでくださいまし。セオが泣いてしまいます」


 そう言って優しく笑う母・ガーネットはよしよしと旦那であるセシルの背中を摩る。



 「もう手遅れだけどな」


 「むぐ、………ッ」



 泣いている自分を小馬鹿にして頬をつつきながらも優しい笑みを浮かべている兄・セフィア。



 一年離れていたけど、みんな変わりなくてもう涙腺崩壊。自分でも女子過ぎるなと思う。



 「あら~、とってもいい家族。ねえ、あんたもセオドアくん見習ってもうちょっと私に甘えたら?」


 「死んでも嫌です」



 そんな幸せそうな家族を見て羨ましくなったアルティアはそれを見つつ娘に言うが、娘のアミィールは容赦がない。


 そんな会話をしている2人にやっと気づいたセシルは涙を拭きながら頭を下げた。




 「アミィール様!とんだ恥ずかしいところを……………?隣の方は、もしや……………!」



 「気にしないでください。隣のは………………侍女です」


 「爽やかな笑みで嘘をつくな!………っと、はじめまして、サクリファイス大帝国の皇妃をやっているアルティア=ワールド=サクリファイスです。


 挨拶が遅れてしまい、申し訳ございません」




 無理がある他人のフリを華麗に決めたアミィールを殴ってから、何事も無かったかのように綺麗なお辞儀をするアルティア。 


 それを聞いて全員が跪いた。
 セシルが震えながら口を開く。



 「と、とんだ失礼を!私はセオドアの父、セシル・ライド・オーファンと申します…………」



 「母の、ガーネット・ライド・オーファンでございます。この度は御足労頂きありがとうございます」



 「セオドアの兄のセフィア・ライド・オーファンです。お会いできて光栄です、サクリファイス大帝国皇妃様」



 父以外の2人は落ち着いて頭を下げている。俺は完璧に父親に似たんだな、と実感する。というか母上も兄上もメンタル強すぎないか?皇妃が目の前にいるんだぞ?



 …………とはいえ、メンタルの強さならやはりこの人である。


 「皆様、頭をおあげ下さい。私達は家族になるのです。セオドアくんの家族は私の、サクリファイス大帝国皇族の家族ですわ。

 もっと気軽に、それこそ友達感覚でお願いします」



 形にハマらないアルティア皇妃様はそう言ってがはは、と笑う。皇妃様が近所の若奥様に見える。いや、笑い方は完全に近所のおばちゃんのそれである。美しいからなおのことシュールだし、俺の家族一同も目を丸くしている。



 ただ一人、アミィール様だけ大きな溜息をついた。


 「………………お母様、それは皇族の言う言葉ではありませんわ。見てください、皆様が困惑なされています」


 「あら?いいじゃない。貴族がどーのとか皇族がどーのとか。赤の他人ならまだしもアンタとセオドアくんは結婚するんでしょう?親戚よ親戚。

 私憧れてたのよねー!大家族!ガーネットさんとは母親同士お喋りしたいし、セシルさんにはうちのラフェーと呑んで欲しいし?セフィアくんもアミィールのお兄ちゃんになるわけだし仲良し家族になりましょー!」



 「そ、そんな!皇帝様とお酒など恐れ多い…………!」


 「わ、わたくしで宜しければ………?」


 「アミィール様と兄弟になれるのは光栄の極みですなあ」




 ………………………やっぱり、チート能力を持つ異世界転生者というのはどこかズレているようだ。ついでにこのテンションについて行くうちの変人兄上もズレている………………


 アミィールとセオドアは親同士の絡みに完全に取り残されていたのだった。

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