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第5章 主人公の隠された能力

触発されちゃうお年頃

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 「まあ、皇帝様の皇妃様への愛は凄いと有名な話だがな。大帝国の皇帝なのに、皇妃様以外の側室は持たないし、皇妃様を戦場に連れていかなければ会いたすぎて早く終わらせる、なんて専らの噂だ」




 「うん、凄くわかる。皇帝様はとても愛情深い。それでいてなんでも出来るんだから凄いよ。私はとても感動した」



 レイの言葉に饒舌になるセオドア。
 …………数日前の怯えが嘘のようだな。そこまで皇帝がいい人だったか。


 セオドアの人の見る目は優れている。
 本人は自覚していないが、オーファン家では新しい使用人を雇う時必ずセオドアを呼ぶほどだ。そしてそれは見事に当たる。………なんのスキルもないと言っていたけど、十分すぎるスキルだよなあ………


 そんな主人は未だにうっとりとしている。乙女が目覚めているのは容易にわかった。



 これは何を言っても聞かないな、と思っている時、コンコン、と軽快なノック音が聞こえた。この時間に部屋に来る人間など一人しかいない。



 それはセオドアもわかっていて、嬉々とした顔で『どうぞ』と言った。




 「セオ様、お疲れ様です」


 「アミィも、お疲れ様」


 そう言ってお互いの頬にキスし合う2人。レイは『お前達も十分甘いよ』と心で呟いてそ、と外に出た。



 …………俺も婚約者が欲しいな…………メイドに声かけてみよ。



 そう思ったレイでした。






 *  *  *








 「セオ様、本当に大丈夫ですか?」


 アミィールは心配そうにセオドアに問う。勿論、アミィールの耳にもアルティア皇妃のお手伝いをしていることが入っているのだ。


 自分を心配してくれるアミィール様の優しさに更に頬を緩めた。



 「ああ。ラフェエル皇帝もアルティア皇妃もお優しくて…………未だにラフェエル皇帝は話しかけてはくれないけれど、感情の起伏はわかるようになったんだ。ラフェエル皇帝は甘さ控えめのマカロンやモナカを好むだろう?」



 「えっ、よくわかりましたね。皇帝は自分から美味しいと言わないのに…………」



 「うん、美味しい時は眉間にシワが寄るんだ。逆にあまり好みではないと耳朶に触れる。他にも、シースクウェアのコーヒーが口に合うらしい」



 セオドア様は嬉嬉としてそう語る。…………自分に刃を向けた相手をここまで許せるものなのでしょうか…………


 とはいえ、あんな父親でも大切で。好きな人に褒められて悪い気はしない。………それどころか、とても嬉しい。



 本当に素敵な御方、傍にいればいるほど夢中になっちゃう。………でも。



 「わっ」

 アミィールはセオドアを抱き寄せる。そして、鼻がくっつくくらい近づいてむくれた顔をした。


 「……………皇帝の話ばかりされると、わたくしは嫉妬します。セオ様は皇帝の婚約者ですか?」



 「ッ、そ、そういうわけでは____ッ」



 言い終わる前に、唇を重ねた。
 いくら尊敬している父親でも、いくら強い母親でも、セオドア様はわたくしの婚約者なのです。


 いつものように強引にキスするアミィール様。…………実は、皇帝様夫婦のイチャつきを見てると俺もアミィール様に触れたいなぁって思うんだ。だから、毎日のキスが更に幸福感を与える。達成感に近いのかもしれない。

 そんなことを思いながら、皇帝夫婦がするよりも甘く、深く唇を重ねる。………足りない。もっと。


 あのお二人のように堂々と愛し合えればいいのに。触れたい時に触れ、愛し合いたい時に愛し合い、言いたいことは全部言う。




 すっかり、俺の理想の夫婦像になっていた。



 ____アミィール様と、そうなりたいな。



 「っ、あ、……セオ様、ッ」


 「?…………あ! 」




 我に返ると、俺はアミィール様の服を脱がせていた。豊満な胸がチラついていて慌ててアミィール様の服を直す。


 「も、申し訳ありません!」


 「い、いいえ、その………辞めてしまわれるのですか? 」



 「うう…………ッ」



 頼むからそんな色っぽい顔で誘惑しないでくれ…………………


 セオドアは顔を真っ赤にして下を向いた。アミィールはそれを見てくすくすと笑う。


 _____皇帝夫婦のことを考えると、更に理性が効かなくなることを覚えたセオドアでした。














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