64 / 469
第5章 主人公の隠された能力
決意の口付け
しおりを挟む「……………落ち着いたか、アミィ」
「ぐすっ………申し訳ござ………ッ」
1時間ほど2人で泣いて、やっと落ち着いた。けれどアミィール様は未だに涙を流しておられる。………俺のことをここまで心配してくれているのがわかって、泣いているアミィール様には悪いけど、凄く幸せだった。
アミィール様は嗚咽をしながら顔を上げた。黄金色の瞳が未だに涙を称えている。
「もう、あのようなことはなさらないで…………ッ、わたくし、心臓がいくらあっても足りません…………」
「それは…………約束できないよ。だって、私はアミィと出会えたことを否定したくない。アミィが私の全てだもの」
セオドアはそう言ってアミィールの涙を舐める。とてもしょっぱいけれど、どこか甘い、不思議な味。
アミィールはそれを受けてから、セオドアの首筋にある傷を舐めた。
「んっ、………」
セオドアはぴくり、と体を捩った。
アミィールはそれでも辞めず、傷に舌を這わせる。
セオドア様の血、甘い。優しい言葉に嬉しい気持ちはある。けれど、わたくしだって譲れない。
アミィールは首筋から顔を離し、セオドアの頬を両手で包んだ。
セオドアの緑の瞳が涙に濡れて、目尻が赤い。鼻水も出ている。………愛おしい御方のお顔はいつだって輝いて見える。
「わたくしは、…………セオ様に傷ついて欲しくないのです。セオ様をお守りしたい。セオ様は……………生きることだけを考えてください」
「それは私だって一緒さ。………アミィが傷ついている姿は見たくない。泣いている姿を見たくない。…………貴方をお守りしたい。
全部貴方を愛しているから。
___貴方への愛を否定したくないんだ」
そう言って、セオドアもアミィールの頬を持つ。
2人はどちらとも言わず唇を重ねた。涙や鼻水でぐちゃぐちゃなのに、それでも唇を何度も交わし、ベッドに倒れ込む。押し倒された反動でアミィールの瞳から涙が流れる。
………………この人は、なんでも1人で背負い込もうとするんだ。こんなに小さな身体で、それでも俺を守ろうとする。
___でも、俺だってこの人を守りたいんだ。
「ん、ふぅ、っ…………」
何度も求め合う。何度交したって飽きない。いつだって甘くて、………今は少ししょっぱいけれど、それも美味しくて。
_____俺は、この人を守る為に、この人を泣かせない為に、強くならなければならない。
それだけじゃない。
俺とは違う愛で、この人を想っている皇帝___お父様にも認められなければならない。
この人を守る為に、俺はなんだってしたい。
乙女男子だって、男なんだ。
そう改めて気を引き締めつつ、決意を伝えるように何度もアミィールの唇を自分の唇で伝えた。
アミィールは悲しそうにしながらも、それに応えるように唇を、唾液さえも受け止めた。
* * *
その頃、玉座の間。
「……………………クソ」
サクリファイス大帝国皇帝・ラフェエルは毒づいていた。
生意気な小僧だ。
私の剣を手で掴むだけでなく、私にこのような思いを抱かせるなど、虫けらには許されない行為である。
アミィールもアミィールだ。
小さい頃こそ可愛かった。いつだって私の傍に置けたし、周りも何も言わなかった。
大きくなって、それを周りが許さなくなって、アミィール自身も反抗し始めて。
そして、男を見つけてきた。
_____不愉快だ。
ぎり、と歯ぎしりをしていたのを皇妃・アルティアは呆れながら見ていた。
本当に親ばかなんだから……………父親というのは何故こう娘が大好きな人種なのか……………
そんなことを思いながら、今は亡き父親に想いを馳せた。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
私、異世界で監禁されました!?
星宮歌
恋愛
ただただ、苦しかった。
暴力をふるわれ、いじめられる毎日。それでも過ぎていく日常。けれど、ある日、いじめっ子グループに突き飛ばされ、トラックに轢かれたことで全てが変わる。
『ここ、どこ?』
声にならない声、見たこともない豪奢な部屋。混乱する私にもたらされるのは、幸せか、不幸せか。
今、全ての歯車が動き出す。
片翼シリーズ第一弾の作品です。
続編は『わたくし、異世界で婚約破棄されました!?』ですので、そちらもどうぞ!
溺愛は結構後半です。
なろうでも公開してます。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
【完結】聖女召喚の聖女じゃない方~無魔力な私が溺愛されるってどういう事?!
未知香
恋愛
※エールや応援ありがとうございます!
会社帰りに聖女召喚に巻き込まれてしまった、アラサーの会社員ツムギ。
一緒に召喚された女子高生のミズキは聖女として歓迎されるが、
ツムギは魔力がゼロだった為、偽物だと認定された。
このまま何も説明されずに捨てられてしまうのでは…?
人が去った召喚場でひとり絶望していたツムギだったが、
魔法師団長は無魔力に興味があるといい、彼に雇われることとなった。
聖女として王太子にも愛されるようになったミズキからは蔑視されるが、
魔法師団長は無魔力のツムギをモルモットだと離そうとしない。
魔法師団長は少し猟奇的な言動もあるものの、
冷たく整った顔とわかりにくい態度の中にある優しさに、徐々にツムギは惹かれていく…
聖女召喚から始まるハッピーエンドの話です!
完結まで書き終わってます。
※他のサイトにも連載してます
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。
sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。
気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。
※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。
!直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。
※小説家になろうさんでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる