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第4章『理想郷の王冠』と『理想郷の宝石』
使いっ走り系太陽神
しおりを挟む「セオドアくん!」
「……………?」
机に突っ伏そうとしているのをアルティア皇妃の声が止めた。アルティア皇妃はにっこりと笑って言う。
「要は太陽神がアミィールのことを好きでなければ安心するんでしょ?」
「いや、そういうわけでは…………」
「じゃあ太陽神に聞いてみましょう」
「え、あの」
そういうことじゃない、というのはどうやら伝わらないらしい。というか、太陽神に聞いてみるって?
セオドアが首を傾げているのを見つつ、アルティアはパチン、と指を鳴らした。
「!」
すると、お菓子を作った時に見たような黒渦が空に現れた。なにをしようとしているんだ…………?
アルティアは戸惑いを隠せないでいるセオドアを放って、呟いた。
「____来なさい、ドゥルグレ」
『ぐあっ!』
「ええ!?」
アルティア皇妃が呟いたら、黒渦からオレンジの刈り上げ、ピアスが沢山着いた福耳、金色の瞳、そして………4本の腕の、『理想郷の王冠』に出てきた攻略対象キャラ、太陽神・ドゥルグレが現れた。
ドゥルグレは俺の1番推していたキャラである。嬉しくないわけはないけど、この太陽神もアミィール様を『くそ女ぁ!てめえこの呼び方やめろって言ってんだろ!』
軽く感動さえ覚えているセオドアの思考をドゥルグレの怒鳴り声がかき消した。ドゥルグレは怒り狂っている。
『というかいい加減呪いを解け!お前の手足になった覚えはねえぞ!』
「あら、いいじゃない。嫌よ嫌よ、って奴でしょう?」
『嫌よ嫌よじゃなくて本当に嫌なんだよ!』
ギャンギャン吠えてるー…………キャラ崩壊待ったナシ、超絶俺様キャラなのに明らかにアルティア皇妃の方が主人って感じがする。
そんなご主人様なアルティア皇妃は太陽神・ドゥルグレに聞く。
「ねえ、アンタって私の娘は好き?」
『あん?好きなわけねえだろ、お前とあのくそ生意気な人間の子だぞ?あー、気色悪い。あれ好きになるくらいなら死んだ方がマシだわ』
「アンタ、後で半殺しね。…………ね、分かったでしょ?セオドアくん」
「あ、……………はい」
突然話を振られて変な声が出た。は、恥ずかしい………!
いつものように顔を赤くするセオドアをドゥルグレは見て『ほお』と声を上げて近づいた。
『珍しい魂してるじゃねえか、小僧』
「え?」
『クソ女の魂はどす黒くてきったねーけど、この男は真逆だな、ここまで綺麗な魂は珍しい』
「なっ、………」
ドゥルグレが!大好きだったドゥルグレが!顔を近づけてきてる!いや、アミィール様の時のようにドキドキはしないけど!アイドルに生で会った気分!
耳まで真っ赤にして目を閉じるセオドア。その様子にくつくつ、とドゥルグレは喉を鳴らして笑う。
『可愛いじゃねえか、俺ァ男もイケ__「人の息子を口説くなくそ神」__っぎ!!!!』
セオドアに触れようとするドゥルグレの頭をアルティアは思いっきり叩いた。
今男もイケるとか言われた気がするけど嘘だよな?これは乙女ゲームでBLゲームじゃないよな?なんで毎度貞操の危機を感じているんだ俺?…………
さりげなく距離を取るセオドアを見守ってから、アルティアはしっしっ、とドゥルグレにした。
「もういいわ、帰ってちょうだい。引き続きこのひまわり畑を維持してね」
『だからなんで俺は呼ばれたんだよ!………ちっ、じゃあな、小僧!お前ならいつでも呼んでいいからなっ!』
そう言ってドゥルグレはふっ、と消えた。アルティア皇妃は何事も無かったと言わんばかりににっこり笑う。
「____このとおり、太陽神は大丈夫よ。アミィールを好きにならないから」
「は、はい」
…………もしかしたらアミィール様よりチートなのはこの母親なのかもしれない、と思ったセオドアでした。
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