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第2章 主人公の心、揺れ動く
大人達はお節介
しおりを挟む「女王陛下様、この度はお招き頂き感謝です」
俺はそう言って跪いて最上の礼儀を尽くす。目の前には____深緑の頭に王冠を乗せた黄緑の瞳の美しい女王陛下がいらっしゃる。
以前父が言っていた女王陛下との謁見の場である。
何度か宰相である父に連れられて面識はあるものの、女王陛下はやはり美しい方である。……………まあ、アミィール様の方がお美しいが。
「…………頭をおあげ下さい、セオドア・ライド・オーファン」
「は」
頭を上げると、女王陛下____エリアス・ラピュード・ヴァリアースは優しく笑った。
「お礼を言うのはこちらですわ。我が国、ヴァリアース王国とサクリファイス大帝国は浅くないご縁。ですが、此度の事でより強固なご縁となるのでしょう。
……………コロンビア公爵家のご令嬢の失言の話はお聞きしました。辛かったでしょう?」
「……………いえ、そんな…………」
「ですが、安心してください。この件でオーファン公爵家に処罰をさせないとエリアス・ラピュード・ヴァリアースの名に誓ってお約束しましょう」
「ありがたき、幸せ」
本当に寛大な女王陛下様である。昔からこの女王陛下様には好感を持っていたけれど、この時ほど強くそれを感じたことは無かった。
エリアスはそのようなことを考えるセオドアを見ながら、扇子で口元を隠しながら言う。
「……………それで、セオドアはアミィール様をどう思われているのですか?」
「え」
突然の質問に顔を上げてしまう。見ると____エリアス女王陛下と父・セシルの目は好奇に満ちていた。
「アミィール様を幼い頃から見てきましたが、ご両親に似てとても優秀な御子でしたわ。貴方もセシルの子で優秀だと聞いておりますし…………わたくしからしたらコロンビア公爵家の者と結婚するよりもいい事だと思っております」
「ははは、女王陛下はお口が上手いですね。ありがたいです。我が息子達は優秀ですからね。きっと、サクリファイス大帝国の方々にも喜ばれるでしょう」
いやいやいや……………なんで貴方達が盛り上がっているんだ…………?そして優秀ってなんだ、顔は主人公として整っている方だけど中身は乙女で兄のように剣も扱えないし頭も中の下ですが?アミィール様の目を疑うほど女々しい自信しかないのだが………………
嬉嬉として話す2人を見守るしかできないセオドアに、エリアスは『そうだわ』と言って俺を見る。
「せっかくですし、アミィール様と面会なされては?この城内におられますし」
「…………!いいの、ですか?」
セオドアがそう聞くとエリアスはにっこりと笑った。
「アミィール様の執務が終わっていたらですが……………学園が自由登校になってから1度もお会いしてないと聞いております。せっかく婚約をしたのですから、少しくらい時間をとってくださるでしょう」
それはすごく有難かった。……………婚約を受け入れてから早2週間、学園に足を運んでもアミィール様のお姿はなかった。会いたい気持ちが募っていたから、再び頭を下げた。
「会いたいです、よろしくお願いします」
そう言うと、エリアス女王陛下のメイドが俺を応接室へ連れていってくれた。
* * *
「____え、セオドア様が!?」
アミィールは終わらせた執務の書類の山を声と共にひっくり返した。いつもの冷静さは微塵も感じさせない皇女に、皇女専属侍女・エンダーは淡々と答える。
「ええ。応接の間にいらっしゃいます」
「ここに通してちょ「なりません、ここにはサクリファイスの国家機密書類がありますので」…………ふぅん」
夫になるのだから国家機密などいくらでも…………とは立場上言えないアミィールは少し考えてから立ち上がる。そして、エンダーに言った。
「今すぐ行きますわ」
「その格好でですか?」
「………………」
そう言われてアミィールは自分の姿を見る。普段から敵襲などに備えてドレスは着ていない。今日も男性物の衣類を纏っている。この姿ではセオドアに男っぽいと思われてしまう_既に手遅れなのだが_と思い至ったアミィールは再び口を開いた。
「…………すぐにドレスを」
「は」
セオドア様絡みになると、自分の事などどうでもよくなってしまうなと改めて感じた。
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