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第1章 異世界転生と学園生活

貴方と同じ事をしたい

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 「うう………………」




 セオドアはフラフラになりながら、渡り廊下を歩く。今日も隣にアミィール様が座ってた………………それを見る度に周りはザワザワと騒ぎ、あろう事か『もう婚約した』とまで言われている。



 実際は、マフィンとの婚約解消で向こう3ヶ月ほどかかるから再び婚約するには3ヶ月も待たなければならない…………って、何を考えているんだ俺は!



 セオドアは近くにあった柱に額を打ち付ける。ダラダラと流れる血などお構い無しに頭の中で否定する。



 相手はサクリファイス大帝国の皇女だぞ!?いくら俺が主人公だとしても高嶺の花だって!無理無理無理、そんな結婚なんてしたら俺はきっと毎朝死ぬ!隣にアミィール様の寝顔があったら緊張死ぬ!




 別の意味で周りがザワザワしているのにも気づかずに、何度も何度も否定する。




 相手はサクリファイス大帝国の皇女、こんなの一時の迷いみたいなものだ、主人公補正だって学園を卒業してしまえばそれだって…………………



 ふと、我に返る。アミィール様の笑い声が聞こえたからだ。少し遠く、中庭で令嬢とお話をしていらっしゃる。その笑顔は自分に見せるものではなく、普段の高貴な控えめな笑みだ。



 あの溌剌とした笑顔は、俺以外に見せない……………って!煩悩!


 セオドアは自分の頬を思いっきりビンタした。自制しろ!自惚れるな!


 俺は現実的に生きるんだ!高嶺の花を見上げる存在に留めるんだ!




 ………………こういう時は、花を愛でよう……………




 セオドアはフラフラになりながら、渡り廊下を後にした。




 *  *  *




 「よし!張り切ってやろう!」


 セオドアはパァンと両頬を叩いて花壇の前に座る。今日はいい天気だから雑草を抜くんだ。花が元気に育つように、手入れは欠かさない。用務員の人に頼んでおいたスコップを片手に雑草を抜く。



 あ~これと、チョコを溶かすのと、マフラーを編んでいる時が1番平和だ。男なのに、と同級生には言われるけれど、こういう地味な労働がとても心地いい。


 前世でも自分で花を買って育てたりしていたけど、公爵に生まれたおかげで自分の小さな花壇まで作ったほどだ。金持ちってやっぱりいいよな。主人公より農家とかの方が向いている気がする。
  



 「草むしり?」 


 「ああ、草が花の養分を取らないために____っ、アミィール様!」



 普通に言葉を返そうとして、我に返って立ち上がった。アミィール様がいつの間にか横に居たのだ。やばい、敬語を忘れて「ね、私も手伝っていい?」…………え。



 アミィール様は俺の返事を聞く前に髪を縛り始めた…………って。



 「ダメです!御手が汚れてしまいます!」


 「なら洗えばいいだけでしょう?それに、セオドア様は土だらけじゃないですか。それでもやっているのですし、わたくしがやってもおかしくはないでしょう?」



 そう言って草を抜き始めた。皇女が!こんな地味な作業をしてる!


 そんな不可解な光景にオロオロしていると、ある事に気づいた。アミィール様の抜いている草……………じゃなくて。



 「アミィール様…………それは花です…………」



 「え!?これ花なの!?」



 平然とコスモスを抜いて気づかないって……………花がついてるのに……………



 「ご、ごめんなさい!これ、もう一度植えたら復活するとかじゃない!?」


 「根っこから抜いていたら可能ですけど……………根っこを抜いてないので、無理があるかと」



 「うう、本当にごめんなさい……………」




 しゅん、と肩を窄めるアミィール様。
 それを見ていられなくて、言葉を紡ぐ。


 「大丈夫ですよ、一輪ですし。気になさらないでください。…………ですが、花を抜いてしまうということは、こういう作業に慣れていないのでは?」



 「…………お恥ずかしいことに、わたくしはあまり花を愛でることをしなかったので…………


 でも、セオドア様がやっていることを、わたくしもやってみたくて」



 「………………」



 そう言って目を伏せるアミィール様。こういう所にいちいち鼓動が一際大きく鳴るから困る。………でも、こう言われて悪い気はしないから。



 「では、一緒にやりましょう。私もお付き合いしますので」


 「…………!はい!御教授お願いします!」



 そう言うとぱあ、と花が咲くように笑う。花に詳しくなくても、花のような人だと思った。












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