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【26時間目】魔王様、敵はすぐそこに⁉︎のお時間です‼︎

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「……え?」

思わぬ答えに思わず水原さんと目を合わせる。
さっきからこの容姿端麗ようしたんれいな生徒会長様には驚かされてばかりだが今しがた、今日一…いや、今世紀一のサプライズ発言を受けたかもしれない。

魔法。
僕らの住む世界──"メイベル"ではその存在は極めて身近なものであるのはもはや周知の事実ではあるが、この世界ではそういった"眉唾まゆつばもの"の類は大抵、それらを信じる人間が病気であると嘲笑ちょうしょうされるか、あるいは妄言ウソだと言われて突っぱねられるのがオチだが───。


(信じるよ。魔法は───)


まだ耳に音の残滓ざんしが残るその言葉を再び咀嚼そしゃくしてみる。

第一に、この世界には魔法は原則存在しない。
いやもしかしたら存在しているのかもしれないが例えあったとしてもそれは世間一般的に知られていない──先ほど言った通りある種"グレーな禁忌タブー"であるのは確かだ。

第二に、可能性の話をすると生徒会長の言う"魔法"と僕の言う"魔法"に齟齬そごが生じている可能性。


(魔法?魔法とは手から炎を出したり、水を一瞬で凍らしたりする──その魔法かい?)


と先程おっしゃった訳であるが──そもそもこの世界では魔法という"現象"は信じられていないが、魔法という"言葉"は信じられている。

つまりは"比喩表現"による魔法のことだ。
よくパソコンやスマートフォンを現代の魔法の杖だと例えたことがないだろうか。
よく自分たちの常識にない景色や現象に「まるで魔法だ!」と嬉々した記憶はないだろうか。

そう。
そういった場合の"魔法"とこの生徒会長は僕があまりにも突飛とっぴな発言をするもんだから瞬間的にこんがらがって勘違いしているのではないか。

だがこの仮説は正直一番確実性・・・が低いのは確かだ。
何故なら生徒会長と水原さんと僕、この3人の会話の記録を辿たどっていくと───この才色兼備さいしょくけんびな生徒会長が"そんな"理解力であるはずはないからだ。

そうなると必然的に仮説はある一つのファクターににしぼられてくる。

これは僕が一番推したくない仮説だ。
え?勿体ぶってないで早く言え?しょうがないな……。

つまり、とどのつまりは───"気をつかっている"という仮説だ。

見ての通り僕はさっきの会話は水原さんの言葉を繰り返し放つ"水原さんbot"と化していた訳であるが───さすがに人間(まあ厳密げんみつには人間じゃないけど)としての矜持きょうじが失われるの避けるために"慌ててしまった"発言をした僕に対し「あ、この状況をどうにかして打破しようとして苦し紛れの発言をしちゃったんだかわいそう。じゃあ気を遣ってその話に乗ってあげよう」となったのではないか。

まあどちらにせよ僕は人として大事なものをいっぺんに失った気もするが………。


「魔法……魔法って会長。あの、本当に手から火が出るとか……そういった魔法、信じているんですか?」


水原さんがまるで苦虫を噛み潰したような表情で聞く。
まあ事実、水原さんはずいぶん前(*【10時間目】魔王様、説得のお時間です‼︎参照)にリアルな魔法を目撃した訳で───なかなかに今の発言は心中察するところだ。


「ん?あぁ。もちろん、その魔法だ」


もはや疑いようもない確かな発言いま一度僕と水原さんは目を合わす。
これはもしかすると───僕が危惧していたあの考察が案外空論ではなかったのかもしれない。
実際問題、この私立黒瀬川学園に能力持ちの少女が全員そろうコト自体うたがってかかるべきなのだから。

ここからは慎重に言葉を選ばなければならない。
もしかすると──否、もしもの話よりも"実は"の話の可能性が高いとなってくると、この目の前のやたら完璧超人生徒会長が実は魔力強奪ごうだつの犯人なのかもしれないのだから。


「え、え~~と、なんで、魔法が存在すると……そう断言できるんですか?」


ひとまず聞くべき事は生徒会長が"何故魔法の存在を認識し、かつその存在を信じるに値する自信があるのか"だ。
その"答え"や"答え方"によっては今ここで、僕が、どうにかする・・・・・・のも視野に入れなければならない。


「ん?そんな事聞きたいのか?そうだな──私が魔法という存在を信じるのは──」


答え方はいたって自然。
特に言葉をつくろった様子もない。
ひとまず"嘘"はついてはなさそうだ。

ふと水原さんに目をやると「私は一体どうすればいいのよ」と言いたげないぶかしげな顔をしていた。

それもそうだ。
彼女たちにとっては僕らの問題など言うならば突然降って沸いた災難なのである。
僕だってある日突然「あなたに特別な力があります。でもその力は本来は別の人のもので実は今目の前に対峙たいじしている人間はその力を奪った泥棒さんなのです」なんて言われたら鼻で笑うか頬をつまむかの二択だろう。

だがこうして今現在、その特別な力がなんとやらを見せられ、かつその力を取り戻すことに協力した──してしまったコトはるがない事実となってしまったのだ。

本当に今更ながら彼女たちには丁寧に謝って改めて厚かましいとは思うが協力をお願いしたいところだ。


「実は私には幼馴染の姉妹がいてな。その姉から30歳を超えた異性の経験がない男性は魔法使いになれると教えてくれたのだが───」


ん?30歳の異性経験のない男性?魔法使い?
それって………。

あれ、待てよ。仲のいい姉妹・・・・・・
生徒会……姉妹………。


あ。


僕が合点がいった瞬間水原さんも分かったのか一気に安堵感あんどかんが体の奥底からまるで突沸とっぷつする温泉のように沸いて出てきた。


つまり──つまりだ。
僕らは勘違いなどはしてなかった。いや、言うならば勘違いしていたのは彼女──生徒会長の方だ。

彼女が言う幼馴染の姉妹、それは恐らくさっき出逢った二葉亭姉妹で──その姉とは───あの変態さんだろう。

それでその変態さんがいう30歳の異性経験のない男性が魔法使いになれると言うのは─────


「いやそれ童○やないかーーーーーーーい!!!!!」


☆まるでポーカーゲームの心理戦、しかし真実はあまりにも単純!!─────


───────────────────────

【登場人物紹介】

●躑躅森 逢魔

魔王の息子で主人公。
今回はすんごい心理描写がカ◯ジみたいになっていたことにちょっと鼻が高い(カ◯ジだけに)気分を覚えた。
まあ無駄だったけど。


●水原 さくら子

2人目の能力持ちツンデレ貧相クラス委員少女。
急に学校の外で掃除させられるわ、会長という目上の人間の相手させられるわ、挙げ句の果てにはその会長が実は悪い人かもしれないと言われたり、苦労を挙げたら枚挙に暇が無い人。
街中で会ったら「おつかれさま」と一言かけてあげてほしい。


●黒瀬川 咲葉

私立黒瀬川学園生徒会会長。
すでに能力持ちだと明かされているために今回はあらぬ疑いをかけられたがまあ無理もない気がする。
ただ真相はちょっと名門進学校の高校生としてどうなのか疑念が残る。

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