上 下
1 / 70
目が覚めたら異世界

戦国時代から異世界へ

しおりを挟む
ここは日本の戦国時代。

そして有能ではあるが無能な上司の指示に仕方無く従い奮戦して重傷を負った男がいた。

男は部下に連れられ戦場から少し離れた場所にある山の洞窟へと行った。

「宗之様、戦はあなたの武勇のお陰で大勝利です。」

部下の声が震えている。しかし、男は何も言えなかった。

思っていた以上に傷が深すぎて出血し過ぎていたのだ。

薄れゆく記憶の中、男は後悔をしていた。

(無能な上司のせいで無駄に犠牲を出しすぎた・・・。それに、俺では戦国の世に名を轟かす事が出来なかった。・・・無念だ。せっかく父を越える武将になろうと思っていたのに・・・)

「宗之様?宗之様っ・・・!大丈夫ですか?」

(ああ、部下の声が聞こえない・・・そして記憶が遠のく。・・・そうか、これが死か。なるほど、案外怖くないな・・・。もし、生まれ変われるのなら・・・次も戦乱の世で・・・天下を狙い・・・たい)





次に男が目を覚ますと、そこは見知らぬ土地であった。

(なんだ?ここは天国か・・・?ククっ・・・俺は地獄行きだと思っていたのだがなっ・・・)

しかし、男が周りを見渡すと天国とは思えなかった。

(ここは山か・・・。周りには川があるな。ちょっと遠くを見てみると村っぽいのも見えるな。思っていた天国とは違うな・・・。かと言って地獄とも思えない。)

少し座って落ち着くと男は改めて自分の装備を見る。

兜に刀、槍に鎧と武具は完璧だ。そして、全て使いきったはずの食料と水がなぜかある。

「おかしいな・・・。槍と鎧まで綺麗になっている。槍は折れていたし鎧は血まみれだったはずなのだが・・・。」

「その疑問に答えるぜ相棒っ!」

いきなり陽気な声が聞こえてきた。

「誰だっ!」

男はビックリして刀を手にして身構える。

「ここだ、今お前が手にしている刀だ」

「ああっ・・・?」

男はよく見てみると確かに刀から声が聞こえてきた。

「なんだこれは?俺の愛刀の月光が喋ってやがる。気色わりぃし折ってやろうか」

「待て待て待て!簡単に愛刀を折ろうとしないでくれ!そもそも、俺はこの世界に転生されるときに女神から話せるようにしてもらったんだ。」

「ふーん?」

男は平静を装っているが、いきなり転生だの女神だの言われて全く理解できてなかった。

「おい、とりあえず俺は生き返ったという事で良いのか?」

「ああ、女神によって生き返って別世界で夢を追いかけろってさ」


「その女神ってのはなんだ?俺をこの世界に転生させた本人なら俺の目の前に出てこいってのっ・・・!」

宗之の言うとおり、転生させた張本人なら宗之の前に現れるべきだ。

そして、理由などを話すのが筋というものだ。

「まぁそう言うなよ相棒!凄い美人だったから許そうぜ!」

「美人とかそういう問題じゃねぇだろうが」

そして、刀の月光が話し掛けることに違和感しか感じない宗之は少し悩む。

「俺は一人が好きなんだが、これから毎日お前と行動しなきゃなんねぇのか・・・」

「これから?今までだって一緒だったじゃねぇかよ相棒!」

「あー、ハイハイ」

刀が喋ることや女神によって転生された事で少し混乱していたが、次第に宗之は落ち着きを取り戻した。

そして、宗之は周りを見渡す。

パッと見た感じは建物が西洋風に見えるが遠くにある建物を見ると宗之がいた世界みたいな感じの和風・・・日本の建物みたいなのも見える。


「こいつは・・・まるで南蛮の文化と日本の文化が融合している感じに見えるな」

「ここからじゃよく見えねえから町まで行ってみようぜ相棒!」

・・・とその時、遠くから声が聞こえた。

「だ、誰か助けてぇ!」

女の人の声、それと複数の追っ手の足音が聞こえる。

「相棒、どうする?声からすると若い女の声だ。俺は助けに行きたいぜ」

「女とか関係ねぇだろ。困っている者は助けるさ」

宗之は愛刀の月光を手にして女性を助けに行く。
しおりを挟む

処理中です...