ヒカゲモノ

ZERO

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生死

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俺は鍵谷天下19歳。

両親を10歳の時に亡くし、剣術家の祖父のもとに身を寄せていた。

俺は祖父の影響で剣術の練習をし、中学で剣道部に入った。

そして中学剣道での実績でスポーツ推薦で県内屈指のスポーツ高校に入学した。


だがその頃から外国で戦争が始まり、その影響で石油が日本に輸入できず、大不況に見舞われ、税金が異常なほど上がった。

そして高校2年の春に祖父が亡くなり、身内が妹しかいない俺は仕方無く高校を中退。

その後、生活の為に働いたが、政府が過酷な労働を当たり前とし、企業が滅茶苦茶な雇用を強いた為、日本の労働基準が滅茶苦茶になった。


俺は過酷な労働で疲れ果て道端で倒れたところを湯浅さんに助けられたんだ。


その後、湯浅さんに住むところを提供してもらい、しばらく経ったころに言われた。

「この異常な国を変えてみないか」と。

そして湯浅さんに言われた任務とは「街にいる悪党の始末」と「要人の始末」である。

この仕事を始めて2年、大分慣れてきた。

この仕事は月に三回程度の任務で主に夜に活動する為、昼間は基本ニートをしている…。

妹のヒナは湯浅さんの知り合いが経営している喫茶店でバイトしているが…
「バイトの何が楽しいんだ?報酬たくさんもらっているから働く必要無くね?」と思う。







俺はいつも昼前まで寝る。が今日は朝10時に起きてしまった。

正解に言えば起こされてしまったのだ。



「兄貴起きてー!」

声が大きいし、高い!
耳が悪くなってしまうから黙れ!と言いたいが堪えて冷静に言った。

「…何?まだ10時なんだけど」

「見て!新しいユニフォーム!今度の任務で着ようと思うんだ」

妹を見てみるとコスプレをしていた…くのいちの。

しかも露出度高いしめっちゃエロい。

「また、お前は露出度高い服を…」

「だってこれぐらいしないと動きにくいもん。任務の時走りにくいもん。」

「それよりさ、とりあえずこの服で動きやすいか試したいから一緒に湯浅さんの裏山で鍛練しない?」

妹は鍛練好きだ…俺は寝たい。

だが可愛い妹に頼まれると拒むことは出来ない。
俺はダルそうに言った。
「しょうがないな。ところで何時までするんだ?」

「2時からバイトあるから1時までかな。」

バイトもあるのに鍛練をする妹に俺は言った。

「おい、バイトあるのに鍛練するのかよ!真面目だな!俺ならバイトサボってるよ!」

そして俺達は鍛練する場所に行った。

俺達が普段訓練する場所は湯浅さんの豪邸の裏にある山だ。

自然豊かで狸とか野ウサギとか熊とか野犬、野良猫、猪がいる。


「ふぅー。やっぱここって良いねぇ!」

「都で唯一の自然だもんな。しかも基本的に関係者以外立ち入り禁止だもんな。」

「てかさー。ここって何だか優しい空気がするよね!動物たちも殺生しないし。」

「ここの動物は一応湯浅さんのペットだからな。餌をちゃんと食べているから『熊がウサギを食う』なんてまず無い。」


おいおい何まったり話をしているんだ。鍛練しに来たんじゃないのか…。

だが俺は面倒なので言わなかった。

こうやって平和な時を動物たちと過ごすのも悪くない。



その時、小さなウサギが俺のところに来た。


「なんだこの小さなウサギは?こんな小さいウサギいたっけ?」



「多分この前生まれたウサギの一匹だと思うよ。」


ヒナがウサギを撫でながら言う。

「ねえねえ!このウサギあたし達の家で飼わない?」
「なんでそうなるんだっ?しかもここの動物は湯浅さんのだぞー」

俺は笑いながら言った。

「あたし達、普段任務で殺っているじゃん。だからこういう小さい動物を飼って命の大切さ尊さを改めて知るべきだと思うんだ。」


確かに…このまま任務をしていたら狂ってしまうかもしれない…。

ヒナの言うことはもっともだ。

「大丈夫。あたしが湯浅さんに話を付けてくるよ」




俺はヒナと話すと元気が出てくる。

俺が高校中退して剣道が出来なくなってしばらく荒れて塞ぎこんでいたとき、アイツが話しかけてくれてとても助かった。

ヒナも高校進学出来なくてショックなはずなのに…

ヒナは俺と違い頭が良く、中学3年間5位以内だった。本来なら県内1の進学校に通い明るい高校生活を送っていたのに…。

しかも手先も器用で、あのコスプレも自分で作っているし、料理も出来る。

しかしヒナみたいな存在が裏家業ではとても貴重。

人を殺り、気が狂いそうになるこの世界だがアイツの存在のお陰で明るくなる。

同業者からもそのような話を聞く…。

テンカがそう思っていたときにヒナは帰ってきた。


「兄貴ー。家で飼って良いだって!でもウサギは一匹だけ飼うと寂しがるからもう一匹小さいウサギ持って帰って良いだって!」

「そうか。じゃあさっきからこっちばかり見てくるあのウサギはどうだ?」


「そうだね!なんかこっちに気があるみたいだよね。おいでー」

ヒナがそう言ったら、ウサギはヒナのところに来た。

「うん、よしよし。じゃあこの子を家で飼おう。」

無邪気に言うヒナにテンカは言った。

「それは良いけどよ…餌とか買わないとダメだよな?」


その時、ヒナが携帯で時間を見ていう。

「あ、もうこんな時間!あたしバイトがあるから、兄貴後は任せたよ!」


おいおい、後は全部俺がやるのかよ!

面倒だけどウサギの小屋や餌が必要だからな。さっさと買って家で寝るか。





ウサギの餌や小屋を買って帰宅


俺はヘトヘトになり、ベッドに転んだ。

ペットの買い物を甘く見ていた…。

店員に餌は何が良いのか聞いたらウサギが食べて良いもの悪いものの説明。

他にも小屋の作り方の説明、育てかたの説明…。色々あってとにかく疲れた。


小屋作るの面倒だし、猫みたいに放し飼いで良くね?

ほら、檻にいれておくとか可哀想だし。

とにかく後はヒナに任せよう。




そして気が付いたら午後7時。

いつの間にか寝てしまった様だ。


もうヒナが家に帰って飯を作っている頃だ。


俺は部屋から台所に向かった。


「ヒナー。腹へったよう。今日の飯はなんだー?」

俺は力無き声でいった。

「今日はコンビニ弁当だよ。兄貴がペットの小屋を作らないからあたしが作ってんの」

小屋を作りながら軽く言うヒナ。


「しかしよく小屋なんか作るな。面倒だし放し飼いにしようぜ。」

「ダメ。放し飼いにしていたらどこに行くか分からないでしょ。」

相変わらず真面目だ。

「あっ!そういえば名前まだ決めてないよね!どんな名前にする?」


「それならお兄ちゃんが決めている。耳が大きい方がゴンで小さい方がポンだ。」


「なんかテキトーだね。でも良いかも」
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