シカノスケ

ZERO

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総力戦

このままじゃ終われねぇ!!

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そして国司に合わせて小次郎も腰の刀を抜く。だが、先ほど無理に投げ槍をした影響もあって右肩が痛い。


完全に右肩を痛めてしまった。

それなら左手に刀を持てば良いだけだが、事はそう簡単ではない。


どういう痛め方をしたのか分からないが歩く行動をするだけで肩が痛い。


だが、国司はそれに全く気付いていない。これは不幸中の幸いか。


国司が慎重になっているということは、奴が攻撃に出るまでには肩の痛みが治まるはずっ・・・多分。


それに国司も足に槍を喰らっているから軽々に行動に出にくい。


見るからに俺の怪我より国司の方が深刻な傷だ。

俺は身体に受けた傷は比較的軽傷で血もあまり出ていない。


それに比べると国司は太ももに槍を喰らい、立っているのが不思議なほどの傷だ。

勿論相当な量の血を流している。





しかし、小次郎が痛めた肩に気をとられている間に国司は太ももから出る血を止血しようとする。


「先ほどお前はプライドで凝り固まったジジイと申したな。ワシはそのプライドを唯一の物として生きてきた。己の考え・・・プライドがあるからワシは今まで生きてこれた・・・。」


国司は太ももに布を巻いて止血を簡単に終えた。


「だから・・・ワシは童の考えなど理解するつもりはない・・・!いや、その勝負の鬼の様な考えなど、まるで理解できない!」


そう言い放つと国司は刀を持ち、小次郎に斬りかかろうとする。




国司は物凄い殺気を発して小次郎に斬りかかろうとする。


その殺気・・・というか・・・いうなら気迫と言うべきであろうか。

自分を殺しに来る人間の迫力に気圧されてしまい小次郎は直立不動・・・動けなくなる。



当然と言えば当然である。

普段の日常で自分を殺しに来る者と相対するであろうか。いや・・・普通の人には無いだろう。


現実の世界では紛争地帯にでも行かない限りまず無い。






なるほど、これが現実か・・・。

いくら武芸が出来ても命の取り合いの場を経験していないと恐怖で動けなくなるのか。


いや、俺は武芸が得意な訳じゃないけど・・・土壇場での精神力は強いと思っていた。





ここが俺の死に場かっ・・・!



小次郎が死を悟り、国司の刃が自分の身に届く、その直前である。




1度は生を諦めかけた小次郎だったが、自分を殺そうとする国司の刃見ていると無性に悔しく感じた。





1度は互角の勝負に持っていった筈なのに恐怖で動けなくて負ける・・・?

そんなのあって良いわけないだろ・・・!


俺は生きるっ!生きるために勝つっ・・・!






新たに生を決意を瞬間に小次郎は大声で叫ぶ。



「ここのままじゃ・・・終われねぇぇ・・・!」




さっきまで大人しく死を受けいれていた小次郎が急に大声を発した為、驚いた国司は手元が狂い急所とは違う場所を斬りつけた。



「痛い・・・だけど死に行く者達の痛みと比べりゃ全然マシだな・・・!」


国司の刃は小次郎が痛めた右肩に当たって滅茶苦茶痛い。


だが、しばらくすると痛いという感覚がなくなってきた。



痛覚が麻痺してきたのだ。

小次郎はこれを察し、痛覚が麻痺した分、動きやすくなったと感じた。



「俺ごときの奇声にビビる様じゃあダセェぜ・・・ジジイ・・・!」


落ち着きを取り戻し、不敵に笑う小次郎。




そうだ、これは戦場だ。敵の恐怖に怯えちゃあ駄目だ。

恐怖に屈するということは即ち生を諦めると言うこと・・・!それだけは絶対にしては駄目だ・・・!


俺より先に死んじまった兵士達に顔向けができない・・・!


生きている者がする事は全力で生きること・・・!



いま、この戦場でいうなら国司を殺して戦局を変えること・・・!


そして生きて皆と再会することだ・・・!






「じゃあ反撃と行きますか・・・!」
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