シカノスケ

ZERO

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総力戦

ケン坊の勇姿

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小次郎はケン坊と共に最前線に出る。


迫り来るは『覇』の国司軍。

国司軍は鬼の形相をして登ってくる。





今からアレに斬り込むのか・・・アレと戦うのか。


槍で突っつかれるのは怖ぇ・・・!死ぬのは怖ぇ・・・!でもそれは敵も同じ・・・味方も同じ・・・みんな同じ・・・!


ただ、相手は死ぬ事を考えおらず・・・ただ前にいる敵を斬るだけである。


自分は死んでも良い等と考えているかも知れない。



でも死ぬ気で戦う人は戦果をあげたところで最後には死ぬ。



生きるために畏れが必要で、戦うために勇気が必要だ。



この鬼の様な敵と闘い、生きて帰るには畏れ・・・勇気・・・それが必要。

だが、それ異常に必要なのが相手も恐怖する行動をせねばならない。



言うなれば『凶行』に出るという事だ。





小次郎は頭の中で色々考えた。だが、小次郎が色々考えているのを隣にいたケン坊にはすぐにバレた。



「兄貴、オイラが先駆けとして敵軍に斬り込んで突破口を開くっスから兄貴は崩れた敵の陣形から一気に国司の元に行くっス!」



ケン坊は小次郎の為に先駆けをしてくれるみたいだ。


ケン坊も敵軍に斬り込むのが怖いだろうに・・・。


だが、これは国司を討つチャンスである。


「分かった・・・。ケン坊、お互いに生きてまた会おう!」

小次郎はそう言いケン坊の顔を見る。


ケン坊の目はこの土壇場でもしっかりしている。


恐怖に取り乱す事無い歴戦の勇の目であった。










程なくしてケン坊は国司軍に向かって走り出した。


他の兵士もケン坊の勇姿に心を動かされたのか、槍を持ち軽快に国司軍に向かって突撃した。



「オルァァ!国司の雑魚共かかって来いっス!」



ケン坊は叫びながら敵を槍で突いて敵陣の陣形を大きく乱し、敵陣の奥に進む


アレがケン坊の先駆けとしての力なのだろうか・・・。


先駆けが元気良く敵陣に攻撃しに行ってくれただけで他の兵もそれに釣られて恐れずに戦える。



後は・・・俺だ。


ケン坊が必死に敵陣を乱してくれている。


このどさくさに紛れて敵将国司元相を討つ。






この乱戦の中に入るのは怖ぇ・・・!しかし恐れていては始まらない・・・!






今、小次郎の前には1つの線みたいなのがある。

それは死への道と生への道の境目の線。


この最後の一線を越えたら死の可能性がある。


そして、死を考えると考える程この一線を越えにくくなる。



でもそれじゃあ駄目なのだ。


ここで一線を越えなければ先に敵陣に突撃したケン坊の思いに背く事になる。


それだけは許されない。自分だけ安全なところで高みの見物って訳にはいかない。




そして10秒ほど経つと小次郎は顔の表情が良くなった。


「もう腹を括った・・・!もう俺は恐れはしない・・・!敵を・・・!死を・・・!だから俺は越える・・・!最後の一線は・・・狂気で越える・・・!」



そう言うと小次郎は槍を持ち、敵陣に突撃しにいく。



幸いケン坊が敵の陣形を大きく乱してくれたお陰で、敵の少ない守りの薄いところから小次郎は敵陣に侵入した。



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