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総力戦
覇の国司
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中山口の尼子軍は朝早くからの国司元相の攻撃で混乱状態であった。
毛利軍が朝早くから攻めて来るのは分かっていた。
その為の心構えは出来ていた筈であった。
しかし、率いる武将が国司元相と分かると中山口にいる尼子軍は怖じ気づく。
伝説級の武将『覇』の国司の名声は中国地方に轟いており、その苛烈な戦い方と武勇は尼子軍にも知れ渡っている。
それに付け加えて国司軍の異常なまでの士気が中山口にいる尼子の心に動揺に陥れた。
国司元相が軍の先頭を騎馬で歩くだけで大地が揺れるほど毛利軍は士気は高揚し、それを見た尼子の兵はたまらず逃げ腰になる。
言うならば『敵に屈した』と言う事である。
「一体なにが起きているんだ・・・?」
最前線にいた小次郎は今一つ何が起きているのか分かっていない。
と言うのも小次郎は先程まで爆睡しており、国司軍の高揚した兵の歓声で、ビックリして目が覚めたのである。
小次郎の周りはドタバタとしており、源五郎が隊をまとめており、優は陣形を整えて国司軍との戦いに備えていた。
そこへケン坊がやって来る。
部隊長でも無いケン坊は敵が来たら戦うだけのただの一兵卒の為、敵が来る迄は暇なのだろう。
「いやぁ、まさか国司が出てくるなんて思わなかったッスねぇ。」
ケン坊はいつもと同じ感じに言うが手がガタガタと震えていた。
「国司って奴はそんなにヤバイのか?初めて聞いた名前だぞ?」
ケン坊は呆れた顔で小次郎を見る。
そして「ハァ」と溜め息をつく。
「オイラ達の大将なんだからそれくらい知っといて欲しいスよ・・・。国司元相は毛利軍最強と言われている武将っスよ。毛利が中国地方の覇を唱えるに最も貢献した武将の為『覇』の国司と呼ばれる様になったッス。」
ケン坊から『覇』の国司について聞いて小次郎は冷静になる。
毛利最強の武将が目前に迫っているのに動揺せず、むしろ神経が研ぎ澄まされていく。
小次郎は国司軍の凄さを聞いて震えるどころか逆に心が燃えてきた。
「ケン坊!国司は何歳くらいのオッさんなんだ?」
珍しく小次郎は真剣な眼差しでケン坊を見る。
「国司は70過ぎた爺さんッスよ!もしかして兄貴・・・国司を討つ気っスか?」
小次郎は静かに頷く。
「この事はみんなに内緒にな。多分みんな俺が前へ出るのを良しとしないだろう。」
ケン坊は小次郎の気持ちが何となく分かってしまった。
部隊長ながら配下のオッさんと二十歳も来ていない女の子に助けてもらわないと何も出来ない不甲斐なさに同情する。
既に小次郎は大将として機能していないと雑兵から笑われている。
飾りの大将・・・鼓舞や先駆けは出来ても大将としての器は皆無と思われてしまったら大将は『大将』で無くなる。
しかし、ここで敵将を討てば雑兵からの信頼を勝ち取れる。
そして大将らしさが出る。
もちろん優や源五郎、宗信は反対するだろう。
部隊長自ら敵将を討ち取るのはリスクが高いし、何より今の小次郎では勝てないだろう。
しかし、この中山口を死守するには敵将を国司を討ち取らねばならない。
小次郎には感じる。このまま国司軍と乱戦していたら負ける・・・毛利に中山口が抜かれると言うことはつまり尼子の敗北だ。
それだけは絶対に阻止せねばならん。
小次郎は適当な鎧兜を装着し優達にバレないように一兵卒に紛れて最前線に出る。
毛利軍が朝早くから攻めて来るのは分かっていた。
その為の心構えは出来ていた筈であった。
しかし、率いる武将が国司元相と分かると中山口にいる尼子軍は怖じ気づく。
伝説級の武将『覇』の国司の名声は中国地方に轟いており、その苛烈な戦い方と武勇は尼子軍にも知れ渡っている。
それに付け加えて国司軍の異常なまでの士気が中山口にいる尼子の心に動揺に陥れた。
国司元相が軍の先頭を騎馬で歩くだけで大地が揺れるほど毛利軍は士気は高揚し、それを見た尼子の兵はたまらず逃げ腰になる。
言うならば『敵に屈した』と言う事である。
「一体なにが起きているんだ・・・?」
最前線にいた小次郎は今一つ何が起きているのか分かっていない。
と言うのも小次郎は先程まで爆睡しており、国司軍の高揚した兵の歓声で、ビックリして目が覚めたのである。
小次郎の周りはドタバタとしており、源五郎が隊をまとめており、優は陣形を整えて国司軍との戦いに備えていた。
そこへケン坊がやって来る。
部隊長でも無いケン坊は敵が来たら戦うだけのただの一兵卒の為、敵が来る迄は暇なのだろう。
「いやぁ、まさか国司が出てくるなんて思わなかったッスねぇ。」
ケン坊はいつもと同じ感じに言うが手がガタガタと震えていた。
「国司って奴はそんなにヤバイのか?初めて聞いた名前だぞ?」
ケン坊は呆れた顔で小次郎を見る。
そして「ハァ」と溜め息をつく。
「オイラ達の大将なんだからそれくらい知っといて欲しいスよ・・・。国司元相は毛利軍最強と言われている武将っスよ。毛利が中国地方の覇を唱えるに最も貢献した武将の為『覇』の国司と呼ばれる様になったッス。」
ケン坊から『覇』の国司について聞いて小次郎は冷静になる。
毛利最強の武将が目前に迫っているのに動揺せず、むしろ神経が研ぎ澄まされていく。
小次郎は国司軍の凄さを聞いて震えるどころか逆に心が燃えてきた。
「ケン坊!国司は何歳くらいのオッさんなんだ?」
珍しく小次郎は真剣な眼差しでケン坊を見る。
「国司は70過ぎた爺さんッスよ!もしかして兄貴・・・国司を討つ気っスか?」
小次郎は静かに頷く。
「この事はみんなに内緒にな。多分みんな俺が前へ出るのを良しとしないだろう。」
ケン坊は小次郎の気持ちが何となく分かってしまった。
部隊長ながら配下のオッさんと二十歳も来ていない女の子に助けてもらわないと何も出来ない不甲斐なさに同情する。
既に小次郎は大将として機能していないと雑兵から笑われている。
飾りの大将・・・鼓舞や先駆けは出来ても大将としての器は皆無と思われてしまったら大将は『大将』で無くなる。
しかし、ここで敵将を討てば雑兵からの信頼を勝ち取れる。
そして大将らしさが出る。
もちろん優や源五郎、宗信は反対するだろう。
部隊長自ら敵将を討ち取るのはリスクが高いし、何より今の小次郎では勝てないだろう。
しかし、この中山口を死守するには敵将を国司を討ち取らねばならない。
小次郎には感じる。このまま国司軍と乱戦していたら負ける・・・毛利に中山口が抜かれると言うことはつまり尼子の敗北だ。
それだけは絶対に阻止せねばならん。
小次郎は適当な鎧兜を装着し優達にバレないように一兵卒に紛れて最前線に出る。
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