117 / 131
凡戦
次の総攻撃
しおりを挟む
敵の動きに変化があったことが分かったのはその日の午前であった。
昨日みたいに攻めてこず、陽動の部隊がチラホラ見える。
小次郎の陣からは、その陽動の部隊が近くを通っている。
「お兄ちゃん、あの部隊攻めちゃダメだよ!アレはただの陽動だから。」
敵の部隊を見てイライラする小次郎に釘を刺す優。
そして、そんな相手の動きを見て源五郎は察した。
「戦い方が昨日とは明らかに違うな。これはしばらく凡戦をして、近い内に総力戦をするってことか。」
「そう見たいだね。しばらくこちらの兵を減らす策に出たんだね。」
源五郎と優の二人はとても有能だ。
源五郎は経験豊富で数々の戦いで功を上げてきた。
しかし、優はいきなり小次郎の部隊で軍師をつとめている。
まだ二十歳にならない女の子が軍師・・・そして内政でも力を発揮しており、医術の心得もある。優は文字通り、小次郎の片腕に等しい活躍をしている。
優は言うならば傑物の類いであろう。
どこで習ったわけでも無い戦略と戦術。
そしてその傑物の類いである優は既に何日後に総攻撃が来るか読めていた。
3日後・・・これはまず間違いないと。
そして敵の部隊は桂や福原なんかの弱兵ではないと分かっていた。
陽動隊に攻撃を一切仕掛けてこない秋上隊を見ると福原は「ほぉう?」と言った。
いくら策だと分かっていても攻撃を一切してこないのは珍しい。
奴らの中に総攻撃の気配を察した武将がいると感じた福原は早速伝令を送る。
「先の陽動隊を引き返させろ。これより桂隊と共に秋上宗信の前衛に攻撃だ。ただし、あくまでも弓による攻撃で乱戦は極力避けるように!」
言葉に力を入れて言った。
これは乱戦による被害を避けるためである。
被害を極力減らして3日後の総攻撃に備える為である。
これに対して桂軍も動き始めた。
例の細い道の前に行き、秋上隊の前衛に弓を射る為である。
この戦いはあくまでも総攻撃の為の凡戦であり、兵達はみんな本番は3日後だと思っている。
だが、凡戦になると思っていた戦いに中山口の守将秋上宗信が前線の小次郎の陣まで来ていた。
大将自ら最前線に赴くなど言語道断で、本来は大将は後ろで采配をするものである。
これにより、中山口の守将秋上宗信の本陣は最前線になり、後方にいるのは副将の横道秀綱だけである。
しかし横道秀綱も大将が最前線に行った為、本陣の守備の為に最前線に行く事となる。
宗信は小次郎の陣に赴く。
宗信は昨日の小次郎とのやり取りをして吹っ切れている様だ。
「ムネリン!どうして前線に来たの?しばらくは凡戦だよ。流れ弾に倒れたらダメだから後ろに行ってなきゃ!」
優はただひたすら宗信を後ろに下げておきたいらしい。
無理もない、ここで宗信に倒れられたら中山口の防衛線は崩壊する。
ここにいる部隊を統率できる将がいなくなるのだ。
副将の横道秀綱では宗信の隊は動かせないだろう
だが、小次郎の片腕の源五郎だけは宗信について悪くは言わない。
むしろ違う展開が見えているのかも知れない。
「優よ・・・。ここは秋上殿に従おう。ひょっとしたら戦況を優位に動かせるかも知れない。」
「源五郎がそういうなら良いけど・・・。でもみんなでムネリンを守るからね!死守だよ!みんなでムネリンの盾になるよ!」
秋上宗信が最前線に来たことにより、参謀の源五郎と軍師の優は戦い方の方針を決めた。
そして二人は陣を出て兵達に戦い方について、宗信の守り方について話すことにした。
そして陣地にいる宗信は小次郎と二人きりになった。
「もしかして、俺が昨日あんな事言ったから最前線に来たのか?」
宗信は小次郎の顔を見て「コク」と頷く。
「昨日の小次郎さんの言葉を聞いて私も前に出て、みんなと共に戦いたくなりました。この戦だけは最前線で戦います。だから力添えお願いします。」
宗信の瞳は真剣だ。
宗信は「みんな」と戦い、「みんな」と死線を共にしたいんだ。
勿論、相当の覚悟を持ってきたのだろう。
その覚悟を持った人間の意志を小次郎は変えることが出来ないと悟った。
「分かった。でも無茶だけはすんなよ!」
「はい!分かりましたです!」
宗信は笑顔で笑った。
この瞬間、小次郎はこの笑顔を守りたいと、宗信を守ってやりたいと感じた。
この女だけは守り抜く・・・!
いや・・・仲間や兵士・・・みんな守ってやりたい。
昨日みたいに攻めてこず、陽動の部隊がチラホラ見える。
小次郎の陣からは、その陽動の部隊が近くを通っている。
「お兄ちゃん、あの部隊攻めちゃダメだよ!アレはただの陽動だから。」
敵の部隊を見てイライラする小次郎に釘を刺す優。
そして、そんな相手の動きを見て源五郎は察した。
「戦い方が昨日とは明らかに違うな。これはしばらく凡戦をして、近い内に総力戦をするってことか。」
「そう見たいだね。しばらくこちらの兵を減らす策に出たんだね。」
源五郎と優の二人はとても有能だ。
源五郎は経験豊富で数々の戦いで功を上げてきた。
しかし、優はいきなり小次郎の部隊で軍師をつとめている。
まだ二十歳にならない女の子が軍師・・・そして内政でも力を発揮しており、医術の心得もある。優は文字通り、小次郎の片腕に等しい活躍をしている。
優は言うならば傑物の類いであろう。
どこで習ったわけでも無い戦略と戦術。
そしてその傑物の類いである優は既に何日後に総攻撃が来るか読めていた。
3日後・・・これはまず間違いないと。
そして敵の部隊は桂や福原なんかの弱兵ではないと分かっていた。
陽動隊に攻撃を一切仕掛けてこない秋上隊を見ると福原は「ほぉう?」と言った。
いくら策だと分かっていても攻撃を一切してこないのは珍しい。
奴らの中に総攻撃の気配を察した武将がいると感じた福原は早速伝令を送る。
「先の陽動隊を引き返させろ。これより桂隊と共に秋上宗信の前衛に攻撃だ。ただし、あくまでも弓による攻撃で乱戦は極力避けるように!」
言葉に力を入れて言った。
これは乱戦による被害を避けるためである。
被害を極力減らして3日後の総攻撃に備える為である。
これに対して桂軍も動き始めた。
例の細い道の前に行き、秋上隊の前衛に弓を射る為である。
この戦いはあくまでも総攻撃の為の凡戦であり、兵達はみんな本番は3日後だと思っている。
だが、凡戦になると思っていた戦いに中山口の守将秋上宗信が前線の小次郎の陣まで来ていた。
大将自ら最前線に赴くなど言語道断で、本来は大将は後ろで采配をするものである。
これにより、中山口の守将秋上宗信の本陣は最前線になり、後方にいるのは副将の横道秀綱だけである。
しかし横道秀綱も大将が最前線に行った為、本陣の守備の為に最前線に行く事となる。
宗信は小次郎の陣に赴く。
宗信は昨日の小次郎とのやり取りをして吹っ切れている様だ。
「ムネリン!どうして前線に来たの?しばらくは凡戦だよ。流れ弾に倒れたらダメだから後ろに行ってなきゃ!」
優はただひたすら宗信を後ろに下げておきたいらしい。
無理もない、ここで宗信に倒れられたら中山口の防衛線は崩壊する。
ここにいる部隊を統率できる将がいなくなるのだ。
副将の横道秀綱では宗信の隊は動かせないだろう
だが、小次郎の片腕の源五郎だけは宗信について悪くは言わない。
むしろ違う展開が見えているのかも知れない。
「優よ・・・。ここは秋上殿に従おう。ひょっとしたら戦況を優位に動かせるかも知れない。」
「源五郎がそういうなら良いけど・・・。でもみんなでムネリンを守るからね!死守だよ!みんなでムネリンの盾になるよ!」
秋上宗信が最前線に来たことにより、参謀の源五郎と軍師の優は戦い方の方針を決めた。
そして二人は陣を出て兵達に戦い方について、宗信の守り方について話すことにした。
そして陣地にいる宗信は小次郎と二人きりになった。
「もしかして、俺が昨日あんな事言ったから最前線に来たのか?」
宗信は小次郎の顔を見て「コク」と頷く。
「昨日の小次郎さんの言葉を聞いて私も前に出て、みんなと共に戦いたくなりました。この戦だけは最前線で戦います。だから力添えお願いします。」
宗信の瞳は真剣だ。
宗信は「みんな」と戦い、「みんな」と死線を共にしたいんだ。
勿論、相当の覚悟を持ってきたのだろう。
その覚悟を持った人間の意志を小次郎は変えることが出来ないと悟った。
「分かった。でも無茶だけはすんなよ!」
「はい!分かりましたです!」
宗信は笑顔で笑った。
この瞬間、小次郎はこの笑顔を守りたいと、宗信を守ってやりたいと感じた。
この女だけは守り抜く・・・!
いや・・・仲間や兵士・・・みんな守ってやりたい。
0
お気に入りに追加
34
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる