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水谷口の戦い
短期決戦
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陣形を立て直す為に一時的に後退した鹿之介・立原の軍はすぐさま陣形を整えた。
目の前にいる毛利軍を見ながら鹿之介は立原に先ほどからする、この重苦しい空気の存在に付いて話を聞いた。
「叔父上、さっきから感じる重苦しい空気・・・激しい殺気は何ですか?一体何があったのですか?」
立原は困った表情をする。
「それが・・・よく分かっていない。戦いは最初、我らの優位に動いていたのだが、先頭の部隊が深入りしたところを狙われて壊滅・・・とよくある展開なのだが、それから重苦しい空気・・・それと激しい殺気を感じる。壊滅した部隊の兵に聞くと『とんでもねぇ武将が現れた。』と言うだけだ。」
「『とんでもねぇ武将』とは、一人で戦況をひっくり返す程の武将ですか・・・?」
「恐らくな。そいつが先駆け大将として兵を率いているんだと思う。だが、毛利で武に絶対的な自信を持つ武将はもういないはずだがな。」
立原の言う「武に絶対的な自信を持つ武将」は毛利では吉川元春ぐらいである。
しかし、吉川元春は毛利一門で毛利に欠かせない武将である。
この時点で吉川元春自らの部隊の先頭に立って敵陣に切り込む事はまず無いだろう。
・・・となると毛利家にはもう「武」の力がある武将がいないはずなのだ。
だがこの時、立原と鹿之介はもの凄く嫌な予感がしていた。
もし、この嫌な予感が的中するとなると鹿之介は軍の指揮に集中出来なくなり、乱戦になることが目に見えているのである。
この兵力の少ない状態で乱戦だけは絶対避けたいところである。
その頃、毛利軍の吉川元春・益田藤兼の陣では品川大膳が吉川に対し物申していた。
「納得がいかんっ・・・!なぜ今戦ってはならんのだっ・・・!我は山中鹿之介と戦えたらそれで良いのだっ・・・!」
禍々しい雰囲気を発して吉川元春に怒りをぶつける。
「安心しろ。鹿之介とはこの戦いの最終決戦の日に必ず戦わせてやるから。」
吉川のその言葉に苛立つ品川大膳は吉川を睨み付ける。
「我はこの日の為だけに毛利に付き従ってきたっ・・・!あまり我を待たせるとその首が飛ぶと知れっ・・・!」
品川大膳の目は凄まじい殺気を放っていた。
それはとても味方に向ける目では無い。敵に向ける目であった。
だが、その目を見た吉川も睨み返す。
「お前もワシの期待を裏切るなよ?あの立花道雪と一騎討ちで互角に渡り合ったその実力で2度も女の鹿之介に負けたら許さんぞッ・・・!」
山中鹿之介が再興軍を起こしたばかりの時、毛利軍は九州出兵をしており、その時品川大膳は戦国最強と言われている立花道雪と一騎討ちで互角に渡り合っていた。
天武を極めし品川大膳と互角に渡り合う立花道雪、その立花道雪と戦って品川大膳は壁を越えた。
そして、今では一度負けた事のある山中鹿之介より強いという自負があった。
「我が女に2度も負けると思っているのか・・・?我は天武を極めし者・・・同じ失敗など2度としない・・・!その為に武を磨いてきた・・・!」
そう言い、品川大膳は去っていった。
実は品川大膳を今すぐに戦わせないには理由がある。
それは吉川元春はこの戦いの決着の日を既に決めてある事、そしてその為には今、品川大膳に動かれたらこの戦の流れ・・・それを失ってしまいそうなのである。
その為、吉川は戦いの決着の日に品川大膳を戦いに出すことにしたのである、
言うなら品川大膳は戦いの決め手、毛利軍を勝利に導く切り札なのである。
さて、しばらく経つと再び毛利軍は攻撃を始めた。
それを鹿之介は自ら先頭に立って返り討ちにする。
しかし、毛利の攻撃は先ほどの攻撃と比べると勢いがなかった。
勢いと言うよりも進軍するという意志が毛利軍には無かった。
それは戦場にいる者には分かっていた。
毛利軍には先ほどの熱気・・・と言うか戦意がまるで無い。
更に言うと死に対する覚悟無いと思った。
「まだ命を賭ける場では無い」というのが戦っていて分かる。
そうと分かれば鹿之介は一旦後ろに下がる。
「なぜ下がるのですか?奴らは本気で攻撃して来ていません!今なら総攻撃で倒せるのでは?」
殆どの部下は不思議がっていた。
「事は簡単じゃない。今の毛利は主力を温存して我らの戦力を削ろうとしている。つまり前衛の敵を蹴散らしても後衛にいる毛利最強の吉川本隊の主力がいる。しかも奴らは拠点を築いているから攻めるのは容易ではない。」
鹿之介は吉川軍の強さを嫌というほど知っている。
だから無理には攻めずに守りに徹する。
この戦は守戦である。つまり攻めなくても守り抜けば勝ちなのである。
如何に攻め勝つか・・・では無く、如何に返り討ちにするか・・・なのである。
幸い自国で戦っている尼子軍は兵糧の補給は完璧なので何年戦っていても大丈夫だが、毛利はそういう訳にはいかない。
毛利は敵国に攻め行った為に補給を自国から送らねばならない。
その補給が敵国に送るのがとても難しく、モタモタしていると補給線を尼子に狙われて全滅の恐れがある。
つまり毛利はこの戦いを短期決戦としているのだ。
目の前にいる毛利軍を見ながら鹿之介は立原に先ほどからする、この重苦しい空気の存在に付いて話を聞いた。
「叔父上、さっきから感じる重苦しい空気・・・激しい殺気は何ですか?一体何があったのですか?」
立原は困った表情をする。
「それが・・・よく分かっていない。戦いは最初、我らの優位に動いていたのだが、先頭の部隊が深入りしたところを狙われて壊滅・・・とよくある展開なのだが、それから重苦しい空気・・・それと激しい殺気を感じる。壊滅した部隊の兵に聞くと『とんでもねぇ武将が現れた。』と言うだけだ。」
「『とんでもねぇ武将』とは、一人で戦況をひっくり返す程の武将ですか・・・?」
「恐らくな。そいつが先駆け大将として兵を率いているんだと思う。だが、毛利で武に絶対的な自信を持つ武将はもういないはずだがな。」
立原の言う「武に絶対的な自信を持つ武将」は毛利では吉川元春ぐらいである。
しかし、吉川元春は毛利一門で毛利に欠かせない武将である。
この時点で吉川元春自らの部隊の先頭に立って敵陣に切り込む事はまず無いだろう。
・・・となると毛利家にはもう「武」の力がある武将がいないはずなのだ。
だがこの時、立原と鹿之介はもの凄く嫌な予感がしていた。
もし、この嫌な予感が的中するとなると鹿之介は軍の指揮に集中出来なくなり、乱戦になることが目に見えているのである。
この兵力の少ない状態で乱戦だけは絶対避けたいところである。
その頃、毛利軍の吉川元春・益田藤兼の陣では品川大膳が吉川に対し物申していた。
「納得がいかんっ・・・!なぜ今戦ってはならんのだっ・・・!我は山中鹿之介と戦えたらそれで良いのだっ・・・!」
禍々しい雰囲気を発して吉川元春に怒りをぶつける。
「安心しろ。鹿之介とはこの戦いの最終決戦の日に必ず戦わせてやるから。」
吉川のその言葉に苛立つ品川大膳は吉川を睨み付ける。
「我はこの日の為だけに毛利に付き従ってきたっ・・・!あまり我を待たせるとその首が飛ぶと知れっ・・・!」
品川大膳の目は凄まじい殺気を放っていた。
それはとても味方に向ける目では無い。敵に向ける目であった。
だが、その目を見た吉川も睨み返す。
「お前もワシの期待を裏切るなよ?あの立花道雪と一騎討ちで互角に渡り合ったその実力で2度も女の鹿之介に負けたら許さんぞッ・・・!」
山中鹿之介が再興軍を起こしたばかりの時、毛利軍は九州出兵をしており、その時品川大膳は戦国最強と言われている立花道雪と一騎討ちで互角に渡り合っていた。
天武を極めし品川大膳と互角に渡り合う立花道雪、その立花道雪と戦って品川大膳は壁を越えた。
そして、今では一度負けた事のある山中鹿之介より強いという自負があった。
「我が女に2度も負けると思っているのか・・・?我は天武を極めし者・・・同じ失敗など2度としない・・・!その為に武を磨いてきた・・・!」
そう言い、品川大膳は去っていった。
実は品川大膳を今すぐに戦わせないには理由がある。
それは吉川元春はこの戦いの決着の日を既に決めてある事、そしてその為には今、品川大膳に動かれたらこの戦の流れ・・・それを失ってしまいそうなのである。
その為、吉川は戦いの決着の日に品川大膳を戦いに出すことにしたのである、
言うなら品川大膳は戦いの決め手、毛利軍を勝利に導く切り札なのである。
さて、しばらく経つと再び毛利軍は攻撃を始めた。
それを鹿之介は自ら先頭に立って返り討ちにする。
しかし、毛利の攻撃は先ほどの攻撃と比べると勢いがなかった。
勢いと言うよりも進軍するという意志が毛利軍には無かった。
それは戦場にいる者には分かっていた。
毛利軍には先ほどの熱気・・・と言うか戦意がまるで無い。
更に言うと死に対する覚悟無いと思った。
「まだ命を賭ける場では無い」というのが戦っていて分かる。
そうと分かれば鹿之介は一旦後ろに下がる。
「なぜ下がるのですか?奴らは本気で攻撃して来ていません!今なら総攻撃で倒せるのでは?」
殆どの部下は不思議がっていた。
「事は簡単じゃない。今の毛利は主力を温存して我らの戦力を削ろうとしている。つまり前衛の敵を蹴散らしても後衛にいる毛利最強の吉川本隊の主力がいる。しかも奴らは拠点を築いているから攻めるのは容易ではない。」
鹿之介は吉川軍の強さを嫌というほど知っている。
だから無理には攻めずに守りに徹する。
この戦は守戦である。つまり攻めなくても守り抜けば勝ちなのである。
如何に攻め勝つか・・・では無く、如何に返り討ちにするか・・・なのである。
幸い自国で戦っている尼子軍は兵糧の補給は完璧なので何年戦っていても大丈夫だが、毛利はそういう訳にはいかない。
毛利は敵国に攻め行った為に補給を自国から送らねばならない。
その補給が敵国に送るのがとても難しく、モタモタしていると補給線を尼子に狙われて全滅の恐れがある。
つまり毛利はこの戦いを短期決戦としているのだ。
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