シカノスケ

ZERO

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水谷口の戦い

危機感

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戦況を布部山の頂上で見守る鹿之介は危機を感じていた。


頂上から見下ろして見る限りでは中山口の秋上隊は戦いを優位に進めているが水谷口では立原久綱が吉川軍に圧倒されている。



鹿之介は頂上から敵の動きを見て銅鑼の音、様々な音を出して敵の動きや作戦を立原久綱の隊に伝えている。


鹿之介は相手の行動を予想して立原軍に指示を出すが、毛利軍が品川大膳を出してから戦況は急激に悪化した。



しかし、鹿之介は頂上から見るだけでは毛利軍の誰が戦況を変えたのか分からない。



だが、戦況が悪化した事により鹿之介は合戦初日にして、ここが正念場だと感じた。



「全軍現場に行くぞ。私が直接前線に立ち指揮を取る。」


鹿之介は部下に言い放つが、銅鑼を鳴らしている兵が「なぜ?」と言う困惑の表情をする。


「せっかく戦況が丸見えの頂上なのに前線ですか?」


「ああ、前線に立たねば分からぬ事が有りそうだ。それに・・・この戦場一帯の空気が重くなったと思わないか?」


部下に尋ねてみるも全く空気の重さを感じていないみたいだ。



だが、凡人には分からなくても真の武士(もののふ)である鹿之介にはこの空気の重さ・異質さに気付いていた。




鹿之介はすぐに前線に駆け付けた・・・が、そこには山の頂上で感じるよりもずっと重たい空気が漂っていた。



頂上では何も感じていなかった鹿之介の部下達もさすがに現場に行くと異常な空気の重さに気付いた。



「何ですか・・・?この息苦しさ・・・空気の重さは?」



「恐らく、敵の武将に手練れがいる。」


とはいえ敵は今、拠点を作っており、僅かな兵が見張りに付いているだけだ。


ここで攻撃を仕掛ければ良いと思うが、話はそんな簡単じゃないのである。



拠点作り、柵や堀を築く達人吉川元春が相手なのである。


恐らく攻めたところで堀や柵の近くに兵を伏せていて、尼子軍が攻めてきたところを狙うのである。




罠・策略の臭いを敏感に感じる鹿之介は前線の部隊に攻撃を中止させる指示を出した。



まずは乱れた軍を整えて、この先にある死闘に備える。





そして毛利の陣地も拠点を作ることに専念していた。


尼子が攻めてこないと分かっていたからである。


誰だってこの状況を見たら罠の気配を感じる。



だが、兵は伏せていた。

これは念のために、もし尼子が攻めてきた時の事を考えてである。




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