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大内輝弘の乱
一騎討ち
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降り続ける雨の中で杉元相の部隊は小次郎の奇襲を受け混乱に陥った。
気性の荒い馬と小次郎のでたらめな槍さばきが上手くハマった。
だが、向かってくる小次郎の馬術・槍術を真正面から見た杉元相は感じた。
「こいつ馬術も槍も素人だ…」
何となく直感だが、確かにそう感じた。
その時、小次郎の獣が如く手柄を狙わんとする顔を見て杉元相はふと昔を思い出した。
アレは12歳のときであった。
初陣の杉元相は当時、大内義隆の家臣で九州の覇者大友義鑑との決戦に従軍していた。
杉元相は当時大内家で『戦功随一』といわれた名将陶興房の部隊に従軍していた。
この戦いは北九州の覇権をかけた合戦であると同時に、大友・大内間最大の合戦といわれた「勢場ヶ原の戦い」であった。
杉元相の一族「杉八家」の多くはこの戦いに参加しており、大村山に籠る大友軍の奇襲を図ったときである。
戦いは激しい白兵戦となったが数に勝る大内軍は少数の大友軍を難なく撃破すると思われていた。
だが、杉一族の杉重信が敵将との一騎討ちで討ち取られたのである。
杉重信は幼い頃の杉元相とよく遊んでくれた「親戚のお兄さん」みたいな者であった。
重信が討ち取られた瞬間を見た元相は一瞬目の前で何が起きたのか分からなかった。
だが、重信を討ち取った敵将が今度は元相を狙ってきたのであった。
その後の記憶は殆ど残ってなく気が付いたら敵将の首を取っていた。
その首を見たあと元相は冷静に戦況を見て、劣勢の大友軍に部隊に単身で突っ込んで行った。
戦場が乱戦となっていた事もあり手柄を取り易いと思っていた。
だが、それより今は自分を可愛がってくれた重信の仇を取る為、大友の総大将を討たねばならぬと思ったのだ。
死闘の中で大友との総大将の寒田親将と副将裕則を一人で討ち取った。
今ではもう出来ないであろう、あの頃の若さ故の感情を優先してしまった行動、それを小次郎を見て思い出してしまった。
杉元相は昔を懐かしむ様に笑う。
そして足軽達に馬上槍の者を無視して後ろから来る敵を討てと指示を出す。
「さあ来い馬上槍の者よ!手柄が欲しければワシを倒してみぃ!」
杉元相は馬に乗っている小次郎を相手に真正面から向かってきた。
槍を持ち、小次郎に対して一突きするつもりである。
「このおっさん騎乗している俺を相手に真正面から戦う気かっ…!」
基本的に騎馬武者と足軽の戦いでは圧倒的に騎馬武者の有利である。
騎馬武者は馬の走っている勢いで敵に向かって行く。
つまり、敵からすると武者を相手するというより武者と馬の両方を相手にすることになる。
2対1の戦いの様なもので騎馬武者には雑兵では相手にならない。
だが杉元相は長年培った戦いの知識がある。
「ククっ…」と不気味に笑う杉元相を見た小次郎は嫌な予感がした。
そして次の瞬間に「ドスっ…!」という音が…槍に突かれたと思われる音がした。
そして馬が吹っ飛んでいくと同時に小次郎も吹っ飛んで行った。
「ッ…!?」
小次郎は草むらに吹っ飛ばされ、一瞬何が起きたのか分からない表情をする。
吹っ飛ばされたが草木がクッション代わりになったのか痛みは無いが目の前には小次郎の乗っていた馬が血を流し倒れていた。
「これは…?」
倒れた馬は物凄く痛そうな顔をしたが、次第に目を閉じていった。
それを見て小次郎は死んだと感じた。
「馬上だとワシが不利だからな。その暴れ馬には死んでもらったんじゃ」
槍を手に持ち杉元相はゆっくりと歩いてくる。
武者を倒すために馬を殺す…その考えが小次郎には理解できなかった。
馬は貴重なもので…売ったら高い、だから戦では馬を出来るだけ殺さないようにする為、騎乗している武者を馬から落とす武器もあるというのに杉元相はそれをしなかった。
「馬っていうのは自分の身を…命を乗せて走ってくれる相棒…友達だろ…?」
死んだ馬を見たあと小次郎は杉元相を睨む。
「何も殺すことはねぇだろうがよっ…!武将なら馬の大切さぐれぇ知っているだろうがよっ…!」
珍しく声を荒げて言う小次郎。
それはこの戦で荒馬に助けられて、そして荒馬のお陰で敵将杉元相の元まで来れた。
そして心の何処かで荒馬と分かり合える気がした。
馬と本当の意味で分かり合える…友達になれる…そんな気がしていたんだ…。
「アホか…!馬は大切だが買えばまた手に入る。糞ガキがっ…!お前は甘い…!甘すぎる…!それじゃあ戦には勝てねぇぞ!」
気性の荒い馬と小次郎のでたらめな槍さばきが上手くハマった。
だが、向かってくる小次郎の馬術・槍術を真正面から見た杉元相は感じた。
「こいつ馬術も槍も素人だ…」
何となく直感だが、確かにそう感じた。
その時、小次郎の獣が如く手柄を狙わんとする顔を見て杉元相はふと昔を思い出した。
アレは12歳のときであった。
初陣の杉元相は当時、大内義隆の家臣で九州の覇者大友義鑑との決戦に従軍していた。
杉元相は当時大内家で『戦功随一』といわれた名将陶興房の部隊に従軍していた。
この戦いは北九州の覇権をかけた合戦であると同時に、大友・大内間最大の合戦といわれた「勢場ヶ原の戦い」であった。
杉元相の一族「杉八家」の多くはこの戦いに参加しており、大村山に籠る大友軍の奇襲を図ったときである。
戦いは激しい白兵戦となったが数に勝る大内軍は少数の大友軍を難なく撃破すると思われていた。
だが、杉一族の杉重信が敵将との一騎討ちで討ち取られたのである。
杉重信は幼い頃の杉元相とよく遊んでくれた「親戚のお兄さん」みたいな者であった。
重信が討ち取られた瞬間を見た元相は一瞬目の前で何が起きたのか分からなかった。
だが、重信を討ち取った敵将が今度は元相を狙ってきたのであった。
その後の記憶は殆ど残ってなく気が付いたら敵将の首を取っていた。
その首を見たあと元相は冷静に戦況を見て、劣勢の大友軍に部隊に単身で突っ込んで行った。
戦場が乱戦となっていた事もあり手柄を取り易いと思っていた。
だが、それより今は自分を可愛がってくれた重信の仇を取る為、大友の総大将を討たねばならぬと思ったのだ。
死闘の中で大友との総大将の寒田親将と副将裕則を一人で討ち取った。
今ではもう出来ないであろう、あの頃の若さ故の感情を優先してしまった行動、それを小次郎を見て思い出してしまった。
杉元相は昔を懐かしむ様に笑う。
そして足軽達に馬上槍の者を無視して後ろから来る敵を討てと指示を出す。
「さあ来い馬上槍の者よ!手柄が欲しければワシを倒してみぃ!」
杉元相は馬に乗っている小次郎を相手に真正面から向かってきた。
槍を持ち、小次郎に対して一突きするつもりである。
「このおっさん騎乗している俺を相手に真正面から戦う気かっ…!」
基本的に騎馬武者と足軽の戦いでは圧倒的に騎馬武者の有利である。
騎馬武者は馬の走っている勢いで敵に向かって行く。
つまり、敵からすると武者を相手するというより武者と馬の両方を相手にすることになる。
2対1の戦いの様なもので騎馬武者には雑兵では相手にならない。
だが杉元相は長年培った戦いの知識がある。
「ククっ…」と不気味に笑う杉元相を見た小次郎は嫌な予感がした。
そして次の瞬間に「ドスっ…!」という音が…槍に突かれたと思われる音がした。
そして馬が吹っ飛んでいくと同時に小次郎も吹っ飛んで行った。
「ッ…!?」
小次郎は草むらに吹っ飛ばされ、一瞬何が起きたのか分からない表情をする。
吹っ飛ばされたが草木がクッション代わりになったのか痛みは無いが目の前には小次郎の乗っていた馬が血を流し倒れていた。
「これは…?」
倒れた馬は物凄く痛そうな顔をしたが、次第に目を閉じていった。
それを見て小次郎は死んだと感じた。
「馬上だとワシが不利だからな。その暴れ馬には死んでもらったんじゃ」
槍を手に持ち杉元相はゆっくりと歩いてくる。
武者を倒すために馬を殺す…その考えが小次郎には理解できなかった。
馬は貴重なもので…売ったら高い、だから戦では馬を出来るだけ殺さないようにする為、騎乗している武者を馬から落とす武器もあるというのに杉元相はそれをしなかった。
「馬っていうのは自分の身を…命を乗せて走ってくれる相棒…友達だろ…?」
死んだ馬を見たあと小次郎は杉元相を睨む。
「何も殺すことはねぇだろうがよっ…!武将なら馬の大切さぐれぇ知っているだろうがよっ…!」
珍しく声を荒げて言う小次郎。
それはこの戦で荒馬に助けられて、そして荒馬のお陰で敵将杉元相の元まで来れた。
そして心の何処かで荒馬と分かり合える気がした。
馬と本当の意味で分かり合える…友達になれる…そんな気がしていたんだ…。
「アホか…!馬は大切だが買えばまた手に入る。糞ガキがっ…!お前は甘い…!甘すぎる…!それじゃあ戦には勝てねぇぞ!」
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