95 / 131
大内輝弘の乱
軍師とは
しおりを挟む
大雨の中、一目散に山の頂上を目指して進軍する杉元相の軍は大雨を味方に付けて、進軍がバレない様に音を立てず、しかし迅速に山をかけ上がる。
基本的に戦いとは上を取った方が有利である。
だが、この大雨で視界が悪く、敵の進軍が分かりにくい為、小次郎達はやや不利である。
しかし小次郎達は視界が悪くても杉元相の動きが分かっていた。
直感で動く勇将タイプの武将は知略を用いずに勢いで敵陣を崩す戦いが多い。
そういう武将には罠や策を打ち崩す得体の知れない不気味さがある。
なら真正面から戦いをする。
これは優の考えた戦い方である。
知将には知略で勝負し、勇将には勇ましく戦う。
「優の言った通り、真正面から攻めてきたな…。」
小次郎は優の鋭さに感服した。
1度も会ったこと無い武将なのに戦歴だけで真正面から来ると感じ取ったのだ。
もし敵の動きを読むことに失敗したら悪天候の中、敵は別の道から山の頂上に行き、小次郎達は間違いなく全滅していたであろう。
自らの命を賭けた文字通りの『命賭けの大博打』であった。
まずは敵の動きを読むことに成功した小次郎達は次に進軍してくる杉元相を相手に戦うのだが、まずは攻めて来る杉軍を予め作っておいた柵や堀を使い防戦する。
これはいうなら時間稼ぎである。
杉元相は部隊を三つ分けて布陣しており、恐らく大将は一番後ろの第三陣にいる。
敵の第一陣の部隊と第二陣の部隊を柵と堀で進軍させにくくさせて弓矢を放って戦うのだ。
そして最後に動く第三陣に奇襲を掛けるのだ。
しかしこれはあくまでもこちらの思うように動いた場合はだ。
もし何かあっても小次郎は優に策を授けてもらい戦うのだ。
この時、小次郎はふと思った。
軍師とは心強いと。
戦国時代に合戦巧者と呼ばれた武将は数多くいるが策を考える事だけに特化した軍師というのは実は物凄く少ない。
戦国時代には15人軍師がいると言われている。
今川義元の軍師である太原雪斎
武田信玄の軍師山本勘助
上杉謙信の軍師宇佐美定満
大友宗麟の軍師角隅石宗
豊臣秀吉の軍師竹中半兵衛と黒田官兵衛
筒井順慶・石田三成の軍師島左近
伊達政宗の軍師片倉景綱
上杉景勝の軍師直江兼続
島津忠良の軍師岩切善信
島津義久の軍師川田義郎
北条氏康の軍師多目元忠
龍造寺隆信の軍師鍋島直茂
津軽為信の軍師沼田祐光
宇喜多秀家の軍師明石全登
戦国に知将・策士と呼ばれる将は沢山いるが『軍師』と世間から認識されているのはたったのこれだけである。
なぜ『軍師』と呼ばれる者がこんなに少ないかと言うと恐らく『信頼』の問題である。
『軍師』と呼ばれるものは軍事行動の最高責任者とも言われる者である。
あくまで『軍事』は大名の家臣だが兵は『軍師』を信頼して戦うのだ。
その『軍師』が信頼出来ない人間だったら、『軍師』によって大名家が滅ぼされるであろう。
先に上げた武将はいずれも大名の忠実な家臣で野心を持たず、主に忠義を尽くしたから『軍師』と言われたのである。
さて、杉元相の第一陣は早くも目の前の堀にまでやって来た。
そして第一陣に続いて第二陣も攻めてきた。
柵や堀が有る為、ある程度戦えるが敵の士気が高いから怯まずに攻めてくる。
だが、そんな敵に恐れずに秋上宗信は前線に立ち、弓矢を射つ。
「皆さん、手前の敵を狙ってください!遠くにいる敵は私が射ぬきます。」
宗信は足軽達に指示を出した。
弓の精度が低い足軽達に近くの敵を狙わせ、弓の名手である宗信は遠くから来る敵の部隊長を狙う。
そしてケン坊は前線で槍を振るう。
ケン坊には兵を統率する能力が無く、槍足軽として敵兵を討ち取っている。
敵の第三陣が来るまでしばらく小次郎は戦う事はない為、椅子に座り少し休憩をしていた。
「ムネリンとケン坊くん凄い活躍だよねー。」
いきなり優が現れ、一瞬「ビクッ」とした。
「まあ宗信が弓の達人なのは前から知っているが、ケン坊があそこまで槍を使えるとは思わなかったよ。」
そう、ケン坊はお調子者でテンション高いし、変態で女好き…どこをどう見てもただの下品な足軽にしか見ないのにこの槍働き。
人は見た目じゃ分からないとはこの事である。
「何言ってんの?ケン坊くんは普段から武芸しているじゃん。」
それは知っている。だが、奴の動きは戦い慣れている人の動きだ。
恐らく農民だから毛利に徴兵されて合戦に何度か出たのであろう。
だが、これほどの槍働きの者を大将が放っておくだろうか。
多分…ケン坊は何かがあって毛利に仕えなかったんだ…。
基本的に戦いとは上を取った方が有利である。
だが、この大雨で視界が悪く、敵の進軍が分かりにくい為、小次郎達はやや不利である。
しかし小次郎達は視界が悪くても杉元相の動きが分かっていた。
直感で動く勇将タイプの武将は知略を用いずに勢いで敵陣を崩す戦いが多い。
そういう武将には罠や策を打ち崩す得体の知れない不気味さがある。
なら真正面から戦いをする。
これは優の考えた戦い方である。
知将には知略で勝負し、勇将には勇ましく戦う。
「優の言った通り、真正面から攻めてきたな…。」
小次郎は優の鋭さに感服した。
1度も会ったこと無い武将なのに戦歴だけで真正面から来ると感じ取ったのだ。
もし敵の動きを読むことに失敗したら悪天候の中、敵は別の道から山の頂上に行き、小次郎達は間違いなく全滅していたであろう。
自らの命を賭けた文字通りの『命賭けの大博打』であった。
まずは敵の動きを読むことに成功した小次郎達は次に進軍してくる杉元相を相手に戦うのだが、まずは攻めて来る杉軍を予め作っておいた柵や堀を使い防戦する。
これはいうなら時間稼ぎである。
杉元相は部隊を三つ分けて布陣しており、恐らく大将は一番後ろの第三陣にいる。
敵の第一陣の部隊と第二陣の部隊を柵と堀で進軍させにくくさせて弓矢を放って戦うのだ。
そして最後に動く第三陣に奇襲を掛けるのだ。
しかしこれはあくまでもこちらの思うように動いた場合はだ。
もし何かあっても小次郎は優に策を授けてもらい戦うのだ。
この時、小次郎はふと思った。
軍師とは心強いと。
戦国時代に合戦巧者と呼ばれた武将は数多くいるが策を考える事だけに特化した軍師というのは実は物凄く少ない。
戦国時代には15人軍師がいると言われている。
今川義元の軍師である太原雪斎
武田信玄の軍師山本勘助
上杉謙信の軍師宇佐美定満
大友宗麟の軍師角隅石宗
豊臣秀吉の軍師竹中半兵衛と黒田官兵衛
筒井順慶・石田三成の軍師島左近
伊達政宗の軍師片倉景綱
上杉景勝の軍師直江兼続
島津忠良の軍師岩切善信
島津義久の軍師川田義郎
北条氏康の軍師多目元忠
龍造寺隆信の軍師鍋島直茂
津軽為信の軍師沼田祐光
宇喜多秀家の軍師明石全登
戦国に知将・策士と呼ばれる将は沢山いるが『軍師』と世間から認識されているのはたったのこれだけである。
なぜ『軍師』と呼ばれる者がこんなに少ないかと言うと恐らく『信頼』の問題である。
『軍師』と呼ばれるものは軍事行動の最高責任者とも言われる者である。
あくまで『軍事』は大名の家臣だが兵は『軍師』を信頼して戦うのだ。
その『軍師』が信頼出来ない人間だったら、『軍師』によって大名家が滅ぼされるであろう。
先に上げた武将はいずれも大名の忠実な家臣で野心を持たず、主に忠義を尽くしたから『軍師』と言われたのである。
さて、杉元相の第一陣は早くも目の前の堀にまでやって来た。
そして第一陣に続いて第二陣も攻めてきた。
柵や堀が有る為、ある程度戦えるが敵の士気が高いから怯まずに攻めてくる。
だが、そんな敵に恐れずに秋上宗信は前線に立ち、弓矢を射つ。
「皆さん、手前の敵を狙ってください!遠くにいる敵は私が射ぬきます。」
宗信は足軽達に指示を出した。
弓の精度が低い足軽達に近くの敵を狙わせ、弓の名手である宗信は遠くから来る敵の部隊長を狙う。
そしてケン坊は前線で槍を振るう。
ケン坊には兵を統率する能力が無く、槍足軽として敵兵を討ち取っている。
敵の第三陣が来るまでしばらく小次郎は戦う事はない為、椅子に座り少し休憩をしていた。
「ムネリンとケン坊くん凄い活躍だよねー。」
いきなり優が現れ、一瞬「ビクッ」とした。
「まあ宗信が弓の達人なのは前から知っているが、ケン坊があそこまで槍を使えるとは思わなかったよ。」
そう、ケン坊はお調子者でテンション高いし、変態で女好き…どこをどう見てもただの下品な足軽にしか見ないのにこの槍働き。
人は見た目じゃ分からないとはこの事である。
「何言ってんの?ケン坊くんは普段から武芸しているじゃん。」
それは知っている。だが、奴の動きは戦い慣れている人の動きだ。
恐らく農民だから毛利に徴兵されて合戦に何度か出たのであろう。
だが、これほどの槍働きの者を大将が放っておくだろうか。
多分…ケン坊は何かがあって毛利に仕えなかったんだ…。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
日本国転生
北乃大空
SF
女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。
或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。
ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。
その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。
ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。
その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。
【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?
俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。
この他、
「新訳 零戦戦記」
「総統戦記」もよろしくお願いします。
アークティカの商人(AP版)
半道海豚
SF
戦乱が終息して3年。アークティカに新たな異界物が現れます。神聖マムルーク帝国と東方騎馬民によって、国民の9割が、連れ去られるか、殺されるか、他国に逃れてしまったアークティカという国の物語です。物語の始まりは、東京から異界に転移した1人のサラリーマンから始まります。アークティカから拉致され、奴隷となっていた少女と東京のサラリーマンが出会い、アークティカに帰還しようとするところから始まります。そして、つかの間の平和が……。しかし、アークティカの対岸には新たな強敵が現れます。アークティカが生き延びるための模索が始まります。
えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。
揚惇命
SF
三国志の三英雄の1人劉備玄徳が大好きな高校生の劉義賢が劉備玄徳の墓を訪れるが、くまなく調べると何かの装置が作動し墓の中に落ちる。
辺りを見回すと奥に劉備玄徳愛用の双股剣があったので触れると謎の女性の『玄徳様の運命をお変えください』という言葉で光に包まれ目を覚ますとそこは後漢末期の涿郡涿県楼桑村だった。
目の前にいる兄だと名乗る劉備殿に困惑しながらも義勇兵を結成し、激動の時代を劉備殿の天下のために尽力する物語。
1章 黄巾の乱編 完結
2章 反董卓連合編 完結
3章 群雄割拠編 完結
4章 三国鼎立編 完結
5章 天下統一編 鋭意製作中
※二次創作ではありますが史実に忠実ではなくオリジナル戦記寄りとなってます。
数多くの武将が出るため、誰が話しているかわからなくなることを避けるために「」の前に名前を入れます。
読みにくい場合はコメントなどで教えてもらえるとありがたいです。
オリジナルキャラも登場します。
※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。
旅行先で目を覚ましたら森長可になっていた私。京で政変と聞き急ぎ美濃を目指す中、唯一の協力者。出浦盛清から紹介された人物が……どうも怪しい。
俣彦
ファンタジー
旅先で目を覚ましたら森長可になっていた私。場面は本能寺直後の越後。急ぎ美濃に戻ろうと試みると周りは敵だらけ。唯一協力を申し出てくれた出浦盛清に助けられ、美濃を目指す途中。出浦盛清に紹介されたのが真田昌幸。
落ち武者・歴史は知らない理系リーマン、化学チートで戦国を駆ける
ディエゴ
SF
超一流大学の化学科卒、大手重化学工業メーカーに就職したエリートリーマン。入社3年目にして将来のノーベル賞候補?と言われる程の活躍をみせる。が、好事魔多し、身辺のスキャンダルが発覚し、地方の閑職に左遷されてしまう。ついたあだ名は【落ち武者】。
人生初の挫折!昇進の目がなくなった彼は、現実逃避するかのように異世界物に目覚め、書籍、コミック、小説投稿サイトまで読み漁り、異世界ゲームにもはまる日々を送る。
やがて、年末、久々に実家に帰郷しようと新幹線に乗った彼が、辿り着いた処は・・・
【おことわり】
長さ・重量始め様々な単位は、全て現代日本の単位を使用しています。
小説家になろうで書いていた小説です。処女作で序盤が稚拙な構成だったので、アルファポリス様にて清書して公開しています。
続・歴史改変戦記「北のまほろば」
高木一優
SF
この物語は『歴史改変戦記「信長、中国を攻めるってよ」』の続編になります。正編のあらすじは序章で説明されますので、続編から読み始めても問題ありません。
タイム・マシンが実用化された近未来、歴史学者である私の論文が中国政府に採用され歴史改変実験「碧海作戦」が発動される。私の秘書官・戸部典子は歴女の知識を活用して戦国武将たちを支援する。歴史改変により織田信長は中国本土に攻め入り中華帝国を築き上げたのだが、日本国は帝国に飲み込まれて消滅してしまった。信長の中華帝国は殷賑を極め、世界の富を集める経済大国へと成長する。やがて西欧の勢力が帝国を襲い、私と戸部典子は真田信繁と伊達政宗を助けて西欧艦隊の攻撃を退け、ローマ教皇の領土的野心を砕く。平和が訪れたのもつかの間、十七世紀の帝国の北方では再び戦乱が巻き起ころうとしていた。歴史を思考実験するポリティカル歴史改変コメディー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる