シカノスケ

不死鳥の如く

デートの約束？

小次郎は横道秀綱と二人きりで作戦を考えようと思い、秀綱の陣に向かった。


秀綱は宗信とは違い、物事を合理的に考えれるから話をしやすい。

女性は感情で動く人が多いが、秀綱は｢理屈｣で動ける珍しいタイプの女性だ。


秀綱は挙兵をしてから連絡係や今回の戦いの副将ばかりで目立った成果を挙げてはいない。


だが秀綱は大将を立てておき、自分はしっかりと物事を考えて大将に策を勧めている。


大将に策を勧める為、成果を挙げても秀綱の戦功にはならず、大将が評価される事になる。

だが秀綱は様々な戦いで大将を精神的に、肉体的に支えている完全なる副将タイプの武将だ。



さすがは自称尼子勝久の親衛隊隊長だ。

親衛隊って秀綱以外に見たこと無いけど…。






小次郎はしばらく歩き、秀綱の陣に着いた。


秀綱の陣の兵士を見るといずれも屈強な兵士ばかりで普段から厳しい練習をしているのが窺える。


それ以外にも、陣中では奉行達が金銭や兵糧の計算をしている。

これは宗信の部隊とは違って、鉄砲の弾薬・兵糧などの軍費全てがきちんと帳簿に記されており、この合戦にどれだけ出費したのかを計算をしているのだ。



その為か秀綱の部隊は宗信の部隊とは違い、雰囲気が殺伐としており、ちょっと怖く感じる光景である。






しばらくすると小次郎の元に若い兵士が来る。

｢何かご用でしょうか？｣

兵士は小次郎より若く見えた。

とても爽やかなタイプの兵士である。

｢あ、秀綱を呼んでくれないか？君の大将さんを。｣

｢姉さんをですか？じゃあしばらく待っていてください。｣


兵士は走って秀綱に呼びにいった。


アレが秀綱の弟なのか。
イメージとかけ離れているな。と思っていたら秀綱がやって来た。


｢待たせてすまない。近くの寺で食事をしながら作戦に付いて話さないか？あまり他の兵士に知られないようにしたいし。｣

戦闘中でもないのに鎧兜を着て秀綱が現れた。


｢おう。お食事デートって奴だな。可愛い格好で来いよ。｣

小次郎は秀綱の陣の殺伐としている雰囲気を和らげる為、軽い冗談を言った。

その瞬間、秀綱は小次郎を睨み付けた。

物凄く怖い、今にも斬りかかって来そうな殺気を出しているのである。


｢貴様、私はお前とデート等する気は無いぞ！私は勝久様の親衛隊隊長だぞ！男性との初デートは勝久様じゃないと駄目だ！だからこれはデートじゃない！｣


秀綱はすんげぇ勢いで怒っている。

俺の言った冗談を本気で捉えてやがる。

てか、そんなに怒ることじゃなくね？


｢と、取り敢えず落ち着け。さっきのは冗談だ。さっきのは言ったら駄目な冗談でした。すみませんでした。だから怒らないでください。｣

取り敢えず秀綱を落ち着かせるため、とにかく今は謝る事にした。


しばらくすると秀綱は落ち着きを取り戻した。

｢と、取り敢えず後でこの近くの寺で作戦会議だ。デートじゃないからな。もう一度言う。デートじゃないからな。｣


秀綱にとっては大事な事なので２回言っちゃいました。


｢分かったよ。取り敢えず鎧兜は脱いで可愛い浴衣で来いよ。そんな格好だとお坊さん怖がるぞ。｣


そう言われると自分の装備を見た秀綱は今の自分の姿に気付く。


｢う…分かった。お前に可愛い浴衣みせるのは嫌だけど仕方無いな…。｣

秀綱は不満げな顔をするが、早速着替えに行った。