シカノスケ

ZERO

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不死鳥の如く

新しい仲間

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秋上隊はとりあえずみんなと合流するため真山城に向けて進軍をした。



その道中の出来事だ。



馬に乗っている小次郎に声を掛けてきた若者がいた。


「貴方がここの大将ッスか?前の戦いを見て、仲間にしていただきたく候うっス!」


いきなり若者が小次郎の前に現れて言うものだから、小次郎はビックリした。



「い、いきなりなんだぁ?」


「俺、前の戦いで毛利軍を倒した秋上軍に惚れたんス!だから隊に入れてもらいたいス!」


一方的に喋る若者だが、小次郎の隣にいた宗信が睨む。

若者の礼儀のなっていない行動にイライラしたのだ。

その殺気に気付いたのか若者は大人しくなる。


「私がこの秋上隊の大将ですが…我が隊に入隊したいのかしら?」

珍しく宗信の言い方が、雰囲気が怖い。


だが、それに萎縮せず若者が言う。

「はい!で候うっス!」



宗信はこの若者の喋り方がムカつくが、今の秋上隊は人数不足。

今率いている部隊の半分以上が先日仲間になった源五郎の部下である。



その為、秋上隊に入れても良いかなと思った。



「しょうがないですね…。分かりました。私達の仲間にしてあげますわ。」


「マジッスか?じゃあ今すぐに用意してくるんで待っていてくださいで候うっス!」


採用された嬉しさで若者のテンションはマックスハイテンションとなった。


(あー、この手のタイプ、宗信が一番苦手なタイプだろうなぁ。)





若者を待っている間、宗信は小次郎にさっきの若者を託した。



「あの手のタイプ苦手なんで小次郎さん宜しくお願いしますね。」

笑顔で面倒事を俺に押し付ける宗信。

だが、正直俺もあの手の馬鹿は苦手だ。

「アイツのテンション、マジ無理なんスけど…。」



「そうですか?テンションは違いますけど、結構話し方似てますよ?」



(ハッ?マジで?)

宗信に言われてそんな言葉が頭の中に出てきた。


あの手のタイプは大学に通っていたときによく見かけたリア充な種族の人間だ。


あんなのと同じにされたくない、されてたまるか…!


とは言え、女の子に託されたんだ。

あの若者の面倒を見ていこうと思う。




若者が戻って来て再び進軍が開始された。




俺は宗信より後ろを下馬して若者と歩いた。


コミュニケーションを取らなくちゃ駄目なんで仕方なく話し掛けることにした。


「ところで兄貴の名前なんスか?」


と思ったら若者が話し掛けてきた。

「俺は本城小次郎だ。歳は今年で21だ。」


俺は先輩としてそれなりの威厳のある雰囲気を出したつもりで言った。


「俺は17ッスよ。てか威厳あるっぽい雰囲気を出そうとか恥ずかしいッスよ?」


若者には威厳とかそういうのは通じなかった。

てか、なんで俺の考えが分かったんだ…ちょっと恥ずかしいじゃないか…。



「ちなみに俺の名前は建吉と言うっス。村のみんなからはケン坊と言われてるっス。」


「苗字は…?」


「身分が低いんで苗字なんてねぇっス。」


あ、そうか。ケン坊は見るからに農民の出身だ。

この時代の農民は身分が低いから苗字が無いんだ。


その時後ろで話を聞いていた優がケン坊に話し掛けた。

「へー。ケン坊君も苗字が無いんだー。あたしも一緒!あたしも身分が低いんだ!」


久々の登場だが、相変わらずテンション高いな。


「うおっ!いきなり可愛い娘ちゃんが出てきたからビックリしたっス!」


「えへへ。可愛いなんて言われたら照れるなー。」



あー、テンションの高い二人が意気投合したらやかましいだろうな。

つーか、この二人めんどくさい…。

俺は面倒事になる前に宗信の元に逃げた。









そして俺は宗信がいる先頭まで来た。


「あれ?さっきの男の子はどうしたんですか?」


「優と話している。そんで俺は面倒だから逃げてきたって訳だ。」


そう言いながら俺は宗信の馬に乗った。


「失礼…。歩いていたら疲れてね…。」



「なんか一緒の馬に乗るの久しぶりですね。」



「そうかもな。」


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