シカノスケ

ZERO

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戦国時代の冬

戦国時代の正月

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そして時は流れ正月を迎えた。


今は1569年の1月1日、元旦だ。


この日、尼子再興軍の主要メンバーが尼子勝久の元に集まる。

俺も宗信に連れられて勝久の元に行った。




この主要メンバーに最近仲間に加わった者が結構いる。



隠岐為清、隠岐清家の隠岐兄弟、勝久の1つ年下の弟の尼子通久、同じく尼子一門の尼子氏久である。


隠岐兄弟は隠岐国の国人衆で昔から尼子の味方をしていた。


ただ隠岐為清は史実では毛利方に通じて反乱を起こしている。


その為、俺は隠岐為清を警戒しなければならない。

隙があれば毒を盛って殺すつもりだ。



尼子通久は鉄砲の名手らしいがそれ以上の事は史料不足の為良く分からない。

氏久も史料不足である。






そして、正月はほとんどの大名は家臣を城に集め、酒宴が行われる。


それは尼子家も同じである。




ただ、家臣だけを集めるのではなく家臣の部下も集まる。


いわゆる付き添いという事だ。


その為、城にはかなりの人数が集まる。



俺たち尼子再興軍は城を持っていないが、大きな館があり、そこに家臣達が集まる。




俺と宗信が勝久のいる館に着いたのは予定の時刻の5分前である。


俺と宗信が正月から仲良く寝坊をしてしまい慌てて支度をして、馬を全速力で走らせて館についた。



館に着くと勝久が馬小屋にいた。


どうやら到着が遅れている俺達を心配に思い外に様子を見に行くつもりだった様だ。


「お、遅れてすみませんです…!」

宗信は勝久から叱られると思い、少し動揺をしている。



だが勝久は別に怒らず、むしろ無事に着いて良かったと思っていた。


そして俺達は馬を置いて勝久に付いていき酒宴の席についた。


俺と宗信は尼子再興軍の重臣という扱いなので勝久の席の近くである。




そして勝久が挨拶をする。




「皆、この酒宴に集まってくれて有り難う。ここにいる者は皆が再興軍の重要な家臣だ。我々は今年には挙兵をして尼子家を再興させるつもりだ。この酒宴はその前祝いと思い、存分に楽しんで頂きたい。」


堂々とした立ち振舞い、さすがは猛将尼子誠久の息子である。

普段は優男という外見で仏門に入っていたからなのか温厚で怒ることも殆ど無い為、尼子の棟梁としては少し不安なところもあった家臣達もこの堂々とした立ち振舞いを見て安心をした。


それどころか誠久より優しくて「この人なら付いていきたい」というオーラを家臣のみんなも感じている。



勝久の祖父国久と父誠久は猛将ではあったが横暴な立ち振舞いがあり、尼子家臣団から嫌われていた。


自らの武勇の高さを自慢し、他の尼子家臣に乱暴を働く人で当主の器では無かった。


だが勝久は違う。勝久はそんな父の話を家臣から聞いて、自分はそんな人間になりたくないと心に決めていた。


そして一族の尼子義久みたいに疑心暗鬼になり、家臣を殺すような大将にならないようにすると心に決めていた。



例え自分が死んでも家臣を信じぬくと心に決めているのである。


ところで勝久の挨拶が終わったが家臣の皆はいつまでも静かに座っている。


みんな話がまだあると思っているのだ。


正月の挨拶がこんなに短いとは誰も思っていなかったのである。


その時、誰も飲み食いせずじっとしているのを見て山中鹿之助が言う。

「皆の衆!勝久様の話は以上だ。みんな飲み食いするが良い。」


鹿之助がそう言うと家臣達は皆飲み食いを始める。


みんなに言った後、鹿之助は勝久の耳元で小さい声で静かに言う。

「話が終わったら『以上だ』と言わないと駄目ですよ。」


勝久は鹿之助に言われ自分の失態に気付いた。


この様な宴の席で当主が挨拶を終わる前に飲み食いするのは失礼である。


その為、当主は話が全て済んだら『以上』と言わなければならない。


それを言わないと話がまだあると思うからだ。






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