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仇敵との同盟
烏合の衆
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そして、その夜がきた。
宗信はいつもの巫女装束の上に鎧を付けて隊のみんなの表情を見ている。
「(みんな、良い表情です。緊張の様子が見られないし、これなら戦えます。)」
真剣な眼差しの宗信。
そして、その宗信をボーッと見ている小次郎と優。
「ねえ、コジローさん。」
どうやら優はボーッとするのに疲れたみたいで小次郎に話しかけてくる。
「ムネリンが凄くカッコ良く感じるんだけど。いつもと違う雰囲気だし。巫女装束の上に鎧とかカッコ良いし。」
「ん…。カッコ良いか?俺は可愛いと思うが。」
いつもと違い固い表情の小次郎。
「なんか、コジローさんもいつもと違うね。」
確かにいつもと違う。
この前の外交とは違う緊張がある。
この前の外交は命の取り合いはしていない。
だが今回は命の取り合いだ。
見るだけで良いと言われても何が起きるか分からない。
ひょっとしたら弓矢で討ち死にするかもしれない。
小次郎の緊張は死の恐怖からきている。
「(おっさん達が戦は血生臭いと言っていたが、どんなもんだろう?もしかしたら俺死んでしまうんじゃ…。)」
その時である。
「大将!賊が来ました!」
前方の守りに付いていたおっさんが大声で言う。
「よし、それでは皆さん討って出ますよ!」
宗信はそう言い前方に行く。
敵は100人という数である。
普通に戦えば数の少ない小次郎達は負ける。
だが、事前に罠を仕掛けているのだ。
「うわっ!なんだ、この大きな穴は!」
外から敵の声が聞こえた。
どうやら罠が効いているみたいである。
仕掛けた罠とは大きな落とし穴である。
夜に奇襲を仕掛けてくるのなら、この落とし穴には気付かないだろう。
敵が怯んでいる間に秋上隊のおっさん達は落とし穴に落ちた敵を槍で刺したり、弓矢で射ぬいたりしている。
「手際が良い…。洗練されている…!」
小次郎はおっさん達の動きを見て驚いている。
敵はこの大きな落とし穴に気を付けながら神社に近付かなければいけない。
そしてこの落とし穴が無いところは正面の門だけである。
だが賊から見ると正面の門は明らかに罠に見える。
「お頭!正面の門ががら空きでっせ!正面から行けば数で勝るワシらが有利でっせ!」
「馬鹿!アレはどう見ても俺達を誘っているだろうが!恐らく門を潜った先に鉄砲隊や弓矢隊が潜んでいるはず。」
敵の大将はそんな事を言っているが、実は罠なんて無いのである。
たった30人しかいない部隊で、弓矢隊とか鉄砲隊を作る余裕なんて無いのだ。
だから宗信は敢えて正面の門の守りをがら空きにして、兵を他の守りに使った。
正面の門、とても重要なところをがら空きにしていたら、普通の人は怪しいと思う。
まともな人なら罠だと思う。
だが、宗信はその考えを逆手に取り、他の守りを固めた。
恐らく、敵が真正面から来ない限り、この戦いは負けない。
しかも、この戦いはもうすぐ終わるだろう。
「(賊の動きが悪い。ちゃんと戦の練習をしていないから足並みがバラバラだ。それに統率が全く取れていない。)」
敵は所詮は賊である。
まともな練習をしていない為、足並みがバラバラで部隊として機能していないのである。
半ば混乱している様な状態である。
そして、この賊を統率している大将に大将としての器がないのも分かった。
人数が多い為、全ての兵にきちんと作戦を伝えられていないのである。
普通は人数が多いなら、みんなに指示が行き渡るように工夫するのだが、端から見ている小次郎には工夫すら見えない。
所詮は賊だ。烏合の衆である。
宗信はいつもの巫女装束の上に鎧を付けて隊のみんなの表情を見ている。
「(みんな、良い表情です。緊張の様子が見られないし、これなら戦えます。)」
真剣な眼差しの宗信。
そして、その宗信をボーッと見ている小次郎と優。
「ねえ、コジローさん。」
どうやら優はボーッとするのに疲れたみたいで小次郎に話しかけてくる。
「ムネリンが凄くカッコ良く感じるんだけど。いつもと違う雰囲気だし。巫女装束の上に鎧とかカッコ良いし。」
「ん…。カッコ良いか?俺は可愛いと思うが。」
いつもと違い固い表情の小次郎。
「なんか、コジローさんもいつもと違うね。」
確かにいつもと違う。
この前の外交とは違う緊張がある。
この前の外交は命の取り合いはしていない。
だが今回は命の取り合いだ。
見るだけで良いと言われても何が起きるか分からない。
ひょっとしたら弓矢で討ち死にするかもしれない。
小次郎の緊張は死の恐怖からきている。
「(おっさん達が戦は血生臭いと言っていたが、どんなもんだろう?もしかしたら俺死んでしまうんじゃ…。)」
その時である。
「大将!賊が来ました!」
前方の守りに付いていたおっさんが大声で言う。
「よし、それでは皆さん討って出ますよ!」
宗信はそう言い前方に行く。
敵は100人という数である。
普通に戦えば数の少ない小次郎達は負ける。
だが、事前に罠を仕掛けているのだ。
「うわっ!なんだ、この大きな穴は!」
外から敵の声が聞こえた。
どうやら罠が効いているみたいである。
仕掛けた罠とは大きな落とし穴である。
夜に奇襲を仕掛けてくるのなら、この落とし穴には気付かないだろう。
敵が怯んでいる間に秋上隊のおっさん達は落とし穴に落ちた敵を槍で刺したり、弓矢で射ぬいたりしている。
「手際が良い…。洗練されている…!」
小次郎はおっさん達の動きを見て驚いている。
敵はこの大きな落とし穴に気を付けながら神社に近付かなければいけない。
そしてこの落とし穴が無いところは正面の門だけである。
だが賊から見ると正面の門は明らかに罠に見える。
「お頭!正面の門ががら空きでっせ!正面から行けば数で勝るワシらが有利でっせ!」
「馬鹿!アレはどう見ても俺達を誘っているだろうが!恐らく門を潜った先に鉄砲隊や弓矢隊が潜んでいるはず。」
敵の大将はそんな事を言っているが、実は罠なんて無いのである。
たった30人しかいない部隊で、弓矢隊とか鉄砲隊を作る余裕なんて無いのだ。
だから宗信は敢えて正面の門の守りをがら空きにして、兵を他の守りに使った。
正面の門、とても重要なところをがら空きにしていたら、普通の人は怪しいと思う。
まともな人なら罠だと思う。
だが、宗信はその考えを逆手に取り、他の守りを固めた。
恐らく、敵が真正面から来ない限り、この戦いは負けない。
しかも、この戦いはもうすぐ終わるだろう。
「(賊の動きが悪い。ちゃんと戦の練習をしていないから足並みがバラバラだ。それに統率が全く取れていない。)」
敵は所詮は賊である。
まともな練習をしていない為、足並みがバラバラで部隊として機能していないのである。
半ば混乱している様な状態である。
そして、この賊を統率している大将に大将としての器がないのも分かった。
人数が多い為、全ての兵にきちんと作戦を伝えられていないのである。
普通は人数が多いなら、みんなに指示が行き渡るように工夫するのだが、端から見ている小次郎には工夫すら見えない。
所詮は賊だ。烏合の衆である。
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