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お出かけの日
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翌日、町を見学に行く日。
よく晴れていて、絶好のおでかけ日和だ。
ヒースヴェルトは、朝からリーナと共に出かけるための支度をしていた。
「ヒー様、今日のお召し物はこちらが良いと思いますわ。髪色は、黒にするんですよね?」
「ぁい!リーナの、夜のお色です~♪」
「も~、嬉しいです!私の弟になったみたい!なんて贅沢…ッ!」
きゃっきゃ、と2人で楽しんでいると。
「ヒースヴェルト様ッ、何故私がエスコートしては駄目なのですか。なんであんなちんちくりんなガキと出かけるなんて!」
激おこエルフが入ってきた。
「ルシオさんは、後ろからついてくる、です!今日はぼくは《友達とお出かけ》体験をするんでーす!」
そう言うと、ふわん、と虹の光を纏う。そして、一瞬でプラチナの髪は漆黒に、最近は澱みも減り、灰がかった瞳の色は色素の薄い紫色にまで澄んできたが、その瞳もリーナの色と同じ、琥珀色に。
「あああぁぁぁ!!ヒースヴェルト様の美しい白金の虹髪がっ!美しい紫水晶の瞳がッ!!!」
「も~~っ!ルシオさんうるさいッ!!」
ぷん、と頬を膨らます。支度が出来たヒースヴェルトは、ルシオを無視してリアンが待つ正門前に走っていった。
「ヒースヴェルトさまぁ~!」
護衛としてついていくルシオも、走ってついて行く。
いつもながら、ヒースヴェルトが絡むとポンコツになるルシオに半ばあきれ顔のリーナは、ヒースヴェルトの部屋を片付けたあと、フォレンの滞在している部屋へと向かった。
フォレンと共に邸でコルディウス村での行動計画を立てることになっている。
「失礼します、リーナです。」
控えめにノックをして、返事を待つ。
「あぁ、入ってくれ。」
机に乱雑に広げているのは、コルディウスまでの道のりを示す地図と、コール領の歴史文献、それに現地に伝わる神話や逸話の資料など。
そして。
「…少し気になる資料があってな。」
「気になる…ですか?」
数枚の紙をクリップでとめた、ウォルトから貸りた資料を見せる。
「コルディウス村は、その村の収益が少量の作物と、木彫りのアクセサリー等で…非常に貧しい村らしい。」
「えぇ、それはジャンニさんからも伺っています。納税も、麦や作物で充てていると。でも、それが何か?」
「不確かな情報だが、子爵が調べた内容では、コルディウスの村民が、最近麓の町で羽振りが良いらしくてな。上等の酒や食べ物を飲食して払って行くらしい。…妙だと思わないか?」
「…確かに、そんなにお金が稼げるなら、無理に村の大事な糧を税に充てなくても、お金で払えば良いじゃないですか。」
「…もう少し、調べてみようと思う。子爵に調査する許可を得よう。」
まずは、町でのコルディウスの村民の行動を実際に見てみなければ。フォレンとリーナは、子爵の執務室へと向かった。
「…そうなのですよ。ここ最近の噂が、本当かどうかを我々も調査していたところです。町に潜ませていた管財担当からの報告書はこちらです。」
ウォルトはもう一つの紙面を渡す。つい先日の日付。最新の状況報告書だった。
「……一人あたり三万レルか…。平民の一食分にしては、些か使いすぎのような気もするね。祝い事ならまだ分かるけれど。…ねぇ?リーナ。」
「わぁ…。三万レルのお食事ってどれだけ注文すればいいのかしら…。」
リーナの金銭感覚はアルクスでのパーティーの財布管理をしていたため、とても庶民の感覚に近い。フォレンも平民の金銭感覚を知ってはいるものの、それは机上の知識として。
リーナの回答で、確信を得た。
「では、実際にどのような感じか…今晩と明日、その麓の町に出てみます?」
「そうしよう。アシュトが居たら、庶民の感覚が掴みやすいんだが。…残念ながら私はそういった店に行ったことが少なくてね。リーナ、付き合ってくれるかい?」
「えぇ!もちろんです。そしたら、フォレン様の平服を調達すべきですわね。少しジャンニさんと準備してきますわ♪」
「あぁ、頼むよ。」
これからヒースヴェルトが向かう村に、翼候補たる自分たちに、不明な点があってはならない。
必要ならば、明後日の視察を延期することも考えなければ。
「申し訳ありません、前の村長の頃までは、そんなこともなかったのですが。二年ほど前に新しく変わってから、どうも村の体制が変わったようなのです。視察に向かっても、上手く言い逃れたりうやむやな説明で。」
「新しい村長…?」
「えぇ。人望もあり、適任だと前村長からも太鼓判だったのですが。就任してから暫く後に…一度だけ、納税を金にしたいと申し出たのです。
ですので、うちの領では、適正な収納管理のため、村の収支予算と決算を出すよう命じたのです。」
「当然だな。それで?」
「この話はなかったことにしてくれと、一言。怪しいと思い、それ以来調査しているのですが…」
「尻尾を出さない?」
ウォルトは神妙に頷く。
「子爵。これ、暴いてもいい?」
「!…それは、願ってもないことですが…できるのでしょうか…。」
ウォルトの弱気な言動に、フォレンは冷たく、美しく笑う。
「おや、私を誰だとお思いで…?」
洞察力なら、ディランより優れている自負がある。情報を聞き出すための話術も、アルクスで随一の自信がある。
「今夜、コルディウスの者らが現れる町に行ってみたいね。」
フォレンは、とても楽しげに笑った。
よく晴れていて、絶好のおでかけ日和だ。
ヒースヴェルトは、朝からリーナと共に出かけるための支度をしていた。
「ヒー様、今日のお召し物はこちらが良いと思いますわ。髪色は、黒にするんですよね?」
「ぁい!リーナの、夜のお色です~♪」
「も~、嬉しいです!私の弟になったみたい!なんて贅沢…ッ!」
きゃっきゃ、と2人で楽しんでいると。
「ヒースヴェルト様ッ、何故私がエスコートしては駄目なのですか。なんであんなちんちくりんなガキと出かけるなんて!」
激おこエルフが入ってきた。
「ルシオさんは、後ろからついてくる、です!今日はぼくは《友達とお出かけ》体験をするんでーす!」
そう言うと、ふわん、と虹の光を纏う。そして、一瞬でプラチナの髪は漆黒に、最近は澱みも減り、灰がかった瞳の色は色素の薄い紫色にまで澄んできたが、その瞳もリーナの色と同じ、琥珀色に。
「あああぁぁぁ!!ヒースヴェルト様の美しい白金の虹髪がっ!美しい紫水晶の瞳がッ!!!」
「も~~っ!ルシオさんうるさいッ!!」
ぷん、と頬を膨らます。支度が出来たヒースヴェルトは、ルシオを無視してリアンが待つ正門前に走っていった。
「ヒースヴェルトさまぁ~!」
護衛としてついていくルシオも、走ってついて行く。
いつもながら、ヒースヴェルトが絡むとポンコツになるルシオに半ばあきれ顔のリーナは、ヒースヴェルトの部屋を片付けたあと、フォレンの滞在している部屋へと向かった。
フォレンと共に邸でコルディウス村での行動計画を立てることになっている。
「失礼します、リーナです。」
控えめにノックをして、返事を待つ。
「あぁ、入ってくれ。」
机に乱雑に広げているのは、コルディウスまでの道のりを示す地図と、コール領の歴史文献、それに現地に伝わる神話や逸話の資料など。
そして。
「…少し気になる資料があってな。」
「気になる…ですか?」
数枚の紙をクリップでとめた、ウォルトから貸りた資料を見せる。
「コルディウス村は、その村の収益が少量の作物と、木彫りのアクセサリー等で…非常に貧しい村らしい。」
「えぇ、それはジャンニさんからも伺っています。納税も、麦や作物で充てていると。でも、それが何か?」
「不確かな情報だが、子爵が調べた内容では、コルディウスの村民が、最近麓の町で羽振りが良いらしくてな。上等の酒や食べ物を飲食して払って行くらしい。…妙だと思わないか?」
「…確かに、そんなにお金が稼げるなら、無理に村の大事な糧を税に充てなくても、お金で払えば良いじゃないですか。」
「…もう少し、調べてみようと思う。子爵に調査する許可を得よう。」
まずは、町でのコルディウスの村民の行動を実際に見てみなければ。フォレンとリーナは、子爵の執務室へと向かった。
「…そうなのですよ。ここ最近の噂が、本当かどうかを我々も調査していたところです。町に潜ませていた管財担当からの報告書はこちらです。」
ウォルトはもう一つの紙面を渡す。つい先日の日付。最新の状況報告書だった。
「……一人あたり三万レルか…。平民の一食分にしては、些か使いすぎのような気もするね。祝い事ならまだ分かるけれど。…ねぇ?リーナ。」
「わぁ…。三万レルのお食事ってどれだけ注文すればいいのかしら…。」
リーナの金銭感覚はアルクスでのパーティーの財布管理をしていたため、とても庶民の感覚に近い。フォレンも平民の金銭感覚を知ってはいるものの、それは机上の知識として。
リーナの回答で、確信を得た。
「では、実際にどのような感じか…今晩と明日、その麓の町に出てみます?」
「そうしよう。アシュトが居たら、庶民の感覚が掴みやすいんだが。…残念ながら私はそういった店に行ったことが少なくてね。リーナ、付き合ってくれるかい?」
「えぇ!もちろんです。そしたら、フォレン様の平服を調達すべきですわね。少しジャンニさんと準備してきますわ♪」
「あぁ、頼むよ。」
これからヒースヴェルトが向かう村に、翼候補たる自分たちに、不明な点があってはならない。
必要ならば、明後日の視察を延期することも考えなければ。
「申し訳ありません、前の村長の頃までは、そんなこともなかったのですが。二年ほど前に新しく変わってから、どうも村の体制が変わったようなのです。視察に向かっても、上手く言い逃れたりうやむやな説明で。」
「新しい村長…?」
「えぇ。人望もあり、適任だと前村長からも太鼓判だったのですが。就任してから暫く後に…一度だけ、納税を金にしたいと申し出たのです。
ですので、うちの領では、適正な収納管理のため、村の収支予算と決算を出すよう命じたのです。」
「当然だな。それで?」
「この話はなかったことにしてくれと、一言。怪しいと思い、それ以来調査しているのですが…」
「尻尾を出さない?」
ウォルトは神妙に頷く。
「子爵。これ、暴いてもいい?」
「!…それは、願ってもないことですが…できるのでしょうか…。」
ウォルトの弱気な言動に、フォレンは冷たく、美しく笑う。
「おや、私を誰だとお思いで…?」
洞察力なら、ディランより優れている自負がある。情報を聞き出すための話術も、アルクスで随一の自信がある。
「今夜、コルディウスの者らが現れる町に行ってみたいね。」
フォレンは、とても楽しげに笑った。
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