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side ヒースヴェルト~恩返し~

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焼きたてのパンを、フォレンとルシオさんとリーナに配って回わることにした。
ジャンニと一緒に、初めてのパン作り、とーっても楽しかった!!
途中からリアンも一緒にこねこねしたから、もっと楽しかった!


「ヒースヴェルト様が、ご自分でお作りに!?」
「ぁい~!ジャンニと、こねこねしました!見て?ルシオさんのパンはね、アルフィンの形なのよ!かわいい、ね!」
熱々のパンは、ウサギの形。ルシオさんのお耳とおんなじ、アルフィンみたいなふわふわパンなの!
「一生大事にいたします!!!」
えっ?まさか食べずに置いておくつもり!?だめ!カビちゃうじゃん!
「んぇっ!?だめ!焼きたて、食べてほしいのっ!また、作ってあげるね~。」
だから、食べて?とお願いすると、ルシオさんは耳まで赤くして何度も頷いた。

つぎは、フォレン。
「フォレン、初めてぼくが作ったです!粉から、こねこねして~、まるーくなるの!凄いねっ、焼いたらふぁふぁになるんだよ!!凄いよねっ!!」
フォレンには、大きな丸い形のパンを。
「ヒー様が作った…?本当に!?光栄です、ヒー様。早速頂きますね。」
フォレンも、嬉しそう。よかった!

「リーナっ!さっきはお風呂ありがとう~!これ、出来立てなのよ、ふあふあでね、美味しいよ!」
「ヒー様の手作りパンっ!!!」
リーナに渡したのは、小鳥の羽の形にしたかったんだけれど、焼いたら膨らんでしまって、ちょっとなが丸みたいな形になっちゃったの。
でも、リーナはすっごく喜んでくれた!!
もっと練習しないと!

みんなにパンを渡し終えて、ぼくはジャンニからぼく用のパンを貰った。
「リアン、中庭の木の上で食べたい!」
「おっ、天気もいいし気持ちいいかもな。行こうぜ!」
 ぼくの初めての友達!リアンと木の上で食べるんだ。
リアンは、木登りは遅いけれど、ぼくが引っ張ってあげると、大きな枝に腰かけて、小さくサンキュって言ってくれた!
「食べる、です!」
ジャンニからもらった、可愛いまるまるパン。頬張ると、甘ーいお味が口のなかに広がるの。どんなお料理にも合う、飽きないパンだから、ぼくは大好き。
こうして、人の食べ物に《似せて》作ってくれるジャンニの技術は、とても特殊。普通にお料理するのとは、違うみたい。
リーナもお料理上手だけれど、ぼく用のご飯は、結局作れなかったんだって。
ぼくは、ママの虹砡の欠片だけでも、きっと生きていけるけれど…それでも、ママのいないときや、もし死都市のことでなにかがあったら、ぼくの身体は、弱ってしまうと思う。
だから、ジャンニのご飯はぼくの生命線。これから死都市を管理するためには、ぼくの身体的安定が必須なんだ…。
きっとぼくは、もうジャンニを手放せない。

「なぁ、ヴェル。」
「なぁに?」
「………本当にジャンニ姉様を、連れていくのか?…ウチから、切り離してまで……さ。」
「………ん。ごめんね。ぼくの望みは、もう決まったから、ジャンニは、絶対必要なの。」
「…もう、会えなくなる…わけじゃ、ないよな?」
「…!それは大丈夫だよ!ぼくの住んでいる神殿がね、もうすぐアルクスの転移ステーションに行き先が追加されるのっ!」
「どういうこと?」
「つまり、アルクスに行けば、ジャンニが働いてる神殿へいつでも行けるってことなの。」
「ほ、本当に!?会いに行けるのか!なんだ…。ははっ、なーんだ!俺、もう会えなくなっちまうのかと思って……。良かったーっ!ヴェル、もちろん、お前にも会えるんだよな?その神殿?に行けばさ!」
「…勿論だよ!ぼくのお家だもん。ねぇ、今度うちにきてねっ!」
友達を自分の家に招く。
そんな、素敵なこともしてみたいと思ったんだ。
「あぁ!招待してくれよな!」
「その時は、ジャンニに教わって、クッキー作って待ってる!!」
「また粉だらけになるんじゃねぇぞ?」
「あはははっ。」

あぁ、楽しいな。
ぼくは…ほんとは、こんな穏やかな日々を過ごしていきたかったのかな。
もし、お父さんが外国の騎士でなければ。
もし、ぼくの展開率が人並みだったなら。
もしかしたら。
そんなあり得ないことを考えたって無駄なんだけれど。

それでも命を繋いでくれたディーテ神を母と思い込むことで、どうにか今日まで生きてきた。生かされた。
…愛を、知った。

そして、十年ぶりに出会った人たちに、ぼくの心は更に暖かいもので満たされた。

恩は、返さなければ。


もうすぐ、ぼくは浄化が終わる。
そうすれば、次の段階へ。

…フレイド様が言っていた。

人の澱みを受け取る辛さを。

ママが言っていた。

人の澱みは、悲しいと。

もうすぐ、ぼくは翼候補たちの澱みを受け取る。
彼らの辛さに…悲しみに、耐えなければ、恩は返せないよね、ママ。








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