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虹色の子

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「あーっ。フォレン!アシュトー!お、かぃりなさい!」
星の離宮の一部屋。ヒースヴェルトが泊まる予定の部屋に、フォレンとアシュトが沢山の袋を抱えて帰ってきた。
「お待たせいたしました、ヒースヴェルト様。・・・え?」
にこ、と微笑みを向けて、ヒースヴェルトのお顔を見る。
その美しさに、2人は息をすることを忘れて。
「これは・・・凄まじい威力だな。」
思わず赤面してしまった顔を片手で覆い隠す。
「うわぁ、ヒースヴェルト様ってスッゴい綺麗な髪色だったんすね!虹みたいだ」
アシュトの声に、皆は納得する。その色は、ディーテ様がお与えになるヒースヴェルト専用の砡の色だった。
「えー?ひーたんの、かみは、古~い葉っぱよー?」
古い葉っぱ?枯葉?茶色か。
「んん?いや、綺麗な白金ですよ。
ディーテ様の飴の色と、同じなんですよ?」
ほら、と手鏡をヒースヴェルトに向けてやると、鏡を見たのが初めてなのか、目を丸くしてふおおおぅ、と声をあげて鏡に映った自分の顔を見る。
「ひーたん?こぇ、ひーたん?」
「えぇ。その鏡に見えているのが、今のヒースヴェルト様のお姿ですよ。・・・その、生まれたときは、茶色かったのかも、しれませんが。」
生まれたとき。そう聞こえたとき、ヒースヴェルトの灰紫の瞳が暗くなった。
「今が・・・」
「え?」
『今の、ぼくは、ママとそっくりでしょう?
そうなれるように、毎日祈りながら遺跡で暮らしたの。
ねぇ、ディラン。ぼく、ちゃんとママの子どもになれたかなぁ?』
「!」
暗かった瞳が、ふと不安の色を帯びた。
ほんの一瞬だけ、産みの親のことを記憶の縁から呼び起こしてしまったのだろう。声が震えていた。
ディランは、辛い過去を持つ者として彼の波立つ思いに寄り添った。

「ヒースヴェルト様。大丈夫です。
あなたはの親御様はきっとディーテ神様だけ。
ディーテ様も、我が子って自慢してたじゃないですか。」
「!・・・っ。うん!」
じわりと滲んだ涙を、ディランは優しく指で拭ってやる。
「さて、ヒースヴェルト様。アシュトと2人で貴方に似合いそうな服を用意しましたよ。
是非、お召しになっていただきたい。」
ずらりと並んだ洋服や靴に、ヒースヴェルトだけでなリーナもキラキラした目でそれらを見つめる。
「きゃあー!素敵な色!ヒースヴェルト様っ、これ!これ着てみましょう!お手伝いします~!」
ぱっと手に取ったのは、深い森の色に、金の刺繍が上品に施されたチュニック。
袖はゆったりとしたバタフライスリーブ。
それにあわせて、下は黒の七部丈のパンツ。
もちろん、金糸の刺繍つき。
ベルトにはディーテ神の象徴でもあるアイビーをモチーフにした金細工。
靴は、上質な魔物の柔らかい革で作られた焦げ茶色の編み上げブーツ。

「リーナ、できた?ひーたん、かっくいぃ?」
くるり、とその場で回って、長い髪の毛を揺らす。それだけで、この部屋の空気が神聖なものに変わるような気がした。
「えぇ!とっても!!」
リーナは思わず、ぎゅうっとヒースヴェルトを抱き締めた。
「ひゃはは!リーナ、ぎゅうー!」
すると、ヒースヴェルトもリーナに絡まり、可愛くしがみつく。
「おふろも、きもちかったしぃー!
ほしのりきゅ、好き!ひーたん、ここ、好きよ!」
にこにことご機嫌なヒースヴェルトに、みんなほっこりとした。
「あっ、フォレン。ひーたんも、おかぇもの?おかゆものー?するよー!」
「お買い物、ですね。もちろん!そうですねぇ。ヒースヴェルト様は人の食べるものは食べられませんから・・・そうだ、その美しい御髪を結う髪紐なんて選ぶのはいかがでしょう?」
さらりとした虹色の髪の毛を、纏め上げる髪紐。
カーザスには他国の特産品も多く取り扱っているため、様々な髪紐が手に入るだろう。
「素敵ですね!じゃあ、このリーナが選ぶのをお手伝いしましょう。」
「リーナ、おかいもの、いっしょ?いっしょー?やったー!」
お風呂の後から、ヒースヴェルトはリーナがお気に入りの様子。
ふわふわと微笑みながら、リーナの手を取り外に出よう、とドアの方へ小走りに行こうとする。
「ディラン、護衛を頼むぞ。」
「了解。ヒースヴェルト様、外は危険です、ちゃんとリーナか俺と、手を繋いでてくださいね?」
ひょい、とベッド脇に置いていた大剣を背中に担ぎ、リーナの後をついていく。
「ヒースヴェルト様、どこかへお出掛けするときは、行ってきます、ですよー」
「ぁい!いってきま、す!」
ヒースヴェルトご一行は、ホテルを出発した。




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