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六、再びの熱。
六、再びの熱。 五
しおりを挟む『ゃっぁ、っ』
身を燃やすような、焦げて灰になってしまうような熱さに、身体を捩った。
何度も何度も捩ったが、目だけはどうしても開けられなかった。
『シアン……雨が降っていない。もうすぐユグドが燃える』
蛇のお姿で、私のズボンの裾から足を伝って、白蛇さまが身体に触れてきた。
体中を、ぬめぬめした蛇の皮膚が這いずりまわる。
『20年前のあの日なんて比でもない。この国が一晩で燃えてしまう。ユグドの死は、この国の死だ』
『ぁっ、う、ぅごかないでくださっ』
身体を隅々まで這われ、息が上がってくる。
ぎゅうっと身体に巻きつかれると、甘い嬌声が飛び出てしまうほど。
気持ち悪いはずなのに、――心を溶かされてしまいそうだ。
ねばっと糸を引く粘液が、樹液の様に甘く香る。
『一つになってくれないか。君の体を私に――』
『白蛇様?』
『私が君の体を貰い、ユアンと交われたならば……ユグドを救える。必ず』
もうそれしかない。
消えそうな囁くような声。
『時間がない。もう、終末はすぐそこだ。お願いだ』
『ぁぁっ 擦らないでっ』
胸や下半身を弄るように動き、刺激を受けつけられる。
ジンジンと熱で腫れて芯を硬くしてしまうと――尾を捲きつけられた。
昔よりは声も遠い。形も見えない。夢の中でしか私に声が届かない。
それでも、白蛇様の言うことは本当なんだろう。
尾が激しく上下に動くと、私は腰をしならせて熱を放つしかなかった。
けれど、その放つ瞬間の頭が真っ白になる解放感はリアルだった。
彼は私の思考が消え去るまで、何度も搾り取ってから夜になる前に消えていってしまった。
「シアン、シアン」
ゆさゆさと揺さぶられ、眠い目を擦りながら起き上がった。
「王子?」
窓の外はすっかり暗くなっている。
どうやら朝からずっと眠っていたようだ。
「おかえりなさい。今日は遅かった――」
言い終わるよりも早く、王子が私の服をめくった。そして私の胸を触った王子の手から、糸が引く。
「あっ」
「汗にしては、身体のラインが浮かび上がるほどにぴっとりと濡れていると思った」
夢。
さきほどまで見ていた夢が――夢ではないと、冷たくなっていく王子の目が言っていた。
「お前は教育係だろ。俺の最後の願い中でさえ、白蛇と交わっているのか」
「王子、待って下さい。そんな」
「白蛇が抱いたシアンを、――俺が抱く。それが辛いだなんて、俺の我儘かもしれんが、俺はシアンの為に王位を継ぐ。それまでは一瞬だけでも俺のモノになってくれないのか!」
壁を強く叩くと、王子は苛立ちながらも立ち上がり、のろのろと歩いていく。
「風呂に入ってこい。……その身体を俺に見せるな」
絞り出した声は、今にも泣き出しそうだった。
それ以上は私が何を言っても王子の感情を逆立てるだけだろうと、――飲み込むしかなかった。
服を脱ぎ、姿見の前を通ろうとして驚いた。
体中に赤く締め付けられた後が浮かび上がっている。
慌てて手で隠しても、――全部隠せない。
潔白を証明など、この身体ではできなかった。
重々しくドアを開けると、やけに大きな音を立てたような気がした。
「……あの」
王子は不貞腐れたように向こうを向いてベッドで眠っていた。
いや、傷つくのも無理は無い。けれど、私には止めることができない。いつもいつ訪れるのか分からないのだから。
「王子、お湯をいただきました」
「食事はテーブルに置いてある」
「王子は?」
「食べる気分ではない」
それでも私は、自分の心を隠さない王子の心は好きだと思った。
誰からも愛されて、地位もある。私とは違う環境の中で育てられた王子は汚れを知らない美しい宝石の様だ。
それなのに、大切な人は次々に別の国へ嫁いで自分の前から姿を消す。
政略結婚に傷ついてきた王子に、私はそれを薦めて気持ちを拒否した。
綺麗な王子には相応しくない、塵のような私に。
「サフォー様」
意を決してベッドに近づき、片足を乗せた。
「来るな」
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