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1章.はちゃめちゃ人生ゲームの始まり
ゲームの始まり
しおりを挟む「な、な……」
もはや驚きすぎて、言葉が出てこない。しかし花梨はふっと、何もかもがどうでもいいような気になった。
ここに来てからというもの、次から次へと異変が起きている。キャパオーバーも甚だしい。今起きていることを本当に現実と認めていいのか、よく分からなくなってきた。頭が追いついていない。
「ちょっと展開、早すぎやしませんか?」
だって、ねぇ?
答えなど返ってこないことを知りながら、花梨は心の中で誰かに問いかける。
急に知らないところに来てしまったと思ったら、そこにいるのは変な生き物ばっかりで。しかも自分にもおかしなことが起きるし。それなのに、まだ続くって言うのか。右も左も分からず、この世界のことだって全然理解できてないのに。一人で何とかしろってことか。
そんなのってちょっと、理不尽だと思いません?
なんだかちょっとヤケになって、花梨はずんずんと道の真ん中まで歩いて行った。冷静でない自覚はある。
「それで? 次は、何だって言うの?」
何に対して自分がこんなにイラついているのか分からないまま、花梨は道の真ん中で声を上げた。すると石がキラキラと輝き出して、足下に何やら文字が浮かび上がる。
「なになに……『ここは、不思議の溢れる世界……』」
『様々な種族のモノたちが住み、それぞれの暮らしを営んでいる。生き様こそ違えど、皆が幸せに生きているのだ。
そして、あなたも。
ここに生を受けたことを祝福しよう。
未来のことなど分からない。人生に、筋書きなどない。全て自分で切り拓くのだ。
新たな人生の始まりを、ここで。』
─── それは、あの人生ゲームのスタートに書いてあった言葉だった。
声に出して全部を読み終えてから初めて、そのことに花梨は気が付いた。それと同時に、左手首の内側が熱を持ち始める。まるで、体の中から焼き焦がされてしまいそうなほど、凶暴な熱を。
「あっ、つ ─── 」
思わず袖を捲って見てみると、そこは先程よりも強い光を放っていた。宙に浮かぶルーレットは、花梨が触れてもないのにひとりでに回っている。
「ほ、本当に、人生ゲームなんだ……? これを回して、ゲームをスタートさせろとでも言いたいの?」
ごくり。
花梨は思わず生唾を飲み込んだ。今から人生ゲームが始まることが、なぜだか確信できたからだ。
ゲームが始まったら、一体自分はどうなるのだろうか。
元の世界には戻れるのか、そもそもこんなの危険ではないのだろうか。
ぐるぐると色んな考えが回っている。しかし花梨はそれらを頭の隅に追いやった。
どうなるかなんて分からない。でも結局、自分はこうするしかないのだ。
花梨はゆっくりとルーレットに右手を伸ばし……回した。
カラカラカラ……と、何とも呑気な音とともにルーレットが回り始める。その様子を眺めながら、花梨は頭を働かした。
もし本当にこの世界があの人生ゲームにリンクしているのだとしたら、まず最初は“職業ゾーン”が待ち構えているはずだ。そのゾーンには、様々な異世界風の職業が十個並んでいる。そして後ろの方になればなるほどその格は上がっていく。つまり儲かる、ということだ。
出来れば大きい数字が出て欲しいところだ。お金をもらっても使い道なんて分からないし、そもそもどうやってもらうのかすら知らないが、あるに越したことはない。
そんなことを考えているうちに、ルーレットが止まった。どれどれ……と花梨は覗き込む。
「……3」
幸先、ちょっと悪め? と若干落ち込む。
─── こうして、花梨の“人生ゲーム”が始まった。
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
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