173 / 173
後編#4
オトヒメサマノユメ
しおりを挟む
『ちわーす』
CRSとの戦いが終わり、また普段の日常に戻った週末、麗桜は樹のジムを訪れていた。
中ではすでに勢いよくグローブで打つ音が響いている。
リングで樹がスパーリング中らしい。
バン!バン!ズダン!ズダン!
『おぉ…』
気合いの入る樹に麗桜は思わず声を漏らしていた。
相手をしているのは優子だ。樹が打てば優子が蹴り返す。樹が蹴り返せば優子が打ち返す。
打ち合う技はほぼ互角。しかしやはり優子に余裕が見える。
『ん?おう!ピンク頭!』
『あ?なんだ麗桜いたのかよ!』
2人はやっと麗桜に気付いて打ち合うのをやめた。
『気合い入ってんね、樹さん。もう何本目?』
『あ?あー、今で丁度50だ』
『ご!50!?これ何分やんの!?』
『3分やって30秒空けて3分やってのエンドレスだ』
『3分!?』
もう3時間、打ち合いっぱなしということになる。
『おーよ。こんないい練習相手いねーからな。やらなきゃやらねーだけ損だろ?』
優子相手に3時間は1度やり合ったことがある麗桜からすると正直気が引けた。
だがこの2人ときたら、てんで楽しそうだ。
『ねぇ樹ぃ。あたしお腹減った~』
優子が転校してきて数日一緒に過ごしているので麗桜は分かっていたが、白桐優子の表情はもうCRSの総長の時とは別人だった。
想像していたよりも全然女の子だったし、旋や珠凛が言っていた通り先輩というよりは友達になろうとしてくる。
よく笑うし、喋っているとずっとふざけている。
ちなみに優子は愛羽たちと同じクラスだ。
『なんだ?逃げんのか?あたしはまだまだ足りてねーけどな』
樹もそれ以来、今までにも増してトレーニングに励んでいる。もちろん優子も毎日付き合っている。
『は~?この人何言ってんの?あたしなんて足りないどころか毎日欲求不満だよ~?あたしはお腹が減ったの~。ちゃんとご飯食べたらまた稽古つけてやるから静火と唯にご飯作ってもらおーよー』
『言わせておけばこの女…くそっ!じゃあ飯食ったらもう50な!今日こそ絶対勝つ!』
『勝つのは無理じゃな~い?』
『うっせ!絶対勝つ!…1回位は…』
優子に負けたことが相当悔しかったんだろうなと麗桜は思っていた。
だが樹の気合いの入り方は単純に悔しさから来ているものとも思えなかった。
『すごいね樹さん。もしかしてプロでも目指すの?』
『あ?』
しかし樹は当然のように普段通りのセリフを言った。
『バカ麗桜。あたしがなりたいのは1つだ』
神奈川で1番かっこいい女になる。それがあたしの夢だ。
CRSとの戦いが終わり、また普段の日常に戻った週末、麗桜は樹のジムを訪れていた。
中ではすでに勢いよくグローブで打つ音が響いている。
リングで樹がスパーリング中らしい。
バン!バン!ズダン!ズダン!
『おぉ…』
気合いの入る樹に麗桜は思わず声を漏らしていた。
相手をしているのは優子だ。樹が打てば優子が蹴り返す。樹が蹴り返せば優子が打ち返す。
打ち合う技はほぼ互角。しかしやはり優子に余裕が見える。
『ん?おう!ピンク頭!』
『あ?なんだ麗桜いたのかよ!』
2人はやっと麗桜に気付いて打ち合うのをやめた。
『気合い入ってんね、樹さん。もう何本目?』
『あ?あー、今で丁度50だ』
『ご!50!?これ何分やんの!?』
『3分やって30秒空けて3分やってのエンドレスだ』
『3分!?』
もう3時間、打ち合いっぱなしということになる。
『おーよ。こんないい練習相手いねーからな。やらなきゃやらねーだけ損だろ?』
優子相手に3時間は1度やり合ったことがある麗桜からすると正直気が引けた。
だがこの2人ときたら、てんで楽しそうだ。
『ねぇ樹ぃ。あたしお腹減った~』
優子が転校してきて数日一緒に過ごしているので麗桜は分かっていたが、白桐優子の表情はもうCRSの総長の時とは別人だった。
想像していたよりも全然女の子だったし、旋や珠凛が言っていた通り先輩というよりは友達になろうとしてくる。
よく笑うし、喋っているとずっとふざけている。
ちなみに優子は愛羽たちと同じクラスだ。
『なんだ?逃げんのか?あたしはまだまだ足りてねーけどな』
樹もそれ以来、今までにも増してトレーニングに励んでいる。もちろん優子も毎日付き合っている。
『は~?この人何言ってんの?あたしなんて足りないどころか毎日欲求不満だよ~?あたしはお腹が減ったの~。ちゃんとご飯食べたらまた稽古つけてやるから静火と唯にご飯作ってもらおーよー』
『言わせておけばこの女…くそっ!じゃあ飯食ったらもう50な!今日こそ絶対勝つ!』
『勝つのは無理じゃな~い?』
『うっせ!絶対勝つ!…1回位は…』
優子に負けたことが相当悔しかったんだろうなと麗桜は思っていた。
だが樹の気合いの入り方は単純に悔しさから来ているものとも思えなかった。
『すごいね樹さん。もしかしてプロでも目指すの?』
『あ?』
しかし樹は当然のように普段通りのセリフを言った。
『バカ麗桜。あたしがなりたいのは1つだ』
神奈川で1番かっこいい女になる。それがあたしの夢だ。
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
家政婦さんは同級生のメイド女子高生
coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
はじめまして、おじゃまします。湘南の小型バイク乗りです。
知ってる地名が出てきて目に止まったのですが、グッとくる言い回しが多くてお気に入りに登録させていただきました!