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後編#4
風
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4人が次に目覚めると戦国原はもう姿を消していた。
それから愛羽は連絡のつかない戦国原を学校で待ち続けた。
携帯はつながらないので毎朝早く来て門の所でちょこんと待っていたり、休み時間に彼女が急に入ってこないか気にしてみるだけだが、お弁当も毎日1人分多く詰め友達の帰りを待っていた。
普段の日常に戻って笑ってはいてもどこか寂しそうな愛羽を見て、その日は玲璃が朝から一緒に門の所にいた。
『なぁ、あいつ学校辞めてねーのか?』
『うん。もし辞めちゃったら教えて下さいって先生にお願いしたんだけど、まだ言われないから、まだ辞めてないんだと思う。多分…』
『まぁ、あいつが今更また来たってどーすんだよって感じだけどな。伴さんだってあんな目に合わしてんのによ』
『うん…』
伴は戦国原に事故らされたあの一件でひどいケガを負った。特に顔に一生残るであろう傷を負い、伴はそれから学校に姿を見せておらず夜叉猫とも気まずい雰囲気になってしまっている。
『よぉ、愛羽』
軽い感じで声をかけてきたのは金髪の女子高生だった。
『あ、おはよぉございまーす』
愛羽は一応挨拶をしたが誰か分からない。
(えっと、あれ?年上っぽいけど誰だっけ?夜叉猫の先輩かな?こんな人いたっけ?)
『なぁんだよ、よそよそしいなぁ。なぁ、玲璃』
もちろん玲璃も知らない顔だ。
『…誰あんた』
『おいおい、ひっでぇなぁ。あたしのこと忘れちまったのか?あたしだよ、あたし』
すると金髪の女子高生は前髪を持ち上げ後ろに引っ張って顔をよく見せた。
『あっ!』『うぇっ!』
目の前に立っているのは白桐優子である。
『はぁっ!?あんた何やってんだよ、こんな所で!なんだその格好!』
優子が着ているのは間違いなくこの学校の制服だ。
『ははは!なんだよ大げさだなぁ。これでも今日からおんなじ学校の同級生なんだからよ』
2人は今の言葉を頭の中で1度分解してから再び組み立て、もう1度解剖してまた組み立てた。
『え!?』
『どっ!同級生だぁ~あ!?』
玲璃はもう意味が分からず開いた口がふさがらない。
『あたしは退学しようと思ってたんだけどよ、どうしても樹がそれならここに行けって言うからさ。ま、卒業する気はねぇからいつまで続くか分かんねぇけど、よろしくな』
優子は本当の理由は言わなかった。
言葉にしないでおきたいことは人にはいっぱいある。彼女にとってそれがその1つだった、というだけである。
『おい愛羽、そろそろ行こうぜ』
もうすぐ授業が始まる。愛羽が仲間たちと校舎に向かって歩きだすと、風と共に1台の単車が校門の前を通り過ぎていった。
Z1000R。愛羽も他の誰も気付かなかったが、戦国原は気付いていた。
『お母さん。約束、守るよ。でもボクはボクのやり方で友達を大切にするから、これからもずっと見ていてね…』
それから愛羽は連絡のつかない戦国原を学校で待ち続けた。
携帯はつながらないので毎朝早く来て門の所でちょこんと待っていたり、休み時間に彼女が急に入ってこないか気にしてみるだけだが、お弁当も毎日1人分多く詰め友達の帰りを待っていた。
普段の日常に戻って笑ってはいてもどこか寂しそうな愛羽を見て、その日は玲璃が朝から一緒に門の所にいた。
『なぁ、あいつ学校辞めてねーのか?』
『うん。もし辞めちゃったら教えて下さいって先生にお願いしたんだけど、まだ言われないから、まだ辞めてないんだと思う。多分…』
『まぁ、あいつが今更また来たってどーすんだよって感じだけどな。伴さんだってあんな目に合わしてんのによ』
『うん…』
伴は戦国原に事故らされたあの一件でひどいケガを負った。特に顔に一生残るであろう傷を負い、伴はそれから学校に姿を見せておらず夜叉猫とも気まずい雰囲気になってしまっている。
『よぉ、愛羽』
軽い感じで声をかけてきたのは金髪の女子高生だった。
『あ、おはよぉございまーす』
愛羽は一応挨拶をしたが誰か分からない。
(えっと、あれ?年上っぽいけど誰だっけ?夜叉猫の先輩かな?こんな人いたっけ?)
『なぁんだよ、よそよそしいなぁ。なぁ、玲璃』
もちろん玲璃も知らない顔だ。
『…誰あんた』
『おいおい、ひっでぇなぁ。あたしのこと忘れちまったのか?あたしだよ、あたし』
すると金髪の女子高生は前髪を持ち上げ後ろに引っ張って顔をよく見せた。
『あっ!』『うぇっ!』
目の前に立っているのは白桐優子である。
『はぁっ!?あんた何やってんだよ、こんな所で!なんだその格好!』
優子が着ているのは間違いなくこの学校の制服だ。
『ははは!なんだよ大げさだなぁ。これでも今日からおんなじ学校の同級生なんだからよ』
2人は今の言葉を頭の中で1度分解してから再び組み立て、もう1度解剖してまた組み立てた。
『え!?』
『どっ!同級生だぁ~あ!?』
玲璃はもう意味が分からず開いた口がふさがらない。
『あたしは退学しようと思ってたんだけどよ、どうしても樹がそれならここに行けって言うからさ。ま、卒業する気はねぇからいつまで続くか分かんねぇけど、よろしくな』
優子は本当の理由は言わなかった。
言葉にしないでおきたいことは人にはいっぱいある。彼女にとってそれがその1つだった、というだけである。
『おい愛羽、そろそろ行こうぜ』
もうすぐ授業が始まる。愛羽が仲間たちと校舎に向かって歩きだすと、風と共に1台の単車が校門の前を通り過ぎていった。
Z1000R。愛羽も他の誰も気付かなかったが、戦国原は気付いていた。
『お母さん。約束、守るよ。でもボクはボクのやり方で友達を大切にするから、これからもずっと見ていてね…』
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