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後編#3
非情
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樹は全力で向かっていった。少なくともそうしなければ勝負にならないと分かっているし、そもそもこの女に勝てると思えなかった。
しかしそこからもう30分近く殴り合っているが樹はその中で豹那が手を抜いているような、何か体をかばっているような気がしていた。
この女に限って手加減ということもないはずだ。
『おい』
『…なんだい?』
『お前ケガしてんのか?』
『はぁ?…あぁ…これか』
豹那もそれで意味が分かったという様子だったが何故か彼女は特攻服の上着を脱いでしまった。その下はさらしで胸から下を巻いているだけだがそんなことお構いなしに上半身を見せつけた。
『おい玲璃!あたしの服持ってな』
そう言って上着を投げるとまた戻ってきた。
『さぁ、これでもういいよ』
上着に何か入っていたのか?よく分からなかったが樹は考えるのをやめ打ち合いに徹した。
2人のタイマンは結局ずっと続き勝敗はいつまで経っても決まらなかった。
といっても軍配は十中八九豹那で樹は何度も倒され、でも立ち上がりを繰り返していた。
『けっ、弱ぇくせにしぶといねぇ。さっさとお前もくたばっちまえよ』
豹那は口の中の血を唾と一緒に吐き出した。
あまりにも非情な態度に鬼音姫のメンバーたちも旋や珠凛、麗桜もさすがに怒りが抑えられなかった。
『樹さん俺と代わろう!』
『待って、あたしが行く』
『めぐ、先にやらせて』
今にも樹に代わって豹那とやり合おうとしている。
『関係ない奴は黙ってなよ、うざったいねぇ…まぁ、それでもいいさ。もうめんどくさいからかかってきたい奴はかかってきなよ。たとえガキが何人集まろうとあたしは負けてやるつもりはないからね』
しかし樹は立ち上がって言った。
『緋薙の言う通りだ。誰も手ぇ出すんじゃねぇ』
さすがにダメージと疲れが見える。
『でも樹さん…』
麗桜が言葉を続けようとするとそれを手で止められた。
『いいから見てろって。あたしはまだ負けてねーだろ?』
樹は豹那に視線を戻した。
『お前に勝たなきゃあたしは神奈川一になれないんだ』
豹那をダウンさせることはできないが樹は執念で立ち上がり、気付けばもう何時間も殴り合いが続いていた。
さすがに豹那にも相当の疲れが見え、もうすぐ夜が明けるという時だった。
ついに樹が豹那を殴り倒した。
もうお互いフラフラだ。豹那もやっとの思いで立ち上がった。
『はぁ…はぁ…いい加減さ…倒れちまったらどうだい?…しつこいねぇ…』
『ぜぇ…ぜぇ…へへ…お前こそどうした?まだまだそんなもんじゃねぇんだろ…嬢王さんよ』
『ふ…ふふ…カッコつけてると死ぬよ?』
『あれ?知らねぇのか緋薙…鬼音姫は神奈川一カッコいい暴走族だぜ?』
実際、今なら誰でも2人のことをちょっとこずくだけで倒せてしまいそうだが、そこまでボロボロになりながらも2人は立ち上がり、そこには誰も入り込めない何かがあった。
玲璃は2人のタイマンをずっと見ていたが手に持っていた豹那の特攻服のポケットから何かが落ちたことに気づいた。
『あ?』
拾い上げるとそれは白い花びらだった。花?何の花だ?何故特攻服の中から?
玲璃は気になってポケットの中を探ってみて固まった。
ポケットの中はその白い花でいっぱいだったのだ。
『…そんな、なんであいつ…』
どう考えても追悼の花のはずだ。
しかしそこからもう30分近く殴り合っているが樹はその中で豹那が手を抜いているような、何か体をかばっているような気がしていた。
この女に限って手加減ということもないはずだ。
『おい』
『…なんだい?』
『お前ケガしてんのか?』
『はぁ?…あぁ…これか』
豹那もそれで意味が分かったという様子だったが何故か彼女は特攻服の上着を脱いでしまった。その下はさらしで胸から下を巻いているだけだがそんなことお構いなしに上半身を見せつけた。
『おい玲璃!あたしの服持ってな』
そう言って上着を投げるとまた戻ってきた。
『さぁ、これでもういいよ』
上着に何か入っていたのか?よく分からなかったが樹は考えるのをやめ打ち合いに徹した。
2人のタイマンは結局ずっと続き勝敗はいつまで経っても決まらなかった。
といっても軍配は十中八九豹那で樹は何度も倒され、でも立ち上がりを繰り返していた。
『けっ、弱ぇくせにしぶといねぇ。さっさとお前もくたばっちまえよ』
豹那は口の中の血を唾と一緒に吐き出した。
あまりにも非情な態度に鬼音姫のメンバーたちも旋や珠凛、麗桜もさすがに怒りが抑えられなかった。
『樹さん俺と代わろう!』
『待って、あたしが行く』
『めぐ、先にやらせて』
今にも樹に代わって豹那とやり合おうとしている。
『関係ない奴は黙ってなよ、うざったいねぇ…まぁ、それでもいいさ。もうめんどくさいからかかってきたい奴はかかってきなよ。たとえガキが何人集まろうとあたしは負けてやるつもりはないからね』
しかし樹は立ち上がって言った。
『緋薙の言う通りだ。誰も手ぇ出すんじゃねぇ』
さすがにダメージと疲れが見える。
『でも樹さん…』
麗桜が言葉を続けようとするとそれを手で止められた。
『いいから見てろって。あたしはまだ負けてねーだろ?』
樹は豹那に視線を戻した。
『お前に勝たなきゃあたしは神奈川一になれないんだ』
豹那をダウンさせることはできないが樹は執念で立ち上がり、気付けばもう何時間も殴り合いが続いていた。
さすがに豹那にも相当の疲れが見え、もうすぐ夜が明けるという時だった。
ついに樹が豹那を殴り倒した。
もうお互いフラフラだ。豹那もやっとの思いで立ち上がった。
『はぁ…はぁ…いい加減さ…倒れちまったらどうだい?…しつこいねぇ…』
『ぜぇ…ぜぇ…へへ…お前こそどうした?まだまだそんなもんじゃねぇんだろ…嬢王さんよ』
『ふ…ふふ…カッコつけてると死ぬよ?』
『あれ?知らねぇのか緋薙…鬼音姫は神奈川一カッコいい暴走族だぜ?』
実際、今なら誰でも2人のことをちょっとこずくだけで倒せてしまいそうだが、そこまでボロボロになりながらも2人は立ち上がり、そこには誰も入り込めない何かがあった。
玲璃は2人のタイマンをずっと見ていたが手に持っていた豹那の特攻服のポケットから何かが落ちたことに気づいた。
『あ?』
拾い上げるとそれは白い花びらだった。花?何の花だ?何故特攻服の中から?
玲璃は気になってポケットの中を探ってみて固まった。
ポケットの中はその白い花でいっぱいだったのだ。
『…そんな、なんであいつ…』
どう考えても追悼の花のはずだ。
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