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後編#3
やっとつかまえた
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終わった…これで全部終わった。これでいいんだ…樹たちを守りきったのだから…あたしはやっと、この暗い呪いから解き放たれた。
優子は歩きだした。ゆっくりと校門の方へ。
『優子!』
『優子ちゃん!』
樹と旋は呼んだが優子は振り返らなかった。校門の所には麗桜に珠凛、そして綺夜羅が立っていて綺夜羅は手を広げて言った。
『まだ終わりじゃないだろ?もう、振り向いてもいいんじゃねぇのかよ』
『…』
優子はうつむいて、すると後ろから樹が抱きついた。足には旋がしがみついている。
『やっとつかまえた。もう絶対、放してあげないんだから』
旋は足が痛むのも構わず腕に力を込める。
『めぐ…』
『バカ優子…ずっと一緒にいるって…約束したじゃんかよ…忘れちゃったのかよ…』
樹は泣きながら優子を抱きしめた。
『樹…』
忘れてなんかいない。樹がそうやって言うのは分かっていた。誰よりも自分のことを分かってくれる樹のことは、誰よりも優子が知っていた。
自分を守る為に殴らせたこと。
万引きで捕まった時、真っ先に自分を庇ってくれたこと。
家を追い出されてもずっと一緒にいてくれたこと。
2人で不良たちに立ち上がることもできない位ボコボコにされたこと。
キックボクシングを始め、来る日も来る日も一緒に特訓したこと。
やがて2人でヤンキーになり相模原を制したこと。
2人でCRSのレディースを作ろうと語り合ったこと。
ラスイチのタバコを2人で回して吸ったこと。
樹との思い出の全てがその瞬間に次々と甦ってきてしまった。
自分は人を殺した。相手はヤクザとはいえその罪から逃れることはできないし、自分はこの事で命を狙われるだろう。でも…
でも…今だけでいいから、この自分の大切な親友を自分も抱きしめたかった。
『樹…』
優子は振り返り樹のことを抱きしめ返した。
『ごめんね。樹…』
優子の目に溜まった涙が零れ落ちた。
もうずっと感情を出すことがなかった彼女の表情が優しく緩むと
その向こうで死んだはずの鷹爪が、その凶悪な銃口をこちらに向け笑っていた。
優子は樹を突き放した。
優子は歩きだした。ゆっくりと校門の方へ。
『優子!』
『優子ちゃん!』
樹と旋は呼んだが優子は振り返らなかった。校門の所には麗桜に珠凛、そして綺夜羅が立っていて綺夜羅は手を広げて言った。
『まだ終わりじゃないだろ?もう、振り向いてもいいんじゃねぇのかよ』
『…』
優子はうつむいて、すると後ろから樹が抱きついた。足には旋がしがみついている。
『やっとつかまえた。もう絶対、放してあげないんだから』
旋は足が痛むのも構わず腕に力を込める。
『めぐ…』
『バカ優子…ずっと一緒にいるって…約束したじゃんかよ…忘れちゃったのかよ…』
樹は泣きながら優子を抱きしめた。
『樹…』
忘れてなんかいない。樹がそうやって言うのは分かっていた。誰よりも自分のことを分かってくれる樹のことは、誰よりも優子が知っていた。
自分を守る為に殴らせたこと。
万引きで捕まった時、真っ先に自分を庇ってくれたこと。
家を追い出されてもずっと一緒にいてくれたこと。
2人で不良たちに立ち上がることもできない位ボコボコにされたこと。
キックボクシングを始め、来る日も来る日も一緒に特訓したこと。
やがて2人でヤンキーになり相模原を制したこと。
2人でCRSのレディースを作ろうと語り合ったこと。
ラスイチのタバコを2人で回して吸ったこと。
樹との思い出の全てがその瞬間に次々と甦ってきてしまった。
自分は人を殺した。相手はヤクザとはいえその罪から逃れることはできないし、自分はこの事で命を狙われるだろう。でも…
でも…今だけでいいから、この自分の大切な親友を自分も抱きしめたかった。
『樹…』
優子は振り返り樹のことを抱きしめ返した。
『ごめんね。樹…』
優子の目に溜まった涙が零れ落ちた。
もうずっと感情を出すことがなかった彼女の表情が優しく緩むと
その向こうで死んだはずの鷹爪が、その凶悪な銃口をこちらに向け笑っていた。
優子は樹を突き放した。
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