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中編
嬢王 魔神 死神
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『で、誰だい?そこの2人は』
呼ばれて来るなり豹那は眩と煌に挑発的な視線を送った。
『え!?豹那さん、あの!この人たちは大阪から来た天王道さん姉妹で、樹さんの忘れ物を届けに来てくれたんだけど、色々あって一緒に戦ってくれることに』
『天王道?なんかどっかで聞いたような名前だねぇ』
『ほら。大阪の時、瞬ちゃんと神楽さんが相手したって言ってた』
『…あぁ~。それで顔もどっかで見たような気がしたのか。…で、どっちがどっちだい?』
豹那がそう言うと眩が目の前まで歩いていった。
『あたしが眩や。んで、あっちが妹の煌や』
眩は手を差し出して言う。
大阪でのことは豹那も2人から聞いていた。
神楽は互角だったと言っていたが、その前に樹と琉花ペアともやり合っていたと聞いた。
神楽がその口で互角だったと言っているあたり、実力は少なくとも本物ということだろう。
自分や伴、樹だったら互角でも自分の勝ちだと言い張っていたはず。
あの負けず嫌いが珍しく勝ちだと言いきらなかったことに豹那も興味があった。
そして妹の方もあの瞬が驚きを口にしていた。
強かった。負けたとは言えないけど結果は分からなかったと。
ステロイドのハンデがあったとはいえ自分が敵わなかった相手がそう言うのであれば認めざるを得ない。
『ちょっと、姉さんが手を出してるじゃない』
だがやはり煌は食ってかかっていく。
『…もう少し口のききかたには気を付けた方がいいよ?あたしに言わせれば荷物が増えるだけさ。ただ相手を潰せばいいだけなのにわざわざ人質のこと考えて動かなきゃいけないんだ。別にあたしは断ったっていいんだよ?』
『なんですって?』
煌は眉をつり上げたが豹那には当然引く気などない。
むしろ今ここで試すつもりなのだ。
『あんたらを連れてった所でね、何かメリットがあるのかい?あたしにはそれがいまいち納得できないんだよ』
バンッ!煌は立ち上がり机を叩きつけた。
『そこまで言うなら見せてやるわよ!』
愛羽たちが何か言葉を挟むこともできずにいる間に煌は拳を握って飛びかかっていった。
豪速球のようなその拳は手の平で受け止められた。
しかし受け止めたのは豹那ではなく眩だった。
完全に閃きで殴りかかった煌のその不意打ちをそれよりも1歩速い動きで、まるで左中間を抜ける打球を内野手が捕らえるファインプレーのようにキャッチした。
『まぁまぁ煌、落ち着きや。ここでやりおうたところで誰も得せぇへん。豹も試しただけやて』
『姉さん…でも…』
眩は煌の背中をポンポンと叩くと全員に向き直った。
『1つ忘れとったけど、あたしは風矢に言われて小田原に来た。ついでに言えばあいつと約束があんねん。それは風矢の姉妹であるお前たちを守るということや』
『咲薇ちゃんに?』
『あたしかてホンマやったら物返すだけの為や。でもな、あいつは大阪の後輩やし、なんやまだ色々苦しんどんねん。そんな中あいつはお前たちを助けに来ようとさえしとった。そんな風矢を見てあたしはあいつが気に入ったんや。せやからあいつとの約束は守る。豹。お前がどうしてもあたしらを試したいんやったらな、全て終わったら気が済むまであたしが殴り合ったる。なんや気に食わんかもしれへんけど今は同じ目的を持った同志、ということでどうや?』
眩は改めて手を差し出した。豹那はその手を弾くとニッとして言った。
『じゃあ終わった時にお前が病院でくたばってないように頑張るんだね』
いや。豹那としては煌の一撃にしろ止めた眩にしろ、その実力が本物らしいことは十分確認できた。
相手が手段を選ばない上に強敵である以上、危険は常について回る。
戦いながら愛羽たちのことを守る為には強い味方は1人でも多く必要。
神楽がやられ伴も重傷のこの状況の中、天王道姉妹は正に願ってもない強力な助っ人と言えた。
『安心せぇ。大阪の女はそう簡単にはくたばらん』
そこから一同は土曜日の作戦を考え話し合った。
呼ばれて来るなり豹那は眩と煌に挑発的な視線を送った。
『え!?豹那さん、あの!この人たちは大阪から来た天王道さん姉妹で、樹さんの忘れ物を届けに来てくれたんだけど、色々あって一緒に戦ってくれることに』
『天王道?なんかどっかで聞いたような名前だねぇ』
『ほら。大阪の時、瞬ちゃんと神楽さんが相手したって言ってた』
『…あぁ~。それで顔もどっかで見たような気がしたのか。…で、どっちがどっちだい?』
豹那がそう言うと眩が目の前まで歩いていった。
『あたしが眩や。んで、あっちが妹の煌や』
眩は手を差し出して言う。
大阪でのことは豹那も2人から聞いていた。
神楽は互角だったと言っていたが、その前に樹と琉花ペアともやり合っていたと聞いた。
神楽がその口で互角だったと言っているあたり、実力は少なくとも本物ということだろう。
自分や伴、樹だったら互角でも自分の勝ちだと言い張っていたはず。
あの負けず嫌いが珍しく勝ちだと言いきらなかったことに豹那も興味があった。
そして妹の方もあの瞬が驚きを口にしていた。
強かった。負けたとは言えないけど結果は分からなかったと。
ステロイドのハンデがあったとはいえ自分が敵わなかった相手がそう言うのであれば認めざるを得ない。
『ちょっと、姉さんが手を出してるじゃない』
だがやはり煌は食ってかかっていく。
『…もう少し口のききかたには気を付けた方がいいよ?あたしに言わせれば荷物が増えるだけさ。ただ相手を潰せばいいだけなのにわざわざ人質のこと考えて動かなきゃいけないんだ。別にあたしは断ったっていいんだよ?』
『なんですって?』
煌は眉をつり上げたが豹那には当然引く気などない。
むしろ今ここで試すつもりなのだ。
『あんたらを連れてった所でね、何かメリットがあるのかい?あたしにはそれがいまいち納得できないんだよ』
バンッ!煌は立ち上がり机を叩きつけた。
『そこまで言うなら見せてやるわよ!』
愛羽たちが何か言葉を挟むこともできずにいる間に煌は拳を握って飛びかかっていった。
豪速球のようなその拳は手の平で受け止められた。
しかし受け止めたのは豹那ではなく眩だった。
完全に閃きで殴りかかった煌のその不意打ちをそれよりも1歩速い動きで、まるで左中間を抜ける打球を内野手が捕らえるファインプレーのようにキャッチした。
『まぁまぁ煌、落ち着きや。ここでやりおうたところで誰も得せぇへん。豹も試しただけやて』
『姉さん…でも…』
眩は煌の背中をポンポンと叩くと全員に向き直った。
『1つ忘れとったけど、あたしは風矢に言われて小田原に来た。ついでに言えばあいつと約束があんねん。それは風矢の姉妹であるお前たちを守るということや』
『咲薇ちゃんに?』
『あたしかてホンマやったら物返すだけの為や。でもな、あいつは大阪の後輩やし、なんやまだ色々苦しんどんねん。そんな中あいつはお前たちを助けに来ようとさえしとった。そんな風矢を見てあたしはあいつが気に入ったんや。せやからあいつとの約束は守る。豹。お前がどうしてもあたしらを試したいんやったらな、全て終わったら気が済むまであたしが殴り合ったる。なんや気に食わんかもしれへんけど今は同じ目的を持った同志、ということでどうや?』
眩は改めて手を差し出した。豹那はその手を弾くとニッとして言った。
『じゃあ終わった時にお前が病院でくたばってないように頑張るんだね』
いや。豹那としては煌の一撃にしろ止めた眩にしろ、その実力が本物らしいことは十分確認できた。
相手が手段を選ばない上に強敵である以上、危険は常について回る。
戦いながら愛羽たちのことを守る為には強い味方は1人でも多く必要。
神楽がやられ伴も重傷のこの状況の中、天王道姉妹は正に願ってもない強力な助っ人と言えた。
『安心せぇ。大阪の女はそう簡単にはくたばらん』
そこから一同は土曜日の作戦を考え話し合った。
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