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中編
どうせそうなる運命
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樹は次の日、1人厚木中央高校に向かった。
白桐優子に会う為に。
行かなければならないことは分かっているのだ。だが樹は時間が欲しかった。
昨日あれからずっと考えていた。
優子が転校してからのこと。旋や珠凛のこと。麗桜やみんなに聞かされたこと。神楽のこと。
そしてCRSのこと。
考えていたのだが考えても考えてもまだ信じられなくて、信じたくなくて、現実を受け止めきれずにいる。
そのせいで今日はほとんど寝れていない。
何から話せばいいのか自分の中で上手くまとまらないまま、あっという間に厚央の校門に着いてしまった。
校門の前に単車を停めるとタバコを手に取りとりあえず火をつけた。
外からでも学校の荒れ様は目に見えて分かった。もう使われていない廃墟のようだ。
(ここに優子が…)
樹は人気のない校舎に目をやった。
いるのだろうか。会えるのだろうか。普段はあんなにヘラヘラしている樹も緊張の色を隠せない。
『白桐優子に用かな?』
つけたタバコも吸わずにボーッとしていると後ろから声をかけられたので驚いて振り返ると1人の男が立っていた。
振り返った樹を見て何故か男は目を丸くした。
『え!あっ!…驚いた。ひょっとして君が白桐の友人かい?』
友人。その言葉に対してすぐにはいと出てこないことが悔しかった。
『あ…昔、つるんでて』
『私はここの教師でね、白桐の一応担任みたいなものなんだ。中に行こう、私についてきてくれ』
若干男が嬉しそうな感じなのが謎だったが樹は男の後をついていった。
昇降口や職員の玄関ではなく、わざわざ非常口から出入りし、やけに裏の方端の方を遠回りするようにしてたどり着いたのは美術室だった。
男がドアを開けるとそこに彼女はいた。
どんな時も一緒だった相棒。どれだけ離れても一緒だと約束した大切な1番の親友。
窓際に座り柱によりかかりながらタバコを吸い窓の外を遠い目で見つめ、あの頃と全く変わらない金髪のリーゼントで白桐優子がそこにはいた。
『優子…』
『樹…』
樹は言葉に詰まっていた。言葉より先に涙が零れそうになるのをこらえるのでやっとだった。
『何しにきた』
優子は信じられないという顔を険しくして言った。その言葉には記憶の中のどの優子にも当てはまらないトゲトゲしさがあった。
『何故来たんだよ!あのガキらに伝えたはずだ!あたしに関わるなとな!』
予想はしていたが実際そんな言葉に貫かれるのは痛かった。
樹は思い出の景色から現実へと戻っていった。
『元気そうだな、優子。心配したんだぜ?』
『…心配なんていらない。話すことは何もねぇよ』
灰皿にタバコを押しつけると優子は立ち上がった。
『どうしたんだよ優子。なんであたしのこと避けるんだ?なぁ、あたし何かしちまったか?教えてくれよ』
『帰れ。ここは厚央だ。他の奴に見つかったらまためんどくせぇことになる。さっさと出てけ』
優子は部屋の出口に向かって歩きだした。
『なぁ待ってくれよ!CRS作ったんだってな。総長なんだろ?約束どおりじゃんか』
約束。その言葉に優子は立ち止まった。
『お互いどこにも負けないチーム作るって言ったよな?でもCRSを本当に作っちまうなんてビックリしたよ。あたしはそれ聞いてぶっちゃけ嬉しかった。でもよ…あの2人はスゲー寂しそうだったぜ?』
『…どーだっていいだろ。もうあの2人もお前も関係ない』
『なぁ、なんでなんだ?なんで覇女や夜叉猫や悪修羅嬢は的にかけてんのにウチはなってねーんだ?優子、お前これから何するつもりなんだ?何か理由があるんじゃないのか?』
バン!と優子は床を踏みつけた。
『お前も的にされたいのか?頼むからさっさと消えろ!』
『…優子…』
しばらくしんとしてから優子はまた言い直した。
『樹、CRSは間違いなく4大暴走族を倒し神奈川を制覇する。昔のよしみでお前のとこだけは見逃してやる。だからもうあたしのことは忘れろ』
理由はわからないがそれでも何かあるのは確かで優子がとても強い決意で臨んでいることを樹も認めざるを得なかった。
だが忘れろと言われて「はい」と言えるはずなどなく、なんとしても止めたいと樹も思っている。
『バカ言ってんじゃねぇよ。お前が思ってるよりずっと今の神奈川の暴走族は強ぇしカッコいい奴らばっかだぜ?そう簡単にはいかねぇよ』
『だったらいーじゃねぇか。安心して引っこんでろよ』
『そーゆー訳にはいかねぇよ。如月も緋薙も神楽も愛羽や綺夜羅たちも今はあたしの仲間だ。黙って見てなんかいられねぇよ』
樹も強い意志を示すと優子は一瞬、それまでと変わって視線を下に落とした。
『…どうせ、こうなるんだよな…』
優子はもう何も言わず出ていってしまった。
白桐優子に会う為に。
行かなければならないことは分かっているのだ。だが樹は時間が欲しかった。
昨日あれからずっと考えていた。
優子が転校してからのこと。旋や珠凛のこと。麗桜やみんなに聞かされたこと。神楽のこと。
そしてCRSのこと。
考えていたのだが考えても考えてもまだ信じられなくて、信じたくなくて、現実を受け止めきれずにいる。
そのせいで今日はほとんど寝れていない。
何から話せばいいのか自分の中で上手くまとまらないまま、あっという間に厚央の校門に着いてしまった。
校門の前に単車を停めるとタバコを手に取りとりあえず火をつけた。
外からでも学校の荒れ様は目に見えて分かった。もう使われていない廃墟のようだ。
(ここに優子が…)
樹は人気のない校舎に目をやった。
いるのだろうか。会えるのだろうか。普段はあんなにヘラヘラしている樹も緊張の色を隠せない。
『白桐優子に用かな?』
つけたタバコも吸わずにボーッとしていると後ろから声をかけられたので驚いて振り返ると1人の男が立っていた。
振り返った樹を見て何故か男は目を丸くした。
『え!あっ!…驚いた。ひょっとして君が白桐の友人かい?』
友人。その言葉に対してすぐにはいと出てこないことが悔しかった。
『あ…昔、つるんでて』
『私はここの教師でね、白桐の一応担任みたいなものなんだ。中に行こう、私についてきてくれ』
若干男が嬉しそうな感じなのが謎だったが樹は男の後をついていった。
昇降口や職員の玄関ではなく、わざわざ非常口から出入りし、やけに裏の方端の方を遠回りするようにしてたどり着いたのは美術室だった。
男がドアを開けるとそこに彼女はいた。
どんな時も一緒だった相棒。どれだけ離れても一緒だと約束した大切な1番の親友。
窓際に座り柱によりかかりながらタバコを吸い窓の外を遠い目で見つめ、あの頃と全く変わらない金髪のリーゼントで白桐優子がそこにはいた。
『優子…』
『樹…』
樹は言葉に詰まっていた。言葉より先に涙が零れそうになるのをこらえるのでやっとだった。
『何しにきた』
優子は信じられないという顔を険しくして言った。その言葉には記憶の中のどの優子にも当てはまらないトゲトゲしさがあった。
『何故来たんだよ!あのガキらに伝えたはずだ!あたしに関わるなとな!』
予想はしていたが実際そんな言葉に貫かれるのは痛かった。
樹は思い出の景色から現実へと戻っていった。
『元気そうだな、優子。心配したんだぜ?』
『…心配なんていらない。話すことは何もねぇよ』
灰皿にタバコを押しつけると優子は立ち上がった。
『どうしたんだよ優子。なんであたしのこと避けるんだ?なぁ、あたし何かしちまったか?教えてくれよ』
『帰れ。ここは厚央だ。他の奴に見つかったらまためんどくせぇことになる。さっさと出てけ』
優子は部屋の出口に向かって歩きだした。
『なぁ待ってくれよ!CRS作ったんだってな。総長なんだろ?約束どおりじゃんか』
約束。その言葉に優子は立ち止まった。
『お互いどこにも負けないチーム作るって言ったよな?でもCRSを本当に作っちまうなんてビックリしたよ。あたしはそれ聞いてぶっちゃけ嬉しかった。でもよ…あの2人はスゲー寂しそうだったぜ?』
『…どーだっていいだろ。もうあの2人もお前も関係ない』
『なぁ、なんでなんだ?なんで覇女や夜叉猫や悪修羅嬢は的にかけてんのにウチはなってねーんだ?優子、お前これから何するつもりなんだ?何か理由があるんじゃないのか?』
バン!と優子は床を踏みつけた。
『お前も的にされたいのか?頼むからさっさと消えろ!』
『…優子…』
しばらくしんとしてから優子はまた言い直した。
『樹、CRSは間違いなく4大暴走族を倒し神奈川を制覇する。昔のよしみでお前のとこだけは見逃してやる。だからもうあたしのことは忘れろ』
理由はわからないがそれでも何かあるのは確かで優子がとても強い決意で臨んでいることを樹も認めざるを得なかった。
だが忘れろと言われて「はい」と言えるはずなどなく、なんとしても止めたいと樹も思っている。
『バカ言ってんじゃねぇよ。お前が思ってるよりずっと今の神奈川の暴走族は強ぇしカッコいい奴らばっかだぜ?そう簡単にはいかねぇよ』
『だったらいーじゃねぇか。安心して引っこんでろよ』
『そーゆー訳にはいかねぇよ。如月も緋薙も神楽も愛羽や綺夜羅たちも今はあたしの仲間だ。黙って見てなんかいられねぇよ』
樹も強い意志を示すと優子は一瞬、それまでと変わって視線を下に落とした。
『…どうせ、こうなるんだよな…』
優子はもう何も言わず出ていってしまった。
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