上 下
41 / 173
前編

スーツの女

しおりを挟む
 愛羽たちが厚央を離れてから間もなく1台の車が現れていた。
 校舎の中にいた優子やアジラナ、熊小路、他全学年全員が一斉に外へ出てくるとその車の周りに並んだ。
 中の人物は出てこず代わりに窓が開いていく。

 厚央の女たちは声を張り上げ挨拶し、鋭い目をしたスーツの女が中から喋った。

『おう。なんかこの辺お巡りがうろついてんけどなんかやったのか?』

 すぐに優子が前に出ていく。

『大したことじゃないです。ちょっとガキと揉めただけで、もう終わりましたから』

『もめたってどこのガキとだ?』

『いや、どこっすかね。よく見てなかったんで…』

 優子は嘘をついた。だがアジラナはそれを許さなかった。

『ヒラツカニシコウダッタカナ?ムコウハユーコヲシッテルフウダッタ。アトオダワラカラモキタンダ。ロクニンズツダッタヨ』

 スーツの女は興味を示した。

『たった12人で殴り込みに来たってのか?夜叉猫と悪修羅嬢か?』

 アジラナはニヤニヤしている。優子はアジラナをにらみつけた。だがそんなのお構いなくアジラナは喋り続ける。

『チガウチガウ。オダワラノヤツハボーソーアイドルトカユーチームラシイヨ、タカヅメサン。タッタロクニンデボーソーゾクダッテサ。ワラッチャウヨネ』

『へぇ。とにかく訳分かんねぇ勘違い野郎がのりこんできた訳か。ちゃんとぶっ殺して金取ったのか?』

『イヤイヤ、トチューデオマワリキテニゲラレチャッテブッコロセナカッタンダ。デモダイジョーブ、ヒラツカノロクニンハウチニケンカウッタカラテキタイニンテイシタシ、オダワラノヤツモヤシャネコトイッショニツブシチャウカラ』

『ウチにたてつく奴はガキだろうと容赦しねぇよ。シャブ打ってハメ撮りさせてでも金にしてやる。なんだ優子そんな顔して。ケンカしてんのか?アジラナと』

『いえ…』

『ユーコハオコッテルンダヨ。ソイツラユーコノシリアイミタイダッタカラ、ソイツラブッコロシタクナインダヨ』

『知り合い?』

『いえ、ちょっと顔知ってるだけで…』

『そうかそうか、優子は優しいからな。分かるよ。でもなぁ優子、お前が総長なんだからよ、あたしの言いたいこと、分かるよなぁ?』

『…はい。分かってます』

『ならいいな。覇女、夜叉猫、悪修羅嬢に加えてそいつらもキッチリぶっ殺せ。神奈川の暴走族は全部鷹爪組が面倒を見る。その為にまずCRSがそいつら全部潰して1番にならなきゃいけないんだよ。優子、お前に任せてんだからな。半端は言うなよ?』

『…はい。大丈夫です』

 このスーツの女は鷹爪肖たかづめあやか

 厚央、そしてCRSの黒幕だ。

『優子、これ預かっててくれ』

 鷹爪はスポーツバッグを取り出すと優子に手渡した。

『じゃあな。今日はあたしも忙しいからよ。四阿と先生と一緒に横浜行ってくるからよ』

『センセイ?』

『あぁ。今日は神奈川制覇に向けて記念すべき第一歩になる』

 それだけ言うと鷹爪は行ってしまった。



 その場を解散すると優子は1人美術室に戻りバッグの中身を確認した。
 おおよそ見当はついていたがやはり中身は覚醒剤だ。ドラム型のスポーツバッグがパンパンになるほど詰め込まれている。

『…しかし、それにしてもいつにも増してすごい量だな、くそ。毎回毎回どっからそんなに湧いてくるんだか…』

 持ち運ぶには目立ち、めんどくさいサイズだ。

 優子はそれを美術室に隠しておくことにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美少女にフラれたらなぜかダウジング伊達メガネ女子が彼女になりました!?〜冴えない俺と彼女と俺をフった美少女の謎の三角な関係〜

かねさわ巧
青春
まてまてまて! 身体が入れ替わっているってどういうことだよ!? 告白した美少女は俺の好きになった子じゃなかったってこと? それじゃあ俺の好きになった子ってどっち?? 謎のダウジングから始まった恋愛コメディ。

裏切り者

りか。
青春
友達とは? 裏切りを意味すること。 本当の友達なのか?

【R15】【第二作目連載】最強の妹・樹里の愛が僕に凄すぎる件

木村 サイダー
青春
中学時代のいじめをきっかけに非モテ・ボッチを決め込むようになった高校2年生・御堂雅樹。素人ながら地域や雑誌などを賑わすほどの美しさとスタイルを持ち、成績も優秀で運動神経も発達し、中でもケンカは負け知らずでめっぽう強く学内で男女問わずのモテモテの高校1年生の妹、御堂樹里。前回田中真理に自ら別れを告げたものの傷心中。そんな中樹里が「旅行に行くからナンパ除けについてきてくれ」と提案。友達のリゾートマンションで条件も良かったので快諾したが、現地で待ち受けていたのはちょっとおバカな?あやかしの存在。雅樹や樹里、結衣の前世から持ち来る縁を知る旅に‥‥‥ ■場所 関西のとある地方都市 ■登場人物 ●御堂雅樹 本作の主人公。身長約百八十センチ近くと高めの細マッチョ。ボサボサ頭の目隠れ男子。趣味は釣りとエロゲー。スポーツは特にしないが妹と筋トレには励んでいる。 ●御堂樹里 本作のヒロイン。身長百七十センチ以上にJカップのバストを持ち、腹筋はエイトパックに分かれる絶世の美少女。芸能界からのスカウト多数。天性の格闘センスと身体能力でケンカ最強。強烈な人間不信&兄妹コンプレックス。一度だけ兄以外の男性に恋をしかけたことがあり、この夏、偶然再会する。 ●堀之内結衣 本作の準ヒロイン。凛とした和装美人タイプだが、情熱的で突っ走る一面を持ち合わせている。父親の浮気現場で自分を浮気相手に揶揄していたことを知り、歪んだ対抗意識を持つようになった。その対抗意識のせいで付き合いだした彼氏に最近一方的に捨てられ、自分を喪失していた時に樹里と電撃的な出会いを果たしてしまった。以後、樹里や雅樹と形を変えながら仲良くするようになる。 ※本作には未成年の飲酒・喫煙のシーンがありますが、架空の世界の中での話であり、現実世界にそれを推奨するようなものではありません。むしろ絶対にダメです。 ※また宗教観や哲学的な部分がありますが、この物語はフィクションであり、登場人物や彼らが思う団体は実架空の存在であり、実在の団体を指すものではありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

肺が灰になっても叫べよ声を

古ノ人四月
青春
クラスメイトの奈々海さんは、高校三年生は三回目だと言った。肺炎を患った彼女は、酸素ボンベを背負って学校に通っていた。肺が弱ってしまったから、濃い酸素を吸えないと苦しいらしい。あの日もそうだった。出席日数を稼ぐために補習を受ける奈々海さんの隣で、僕はいつまで経っても決まらない進路を悩んでいた。 進路に悩む僕、肺炎の奈々海さん、全く別の目的で夏休み中の学校に居合わせただけだった。 僕と奈々海さんの距離が縮まったのは、なにがきっかけだっただろう。 消しゴムを借りたから? 財布を忘れたから? 怪談話に震えたから? それとも、夜の学校で不思議な体験をしたから? いろんなことがあった。だからこそ、どれか一つの出来事が特別だったわけではなく、どの出来事も僕と奈々海さんには必要だったのだと思う。 もうじき咲く春の花の芽に、あの夏を思い起こした僕は、そんなことをぼんやり考えていた。 これは、年上のクラスメイトと過ごした高校三年生の夏休みのお話。 この物語はフィクションです。実在の人物、団体、事件などとは関係ありません。 のんびり毎日更新していきます。九月中には完結予定です。

犬猿の仲だけど一緒にいるのが当たり前な二人の話

ありきた
青春
犬山歌恋と猿川彩愛は、家族よりも長く同じ時間を過ごしてきた幼なじみ。 顔を合わせれば二言目にはケンカを始め、時には取っ組み合いにまで発展する。 そんな二人だが、絆の強さは比類ない。 ケンカップルの日常を描いた百合コメディです! カクヨム、ノベルアップ+、小説家になろうにも掲載しています。

ここは世田谷豪徳寺

武者走走九郎or大橋むつお
青春
佐倉さくら 自己紹介するとたいていクスっと笑われる。 でも、名前ほどにおもしろい女子じゃない。 ないはずなんだけど、なんで、こんなに事件が多い? そんな佐倉さくらは、世田谷は豪徳寺の女子高生だぞ。

【完結】眠り姫は夜を彷徨う

龍野ゆうき
青春
夜を支配する多数のグループが存在する治安の悪い街に、ふらりと現れる『掃除屋』の異名を持つ人物。悪行を阻止するその人物の正体は、実は『夢遊病』を患う少女だった?! 今夜も少女は己の知らぬところで夜な夜な街へと繰り出す。悪を殲滅する為に…

処理中です...