116 / 142
後編
死神スライダー
しおりを挟む
(え?)
何かが飛んできたのだ。
いつぞやに高校球児が160キロの球を投げていたがその姿を思い出してしまった。
更に言えば切れ味のいいスライダーだ。160キロの豪速球スライダーのような右フック。仮にもキックボクサーの樹が反応できなかった。
油断などしていなかった。だが1発くらっただけで樹はひざを着かされていた。
『はっ!』
そして次の瞬間には蹴り倒されていた。まるで車にでも突っ込まれたようだった。抵抗しようのない力に軽々と蹴り転がされ樹は立ち上がると無意識の内に距離を取ってしまった。
まだ、たった2発だ。
(まさか…このあたしがビビってるっていうのか?はは、ジョーダンだろ?)
『なんやおい。もう終わりか?』
相変わらず眩の調子は軽いが、樹は咲薇が言っていたことは嘘ではなかったと思わざるを得なかった。
『何言ってやがる。まだ始まったばっかじゃねぇか。おら、いくぜ』
とは言いつつも樹は慎重にしか攻めていけなかった。得意の蹴りで攻撃を組み立て、眩に隙を与えないように比較的いい蹴りを打ちこんでいくがほとんど効いている様子が見られなかった。
逆に隙を突かれたのは樹だ。蹴りのコンビネーションを見切られ、自分が蹴りを放ったのと同時に再び殴り倒されていた。
『うぅ!』
まるで鉛で殴られたようなパンチに樹は顔を押さえ這いつくばっている。
『うっ…あ…あ…くそっ…』
見ていた琉花もさすがに黙っていられず走りだし眩に向かっていく。
(この女、只者じゃない)
『おっ、仲間の助けや。えぇで、2対1でも何対1でも』
琉花は素早いフットワークで捉えられないように警戒しながらパンチを打っていった。
『うぉっ!速っ!』
しかし眩は驚くも七条琉花のパンチを動作1つでよけ、手のひらで受け止めた。
それこそ野球のボールをキャッチする位の動きで、だ。
琉花は顔をつかまれた。
『んぐ!』
『行っくで~!』
眩は琉花の顔を持ったまま走りだし、まだ座りこむ樹に向かって琉花を投げつけた。
『うぁっ!』『うぉっ!』
2人はまるでオモチャのように転がされた。
『はははは!ストライクや!』
なんという、それもどういう怪力だろう。向こう側では瞬が妹の方にかなり苦戦している。
樹も琉花も少し甘く見ていたことを痛感していた。
『おい七条…お前やめといた方がいいぞ。あいつ半端じゃねぇよ』
『あんたこそ諦めた方がいいわよ。あたしの見た感じ、勝ち目なさそうだし』
『へっ、言ってくれるじゃねーかよ。オモチャにされてたくせに』
『は!?なんですって!?誰がオモチャよ!』
『わはは!なんや仲間割れか。おもろい奴らやのぉ』
『うっせーよ!!』『うるさいよ!!』
2人は覚悟を決めて立ち上がった。
『おい、姉ちゃんの方!あたしらは今日仲間の夢取り戻しに来たんだ。悪いけど負けられねぇんだよ』
『白狐だっけ?そいつ捕まえるまではとりあえずくたばれないんだよね』
『さぁ、かかってこいよ
さぁ、かかってきなよ』
眩は白狐という言葉が出て急に真顔になり答えた。
『そういうことなら、あたしにもお前らを叩き潰す理由がある、ということや。言うとくけどな、あたしは強いぞ』
そんなことはもう分かっている。だがこの女が白狐の側であるのなら、せめて足止めだけでもしなければならない。
対して眩も冬がここに来て何をするつもりなのから分からないが、なんとしても守り抜かねばならない。だが目の前のトサカ頭とツインテールは関西最強の女を目の前にして1歩も引こうとはしない。
『…ほな、楽しませてもらおか』
死神と呼ばれた女は何故か楽しそうな顔を見せた。
何かが飛んできたのだ。
いつぞやに高校球児が160キロの球を投げていたがその姿を思い出してしまった。
更に言えば切れ味のいいスライダーだ。160キロの豪速球スライダーのような右フック。仮にもキックボクサーの樹が反応できなかった。
油断などしていなかった。だが1発くらっただけで樹はひざを着かされていた。
『はっ!』
そして次の瞬間には蹴り倒されていた。まるで車にでも突っ込まれたようだった。抵抗しようのない力に軽々と蹴り転がされ樹は立ち上がると無意識の内に距離を取ってしまった。
まだ、たった2発だ。
(まさか…このあたしがビビってるっていうのか?はは、ジョーダンだろ?)
『なんやおい。もう終わりか?』
相変わらず眩の調子は軽いが、樹は咲薇が言っていたことは嘘ではなかったと思わざるを得なかった。
『何言ってやがる。まだ始まったばっかじゃねぇか。おら、いくぜ』
とは言いつつも樹は慎重にしか攻めていけなかった。得意の蹴りで攻撃を組み立て、眩に隙を与えないように比較的いい蹴りを打ちこんでいくがほとんど効いている様子が見られなかった。
逆に隙を突かれたのは樹だ。蹴りのコンビネーションを見切られ、自分が蹴りを放ったのと同時に再び殴り倒されていた。
『うぅ!』
まるで鉛で殴られたようなパンチに樹は顔を押さえ這いつくばっている。
『うっ…あ…あ…くそっ…』
見ていた琉花もさすがに黙っていられず走りだし眩に向かっていく。
(この女、只者じゃない)
『おっ、仲間の助けや。えぇで、2対1でも何対1でも』
琉花は素早いフットワークで捉えられないように警戒しながらパンチを打っていった。
『うぉっ!速っ!』
しかし眩は驚くも七条琉花のパンチを動作1つでよけ、手のひらで受け止めた。
それこそ野球のボールをキャッチする位の動きで、だ。
琉花は顔をつかまれた。
『んぐ!』
『行っくで~!』
眩は琉花の顔を持ったまま走りだし、まだ座りこむ樹に向かって琉花を投げつけた。
『うぁっ!』『うぉっ!』
2人はまるでオモチャのように転がされた。
『はははは!ストライクや!』
なんという、それもどういう怪力だろう。向こう側では瞬が妹の方にかなり苦戦している。
樹も琉花も少し甘く見ていたことを痛感していた。
『おい七条…お前やめといた方がいいぞ。あいつ半端じゃねぇよ』
『あんたこそ諦めた方がいいわよ。あたしの見た感じ、勝ち目なさそうだし』
『へっ、言ってくれるじゃねーかよ。オモチャにされてたくせに』
『は!?なんですって!?誰がオモチャよ!』
『わはは!なんや仲間割れか。おもろい奴らやのぉ』
『うっせーよ!!』『うるさいよ!!』
2人は覚悟を決めて立ち上がった。
『おい、姉ちゃんの方!あたしらは今日仲間の夢取り戻しに来たんだ。悪いけど負けられねぇんだよ』
『白狐だっけ?そいつ捕まえるまではとりあえずくたばれないんだよね』
『さぁ、かかってこいよ
さぁ、かかってきなよ』
眩は白狐という言葉が出て急に真顔になり答えた。
『そういうことなら、あたしにもお前らを叩き潰す理由がある、ということや。言うとくけどな、あたしは強いぞ』
そんなことはもう分かっている。だがこの女が白狐の側であるのなら、せめて足止めだけでもしなければならない。
対して眩も冬がここに来て何をするつもりなのから分からないが、なんとしても守り抜かねばならない。だが目の前のトサカ頭とツインテールは関西最強の女を目の前にして1歩も引こうとはしない。
『…ほな、楽しませてもらおか』
死神と呼ばれた女は何故か楽しそうな顔を見せた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
私たち、博麗学園おしがまクラブ(非公認)です! 〜特大膀胱JKたちのおしがま記録〜
赤髪命
青春
街のはずれ、最寄り駅からも少し離れたところにある私立高校、博麗学園。そのある新入生のクラスのお嬢様・高橋玲菜、清楚で真面目・内海栞、人懐っこいギャル・宮内愛海の3人には、膀胱が同年代の女子に比べて非常に大きいという特徴があった。
これは、そんな学校で普段はトイレにほとんど行かない彼女たちの爆尿おしがまの記録。
友情あり、恋愛あり、おしがまあり、そしておもらしもあり!? そんなおしがまクラブのドタバタ青春小説!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる