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後編
出会い
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1人で暮らし始めて数ヶ月が経った頃その少年と出会った。私の働いていた花屋に彼が来たのがきっかけだった。
私と同い年位の男の子で、割りとよく花を買いに来るので顔はすぐ覚えた。鏡叶泰という人だと注文書の名前を見て分かった。
彼はどうやら暴走族に入団?入隊?とにかく属しているということで
『暴走族は何かと花が要りますねん。やれあそこのチームが追悼や、どこそこのチームが引退や言うて、顔も名前も知らん人間の為にこうして花を買うてるんです。ははっ』
そうやって愚痴をこぼすように笑っていたが、その割りに花を選ぶ時はすごく真剣な顔で長いこと悩んでいた。
私だったらそんなどこの誰かも分からない人の為にそこまでできないと思った。
自分が納得した花を満足そうに抱えていくその姿を見て、この人はきっと自分に嘘をつけない人なんだと感じていた。
私は園長とのことがあってから男というものに不信感しか抱いていなかった。
お世話になった眩と煌の父親のことも本心を言えば心の底からは信じられなかった。でもその少年は私のそういう曇った心を取り除いてくれた。
身なりや振る舞いは確かにヤンチャな感じに見えるかもしれないがその少年の色は真っ白だった。空のように澄んだ色というか、淀みなど1つも見当たらない人だった。
気づけば私はその人に惹かれてしまっていた。
彼はよくお店の前を通り、いつも手を振ってくれるので私も外を気にするようになっていた。
ただ彼には彼女がいるということがウチでサボテンを買っていった時に分かっていた。
『叶泰くんサボテンなんて好きなんですか?』
『うん、そうやねん。サボテンて可愛いやろ?俺はいっぱい持っとんのやけど、これは女に買うてったろと思って』
『そうなんですね。彼女さん、きっと喜びますよ』
『冬ちゃんはホンマにえぇ子やな。ほなこれ1個頼むわ。えぇ感じにラップしてほしいねん』
『はい。任せてください』
精一杯笑顔でいるよう努力した。
でも本当は、寂しいような悲しいような、複雑な気持ちだった。
私と同い年位の男の子で、割りとよく花を買いに来るので顔はすぐ覚えた。鏡叶泰という人だと注文書の名前を見て分かった。
彼はどうやら暴走族に入団?入隊?とにかく属しているということで
『暴走族は何かと花が要りますねん。やれあそこのチームが追悼や、どこそこのチームが引退や言うて、顔も名前も知らん人間の為にこうして花を買うてるんです。ははっ』
そうやって愚痴をこぼすように笑っていたが、その割りに花を選ぶ時はすごく真剣な顔で長いこと悩んでいた。
私だったらそんなどこの誰かも分からない人の為にそこまでできないと思った。
自分が納得した花を満足そうに抱えていくその姿を見て、この人はきっと自分に嘘をつけない人なんだと感じていた。
私は園長とのことがあってから男というものに不信感しか抱いていなかった。
お世話になった眩と煌の父親のことも本心を言えば心の底からは信じられなかった。でもその少年は私のそういう曇った心を取り除いてくれた。
身なりや振る舞いは確かにヤンチャな感じに見えるかもしれないがその少年の色は真っ白だった。空のように澄んだ色というか、淀みなど1つも見当たらない人だった。
気づけば私はその人に惹かれてしまっていた。
彼はよくお店の前を通り、いつも手を振ってくれるので私も外を気にするようになっていた。
ただ彼には彼女がいるということがウチでサボテンを買っていった時に分かっていた。
『叶泰くんサボテンなんて好きなんですか?』
『うん、そうやねん。サボテンて可愛いやろ?俺はいっぱい持っとんのやけど、これは女に買うてったろと思って』
『そうなんですね。彼女さん、きっと喜びますよ』
『冬ちゃんはホンマにえぇ子やな。ほなこれ1個頼むわ。えぇ感じにラップしてほしいねん』
『はい。任せてください』
精一杯笑顔でいるよう努力した。
でも本当は、寂しいような悲しいような、複雑な気持ちだった。
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